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iPhoneを中核にさらに強まる「アップル製品連携」WWDCから見える今後の戦略

watchOS 9では、センサーフュージョンを生かして、フィットネス中の体の動きをさらに詳細に把握可能になる

「ヘルスケア」を軸にiPhoneの重要性がアップ

 もう1つ、アップルが武器とするのは「データ」だ。正確に言えば、ユーザーのデータはアップルのネットワークに閉じているわけではないし、アップルが「使う」わけでもない。

 ただ、ヘルスケアやフィットネスに活用する場合、出て行って連携する場が用意されておらず、iPhone+Apple Watchで使い、さらに、必要ならば同じように使う家族の間でも連携する、という形にするのがベストなスタイルになっている。

 この辺の連携は、どこもさほど柔軟性はないのでアップルが特に閉じているわけでもない、という部分がある。一方で、活用の幅をどんどん広げており、「価値の提供」という意味では圧倒的にアップルの戦略に利がある。次期Apple Watch用OS「watchOS 9」では、睡眠のさらなる分析や、より精度の高いフィットネス情報の取得と表示が実現される。

 だが、それ以上に筆者が意義深いと感じたのが「薬の管理」である。

iPhoneとApple Watchの連携による「薬の管理」が登場

 iPhoneとApple Watchを連携させ、飲んでいる薬の種類とその服薬間隔を管理し、「飲むべき時にアラートを出す」ようになっている。それが自分だけでなく、家族とも連携する(家族の服薬間隔を管理できる)のは、大きなことだ。

Apple Watchなどに「服薬間隔のアラート」を出せるようになる

 アメリカでは、薬のボトルのラベルをiPhoneで撮影するだけで、その薬の種類を登録した上で、アルコールも含めた「飲み合わせ」の危険性について警告を発する仕組みもある。この辺は言語依存だけでなく、医薬品のデータベースや法規が異なる関係で、まずは、前述のようにアメリカでしか提供されない。ここは残念ではある。

アメリカのみの機能だが、アルコールも含めた「飲み合わせ」の危険性について警告する機能も

 ただ日本でも、手作業で薬の名前と服薬間隔を入力し、管理する機能は使える。当面はこの機能でカバーするのがいいだろう。

 iPhoneの「ヘルスケア」機能は、プライバシー保護とデバイス間連携を初期から追求してきた結果、個人にはとても使いやすい「健康管理ツール」になりつつある。このことは、Apple Watchがフィットネスと健康管理でヒットしてきたように、iPhoneを選ぶ理由として「ヘルスケア」が重要な要素になる可能性を秘めている。

 だとすれば、iPhoneはまさに「個人にとっての中核」ツールとなり、他のアップル製品にユーザーを惹きつける呼び水としての効果が強くなっていきそうだ。

 

筆者紹介――西田 宗千佳

 1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。 得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、PCfan、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「ソニーとアップル」(朝日新聞出版)、「ソニー復興の劇薬 SAPプロジェクトの苦闘」(KADOKAWA)などがある。

 

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