4つの課題は一種の大企業病なのか
綱川社長CEOは、現在の東芝の課題に改めて言及した。
それは、「コングロマリットディスカウントの存在」「全社画一的なキャピタルアロケーション」「意思決定のスピード」「株主の選択肢の狭さ」の4点だ。
「事業領域が広く、組織体制が複雑であり、相互シナジーを生まない事業が混在し、コングロマリットディスカウントの存在と、意思決定のスピードの遅さが大きな課題だと認識している。また、個々のビジネスにとって適正な財務体質および事業リスクの判断が難しく、全社画一的なキャピタルアロケーションを適用してしまい、最適な資本政策を講じることができなかった。また、経営陣の出身母体が異なり、意思決定の考え方が共有できず、機動的な判断にも遅れが出ていた。そして、投資家は、事業ごとではなく、東芝株に投資することになり、事業成長や企業価値の向上が実現できなかった」とする。
2分割することで、こうした課題を解決できると、綱川社長CEOは断言する。
「コングロマリットディスカウントを解消し、持続的で利益ある成長による企業価値向上を目指す手段としては、スピンオフが最適であると確信している。分割を契機に、執行体制の専門性を高めることにより、事業に精通したメンバーによる機動的で、迅速、的確な意思決定ができ、ビジネスサイクルや市況など、ビジネス特性に見合う明確な成長戦略の策定が可能になる」とする。
そして、3分割から2分割にした理由として、「東芝本体の上場維持にかかる不確実性を除去する」ことや「分割コストの大幅な削減」などをあげる。
従来の3分割では、東芝、インフラサービス Co.、デバイス Co.への分割となるが、東芝には売却を前提としているキオクシアや、今回の再編案では非注力領域に位置づけられた東芝テックなどで構成。負債を抱える企業が上場を維持するには課題があるとの指摘があった。
「株主や関係各所からのフィードバックを踏まえて、スピンオフ計画を具体化するなかで、様々な面から2分割のスキームが最適と判断した。3分割に比べて、安定的な財務体質の確保が可能であり、構築に必要となる経営体制が2つに減少し、規律あるガバナンス体制を敷くことができる。また、2分割により、1社を上場させるだけで済み、審査における実務負担の軽減、分割に関わる一時的コストが200億円規模と大幅に削減できることがわかった」とする。
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