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古風な見た目に反した、現代的なサウンドが魅力

40年の魂が注入された「KX-3 Spirit」、これはぜひ聞いてほしい逸品スピーカーだ

2019年08月14日 14時00分更新

1970年代からの蓄積に裏打ちされた魅力がある

 クリプトンのスピーカーは「オールアルニコ・マグネット」「密閉型」「クルトミューラー製コーン」の採用が特徴だ。同社はこれを「三種の神器」と呼び、2005年の「KX-3」以来、こだわりを持って採用している。

170mmのクルトミューラーコーンの素材はほぼ50年使い続けているもの。

 音調は、モニター的といってもいい、ストレートな傾向。解像感やS/N感の高さを感じ、無駄な付帯音が少なく、混濁なくクリアにソースの情報が伝わってくる。少しドライだが、抜けのいい、女性ボーカルの聞こえ方が魅力的だ。飾り気はないが、ソースに含まれたニュアンスを的確に伝えてくれる。これはクルトミューラー製のペーパーコーンならではの音色といってもいいのかもしれない。

 日本製スピーカーということもあり、日本人の声や日本で作られた音源にもよく合う印象がある。密閉型はバスレフ型に比べて、低域の量感が少ないと思われがちだが、パーカッションなどリズム楽器のアタック感、ベースなど低域の音程感が正確であるため、ロックやJ-POPなどの音もバランスよく鳴らせる。

 砲弾型のツィーターは、指向性が狭く、少しセッティング(特に左右スピーカーの位置とリスニング位置の関係)にシビアな面があるのだが、はまると定位感や立体感の再現がスゴイ。解像感や空間表現といったハイレゾ音源ならではの魅力も存分に引き出してくれる。

リングダイヤフラム型ツィーターは、高域の中でも低めの周波数は全体、高い周波数では中心部だけが振動することで、50kHzの超高域までフラットに再現できる。

 なお、取材したところ、クリプトンのスピーカーは、リスナーと左右のスピーカーをそれぞれ正三角形の頂点に置き、壁に対して平行にそろえて計測しているそうだ。オーディオショップなどでは、極端な内振りを推奨されることもあるが、この状態で適切な特性が得られるように作っているそうなので、調整の参考にしてほしい。

 気付くと市場から減ってしまった密閉型スピーカー。その意味でKX-3 Spiritは、最近のスピーカーのトレンドとは少し距離感があるアプローチだ。2005年からと書いたが、KXシリーズの開発を担当する、渡邉勝さんは1970年代前半に日本ビクターから出た「SX-3」を開発した人物でもある。その後1990年前後まで、数多くのスピーカー開発を手掛けた。三種の神器は、(途中ブランクは挟みつつ)35年以上にわたって培ってきたスピーカー開発のノウハウが凝縮されたものと言える。KX-3 Spiritは、ここで培った良さはきちんと継承しながら、古さも感じさせないサウンドに仕上げられていて見事だ。

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