AMDは2014年9月2日、新しいミドルクラスGPU『RADEON R9 285』及び低価格な8コアCPU『FX-8370』、『FX-8370E』、『FX-8320E』を正式発表しました。最近のAMDは自作PC向けにメモリーやSSDを出したり、舞妓さんをアキバに送り込んだりなど、これまでの展開にはない動きを見せていましたが、久々の製品更新は胸が踊ります。さっそくサンプルを入手してテストしてみました!
↑今回入手したR9 285搭載ボード。リファレンスデザインではなく、Sapphire製の『DUAL-X』クーラー搭載のモデルでした。予想実売価格は税込み3万6000円前後。 |
R9 290の技術をR9 280世代に移植した『RADEON R9 285』
まずはR9 285からチェックしましょう。基本的なスペックと従来のRADEONとの位置付けを確認してみます。
アーキテクチャーは従来と同じ28nmプロセスの“GCN”ですが、R9 285には新しい開発コード『Tonga』が割り当てられました。“SP数はR9 280と同じだがコアクロックはやや低め”、“メモリークロックはR9 280より速いが搭載量とバス幅は控えめ”がR9 285の大きなポイントです。
また、R9 285の気になる価格は米国で249ドル(予想価格)。GeForce GTX760が250ドル(発表当時)ですので、明らかにライバルの売れ筋GPUを仮想敵としています。ちなみに国内での予想価格は税込み3万円前半~中盤になる見込み。となると、3万円前後のOC版GTX760か、ちょっと予算を追加して高付加価値のR9 285にするか悩むところですね。
↑『GPU-Z』で検証に使ったR9 285搭載グラボの素性を確認したところ、コアクロックは918MHz→965MHz、メモリークロックは5.5GHz→5.6GHzにOCされたモデルであることがわかりました。 |
↑補助電源は6ピン×2。OC版GTX760だと8ピン+6ピンが当たり前ですが、R9 285のほうがやや求められる敷居は低いですね。 |
しかし、なぜ今ごろこのような中途半端なスペックのものを出してきたのか? R9 280より下なのに型番に大きい数値が入っている点も解せません。しかしこの点がR9 285を理解するポイントとなるのです。
R9 280Xと290は同じGCNアーキテクチャーであるため、どちらもDirectX12やMantleに対応しますが、付加機能の数には大きな差があります。GPUコアでサウンド処理を行なう“TrueAudio”や、ワットパフォーマンスを向上させる“次世代PowerTune(PowerTune 2.0のことだと思われます)”はR9 290以上または260X以下にしかありません。
さらにAMDの“G-SYNC”対抗馬である『Project FreeSync』、ブリッジケーブルなしでマルチGPU構成が可能な設計など、R9 290以上で採用されている機能が実装されたほか、4K解像度のH.264動画の再生支援機能も追加されました。
R9 280のコスパにR9 290の最新技術を合わせたものがR9 285と理解しておきましょう。
『FX-8370』はDevil's Canyonに対抗?
続いてはFXシリーズの最新モデルをチェックしてみます。今回の3モデルもPiledriverベースの設計なので、アーキテクチャーに変更点はありません。
3製品中最もおもしろそうなのは定格4GHz、Turbo Core時最大4.3GHzまで上がる8370でしょう。インテルのCore i7-4790Kに近いクロックですが、国内予想価格は2万2000円弱。定格4GHz/TC時最大4.2GHzのFX-8350の実売価格と同価格帯なので(FX-8350がぐっと値下がりしない限りは)、超お買い得といった感じでしょうか。
一方、FX-8370Eおよび8320Eは『E付き』モデルであるため、TDPは95Wで定格クロックは低めになっています。
↑FX-8370(左)および8370E(右)の情報を『CPU-Z』でチェック。開発コードもFX-8350と同じ『Vishera』のままでした。 |
今回は以下のような構成のマシンでテストしてみました。FX-8370もあるし、さらに手元には990FXマザーのほか、最近出回り始めたAMDブランドのSSDとメモリーもあったので“AMDファンの夢、AMD尽くし”で試しました。
●AMD検証環境
CPU:FX-8370(4GHz、最大4.3GHz)、FX-8370E(3.3GHz、最大4.3GHz)
マザーボード:ASRock 990FX KILLER(AMD 990FX)
メモリー:AMD R938G2130U1K(DDR3-2133 4GB×2)
グラフィック:RADEON R9 285、GALAXY GTX760 GC V2(GeForce GTX 760)
SSD:AMD RADEON-R7-240G(240GB)
電源:Silverstone SST-ST75F-G(750W、80PLUS GOLD)
OS:Windows 8.1 Pro(64ビット)
また、FX-8370の比較用として次のようなシステムも用意しました。細部の構成が違いますので、あくまで参考として掲載します。
●インテル検証環境
CPU:インテル Core i7-4790K(4GHz、最大4.4GHz)
マザーボード:ASRock Z97 Extreme6(Intel Z97)
メモリー:PC3-12800 DDR3 4GB×4
グラフィック:RADEON R9 285
SSD:インテル SSDSC2BP240G4(240GB)
電源:Silverstone SST-ST75F-G(750W、80PLUS GOLD)
OS:Windows 8.1 Pro(64ビット)
R9 285のワットパフォーマンスがかなりイイ!
まずはR9 285の性能を『3DMark』の“Fire Strike”と、『ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア』の公式ベンチでざっくりとチェックしてみます。FF14は1920×1080ドット、画質は“最高品質”に設定しています。
↑3DMarkの結果。GTX760をチョイ上回りました。 |
↑FF14公式ベンチの結果。こちらも3DMarkと同様の傾向です。 |
もののの見事にOC版GTX760のスコアーをほんのわずかに上回ってきました。AMDはR9 285を“1440p(2560×1440ドット)ゲーミングのためのGPU”とうたっているだけあって、R9 285なら重めのゲームも快適に遊べそうです。
上位のRADEONは電力消費が激しく、Kepler世代のGeForceよりもワットパフォーマンスに劣るのが最大の欠点とされてきましたが、今回はどうか……ということで消費電力もチェッックします。計測には『Watts Up? PRO』を使い、アイドル時の安定値と3DMarkの“Fire Strikeデモ”の同一シーンにおける消費電力を比較します。
PowerTune 2.0の威力なのでしょうか、見事にGTX760の消費電力を下回りました。今回テストしたR9 285ボードはOC版でも補助電源は6ピン×2、一方、GTX760のOC版は8+6ピン仕様の製品が多いことを考えると、R9 285はGTX760よりやや使いやすいGPUであるといえるでしょう。
FXは劇的な変化なし
それでは続いてFX-8370/8370Eの性能を『CINEBENCH R15』で計測してみます。
同じ定格4GHz動作のCore i7-4790Kに大きく劣る結果になりましたが、これはFXというかPiledriverの宿命ともいえる部分。純粋な計算力ではインテルには負けますが、そのぶん安い!という部分を評価したいと思います。
まとめ:AMDはすっかりGPUカンパニーになった
以上駆け足でR9 285とFX-8370/8370Eの性能をチェックしてきました。どちらもコスパの高さを売りにした製品ですが、今回はR9 285の出来の良さ(最終製品の値段がメーカーによりバラつくことが気がかりですが)が印象的な反面、FXシリーズの精彩のなさが残念でした。クロックがちょびっと上がって値段ほぼ据置き的な製品より、やはり使ってワクワクするような新アーキテクチャーがそろそろ欲しいものです。“ああ、すっかりAMDはGPUに軸足を移したんだな……”と考えずにはいられない新製品だ、といえるでしょう。
■関連サイト
AMD
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