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新API“Mantle”で劇的にRADEONの性能は向上するのか

2014年02月15日 16時00分更新

 AMDはGCN世代(HD7000以降)のRADEONの目玉機能として、DirectX(Direct3D)よりも軽快に動作するレンダラー(グラフィック描画用API)“Mantle”を発表しました。Mantle対応ゲームならRADEONでプレイするとDirectXベースより速くなるよ!という機能なのですが、昨年発表されたにも関わらず試せる環境がなかなか登場しない“蕎麦屋の出前”状態だったのはご存知の通り。

 ですが、先日Mantleに対応したCatalyst 14.1のベータ版ドライバーがリリースされたことで、ようやく試せるようになりました。これは試さずにはいられません。今回は以下のような環境で、最新RADEONの再評価をしてみたいと思います。

Mantle

【検証環境】
CPU:Core i5-4670K(3.4GHz)、マザーボード:Intel Z87、メモリー:PC12800 DDR3L 8GB×2、SSD:480GB、電源ユニット:850W(80PLUS GOLD)、OS:Windows 8.1 Pro(64ビット)、検証グラフィックボード:RADEON R9 290Xリファレンスカード、RADEON R7 260リファレンスカード
 

 “Mantleって何だっけ?”という方はこちら(関連記事)に笠原氏の素晴らしい解説があるので、そちらを読んでおくとよいでしょう。

Nitrousエンジンでは絶大な効果を発揮!

 現時点で試せるMantle対応ゲームは『バトルフィールド4』だけなのですが、実は『Star Swarm』という開発中のゲームが、Mantle対応の新描画エンジン“Nitrous”を使っているとのこと。これは試さずにはいられません。このゲームをベースにしたベンチマーク“Star Swarm Stress Test”がSteamで配布されているので、早速試してみました。

 

Mantle

 “Star Swarm Stress Test”を起動したところ。一番下の“Start Mantle”と“Start D3D”でそれぞれの性能を比較することができます。

Mantle

 1万機以上の宇宙戦艦やら戦闘機やらがドンパチを展開するため、描画命令の数もとんでもない数になります。Mantleが最も得意としそうな状況ですね。

 画面解像度は1920×1080ドット、画質設定は“Extreme”、つまり標準設定のまま実行しました。いろんな数値が出るのですが、単純に平均フレームレートだけで比較してみます。

Mantle

 さすが新開発のエンジンだけあって、Mantleを選択したときの伸びは半端じゃありません。R7 260では3割程度しか伸びていませんが、R9 290Xでは6割弱も平均フレームレートが向上しています。Mantleを使うことでより短い時間で描画命令を出すことができるようになったため、ということでしょう。Nitrousエンジン&Mantleの効果は絶大です!

●あんまり安定しないバトルフィールド4

 それでは先日のアップデートでMantleに対応した『バトルフィールド4』でも検証してみます。バトルフィールド4の場合、いちばん左上にある“レンダラー”設定でDirectXとMantleを切り替えるようになっています。

Mantle

 左上の設定はGCN世代のRADEONとCatalyst 14.1ベータ版の組み合わせでないと出現しません。レンダラーの変更後はゲームの再起動が必須です。

 Mantleではフレームレートを計測する定番ツール『Fraps』が使えないので、最新パッチで実装された“peroverlay.framelogenable 1”コマンドを利用し、フレームのレンダリングにかかった時間からフレームレートを逆算することにしました。解像度は1920×1080ドット、画質だけ“最高”と“中”に設定して比べています。ちなみに単純にフレームレートを見たいなら、“バトルフィールド4”のコンソールを開いて“perfoverlay.drawfps 1”コマンドで表示できますが、ずっと画面をながめていないとダメなので断念しました。なお、JIS配列キーボードでバトルフィールド4のコンソールを扱う場合はこちら(関連ページ)を参考に設定しておくのがおススメです(BF3用の技ですがバトルフィールド4でも通用します)。

画質“中”におけるフレームレートの変化

Mantle

画質“最高”におけるフレームレートの変化

Mantle

 まず平均フレームレートだけに注目すると、R9 290Xでは画質“最高”よりも画質“中”のほうが伸びるのに対し、R7 260では画質“最高”のほうが伸びています。そして、重要なのは最低フレームレートが軒並み増えていますが、R7 260の画質“中”、つまり低負荷でミドルクラスGPUの組み合わせだと実に7割近く伸びている(元の数値が低いせいですが)ことがわかります。

 これらの結果は先の“Star Swarm Stress Test”とは傾向が微妙に違います。もちろん“Star Swarm Stress Test”は数が勝負で割とシンプルな画面作りなのに対し、こちらは影やら光の表現やら重厚な画面作りなので“こういう傾向もあるんだ”程度にとどめておくのがよいでしょう。ひとまず“バトルフィールド4”でもMantleの効果はある、といってよさそうです。

 ただし、今回試した範囲では“バトルフィールド4”のMantle環境は性能が安定しない印象でした。設定をチクチクと変更していると、そのうちDirectX環境より遅くなることがあり、こうなるとGPUドライバーを完璧に入れ直さないとダメなこともありました(これでだいぶ回り道をしました)。まだゲームもドライバーも改善の余地があるといったところでしょうか。

●まとめ:対応ゲームよ、早よ増えろ

 ざっくりとMantleと最新RADEONの実力をチェックしてきましたが、確かにAMDが社運をかけてリリースしたものだけあって、まだ不安定ながら効果があることがわかりました。

 しかし、RADEONを装備していてもゲームソフトの対応はもちろん、描画エンジンもMantle対応になっていないとダメ、という2段階のハードルがあります。つまり、古いゲームに関しては、Mantle対応はまずあり得ません(コストをかけてパッチをつくる酔狂な開発元があれば別ですが)。

 そう、Mantle&RADEONはこれからのゲームを快適に遊ぶためのソリューションです。これからゲーミングPCを組もうかなと考えているなら、RADEON R7/R9を使って組み、Mantle対応ゲーム待ち、という選択肢も良いのではないでしょうか。

■関連サイト
AMD

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