第341回
試行錯誤を地道に続ける“業務改善術”で、年間の費用対効果3000万円を創出
「前例をなぞって楽をしていた」―― 滋賀県のkintone活用を好転させた“失敗起点のフレームワーク”
2026年11月05日 14時00分更新
2022年にkintoneを全庁導入した滋賀県。しかし、導入から2年間の費用対効果は厳しい結果となり、単に「導入されただけ」の状態にとどまっていた。そこから課題分析を経てkintone活用を再出発。なおも失敗に陥ったDX推進課は、どのようにして「導入」から「活用」への転換を果たしたのか。
2026年に自治体の導入数が500団体を突破したkintone。ユーザー事例イベントの自治体版「kintone hive government vol.2」が2026年7月、大阪にて開催され、全国の自治体が一堂に会した。会場で共有されたのは、現場の“リアルな失敗談”や“泥臭い成功の歩み”である。
トップバッターを務めた滋賀県の中村周輔さんが語ったのは、kintoneの費用対効果を年間約3000万円にまで好転させた、試行錯誤を地道に続ける「業務改善術」だ。
“導入”で止まってたkintone 課題分析を経て再出発もなぜ失敗した?
登壇した中村さんは、滋賀県庁のDX推進課に所属して4年目。kintoneのほかには行政手続きの電子化も担当している。今回語られたのは、kintoneの導入直後の停滞から再出発、そしてさらなる失敗を乗り越えて成功に至るまでの道のりだ。
滋賀県は2022年度にkintoneの全庁導入に踏み切った。しかしその後2年間で、約2000万円のサービス利用費に対して、活用されたのは22業務。費用対効果を試算すると約520万円にとどまった。中村さんはこの成果を、「要はkintoneが“導入”で止まっており、十分に活用できていませんでした」と振り返った。
中村さんがkintoneによるDX推進を命じられたのも、まさにこの苦しい時期だった。「担当になったからには」の一念でkintoneを勉強し、「学習コストが低い」「プラグインで幅広い業務で使える」と手ごたえを感じたものの、さっそく壁にぶつかることになる。
中村さんはまず課題分析から着手し、3つの課題を見つけた。
1つ目は、委託業者に任せきりにしたことで、DX推進課が“名ばかり”になっていた「ノウハウの未蓄積」。2つ目は、活用業務数を増やすことにこだわり、成功イメージが共通化されていなかった「ノウハウの共有不足」。そして3つ目は、ルールの周知が足りず、職員の利用にブレーキがかかっていた「ガバナンス不足」だ。
中村さんはそれぞれの問題を解決すべく、他団体の取り組みも参考にしながら施策を講じるも、失敗を重ねた。
自身らのノウハウの蓄積のために「相談窓口」を設置するも、メールや電話など“相談の入口”が多すぎたため、処理しきれずにその場しのぎの対応になりがちだった。
ノウハウの共有では、定番の「コミュニティの立ち上げ」や「事例集」の作成に着手。しかし、チャットベースのコミュニティは、参加者が多すぎて職員が萎縮してしまい、盛り上がることはなかった。事例集は、掲載のハードルを上げ過ぎたゆえに更新頻度が少なく、技術的な内容が多すぎたために活用されなかった。
そして利用を促すべく「最低限のルール」だけ守ればよいと呼びかければ、アプリが乱立してしまって管理がままならなくなった。
なぜ、これほどまで失敗が続いてしまったのか。中村さんは、根本的な原因として「前例踏襲」を挙げた。「課題分析までは良かったのですが、他団体の前例をなぞることに終始し、組織に適した形に“再構築”できていませんでした。つまり、楽をしてしまったのです」(中村さん)
理想と現実のギャップを埋める「業務改善のフレームワーク」
この失敗を受け、“再構築”のアプローチとして採用したのが独自の「業務改善のフレームワーク」である。これは、「目標」「軸」「手段」「効果」の4要素を設定し、失敗した際に「どこに現実とのギャップがあるか」を検証・改善していくループ型の思考モデルだ。
実際に失敗したコミュニティの形成の取り組みを当てはめると、次のようになる。
目標:kintoneを活用し、業務価値を上げること
軸(目標への姿勢):職員自らが問題意識を持ち、業務改善に取り組むこと
手段:交流型コミュニティを形成すること
効果:ノウハウの共有を促し、職員の主体性を伸ばすこと
これをみると、「手段」のコミュニティの形成が滋賀県の現状に合っていなかったことが特定できる。後は、現実とのズレをひとつずつ解消していく。「人が多くて萎縮する」のであれば、人数が見えない形式にし、「誰が返答してくれるかわからない」ならば、DX推進課が必ず反応するルールを策定する。こうした検証を経てコミュニティは、全庁スペースのスレッドにおける「DX推進課への質問版」へと再構築された。
「もともとは職員同士が業務改善について話し合うコミュニティを想定していましたが、現実と合っていませんでした。ギャップとその原因を捉えた結果、“業務改善をしたい人とDX推進課がつながる”コミュニティに再構築しました。(職員とDX推進課の)やり取りさえオープンであれば、設定した効果も変わりません」(中村さん)
同様に、相談窓口や事例集、ガバナンスの浸透もフレームワークを活用しつつ、ゴールから逆算して再構築を進めた。例えば、ガバナンスは「職員が自律的にkintoneを使うこと」をゴールに、なぜこのルールがあって、なぜ守って欲しいのかという、「なぜ」を浸透させるアプローチへと見直している。
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