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老舗鍛造メーカーがアナログな現場にデジタルと改善文化を定着させるまで

工場の“見間違い”ミスを完全ゼロに “現場ナイズ”なkintone実装から始まった意識改革

最大の成果はミスゼロ達成ではなく現場の「意識変革」

 現場からの声を愚直にアプリに落とし込んだことが成功の秘訣になったが、他にも重要なポイントが3つあったと恒光さんは振り返る。

 1つ目は、現場を理解している人間がkintoneの改善を手掛けたことだ。そうでなければ、作業者が「何に困っているか」というコアの部分を聞き出せなかったという。

 2つ目は、フィードバックを現場で一緒に作業しながら行ったことだ。ただ「直しました」と伝えるだけでは使ってもらえない。少し鬱陶しいぐらいに横につき、「ここよくなりましたよね」と直接アピールすることが、定着の近道になったという。

 3つ目は、スピード感を持って対応することだ。「スピード感こそが、現場との一体感を生みます。極端に言えば、朝言われた要望を昼には反映して、その日のうちにフィードバックをもらう。そうすることで『よくわからないシステムを押し付けられている』のではなく、『自分たちも一緒に作り上げている』という感覚を持ってくれるのです」(恒光さん)

 こうした取り組みの甲斐もあり、約1カ月でアプリの改修は完了し、無事に実運用へと漕ぎ着けた。運用開始から約3年経つ現在、契機となったチャージ番号の見間違いは完全解消。恒光さんは、「この運用を続けていく限り、再発する可能性は限りなくゼロに近い」と胸を張る。

わずか1カ月で達成した現場ナイズなアプリ改修

 加えて、本アプリがもたらした想定外の成果が、「現場メンバーの意識改革」だ。チャージ番号の見間違い防止は、会社にとって長年の悲願。それを現場自らの力で克服した成功体験が自信を生み、別の課題にも前向きに取り組むカルチャーへと変化していったのだ。

 その結果、「進捗管理の属人化」「業務連絡の確認もれ」「紙ベースの棚卸」「鋼材の引当ミス」といった数々の課題を、すべてkintoneで解決。属人化の解消から不具合対策までが一気に進み、年間200時間の工数削減も達成した。恒光さんは、「ひとつのアプリの実装からたった1年で、これだけ現場が変わりました。もともとの目的は不具合対策でしたが、現場の意識改革こそが一番の成果だったと実感しています」と振り返った。

現場メンバーの意識改革により取り組んだこと

現場DXは「現場を本気で変えること」

 現在、現場が挑戦しているのが、「工場停止日の捻出」だ。1日の仕事量を「切断日報アプリ」で可視化したところ、月末になると仕事量が減っていることが判明。ヒアリングの結果、在庫の繰り越しを避けるために作業量を調整していたことが分かった。それならば、業務を最適化して工場の停止日を作ろうと、工数の予測などを始めているという。

 最後に恒光さんは、「現場DXは、現場を本気で変えることだと、強く実感しました。製造業では『現場が良くならないと、良いものを生み出せない』という考え方があるが、今回現場DXが成功したことで、作るものにも良い影響を与えることができました」と締めくくった。

 セッション終了後には、サイボウズ松山オフィスの村上優さんとのアフタートークが繰り広げられた。

村上さん:現場DXは簡単には進められなかったと思いますが、一番苦労した点は何だったでしょうか。

恒光さん:やはり、そもそも使ってくれなかった点です。一度でも使ってくれると改善点が見つかるのですが、そのスタートラインに立つために、実際に私が現場に立ちながら実演して、徐々に使ってもらいました。

アフタートークの様子

村上さん:横で的確に勧められるのは、恒光さんが現場のことを知っているからこそですね。やっぱりタブレットでも、現場の方は抵抗があるものですか。

恒光さん:ありました。ただ、タブレットが嫌な社員も休憩時間はスマホを触っているわけです。だったらタブレットは使えるだろうと切り込んでいきました。

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