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私→WRC

第75回

【検証】シミュレーターの猛特訓は「ラリー北海道」で通用するのか? 現役歯科医ドライバー・及川紗利亜が実車で答え合わせ

 皆さん、こんにちは。Wellpine Motorsportの及川紗利亜です。平日は歯科医師として虫歯を削り、週末はドライバーとしてラリーでタイムを削っています。全日本ラリー選手権・MORIZO Challenge Cupでの挑戦の様子をお届けしていきたいと思います。

ラリー

 今回は、全日本ラリー選手権「ラリー北海道」に参戦してきました! 前戦のラリー・カムイで、本格的なグラベルラリーを初めて経験した私でしたが、次はいよいよラリー北海道です(初挑戦で初優勝! 現役女性歯科医ドライバーが挑んだ極限の北海道グラベルラリー)。

 カムイからラリー北海道まではあまり期間がありませんでしたが、北海道での2日間のテストに加えて、長野県・モーターランド野沢で行なわれた新井敏弘選手主催の「新井道場」にも参加してきました。

 そして、実車に乗れない時間に活用したのがシミュレーターです。シミュレーターで練習したことは、本物のラリーカーでも通用するのか? 今回のラリー北海道は、私にとってそんな「バーチャルからリアルへの挑戦」でもありました。

実車に乗れない時間は、シミュレーターへ!

ラリー

 もちろん、シミュレーターと本物のラリーカーは同じではありません。ハンドルから伝わる感触も、身体にかかる重力も、路面から受ける衝撃も違います。それでも、実際のクルマに乗れない時間にもできることはあるはずということで、実車での練習と並行してシミュレーターをかなり活用しました。

 今回、シミュレーターで意識したのは、とにかくクルマをたくさん横に向けること。普段の運転なら、クルマが横を向いたら「危ない!」ですよね。でも、未舗装路を走るグラベルラリーでは、タイヤを滑らせながらクルマの向きを変えて走る場面がたくさんあります。私はまだグラベルの経験が少ないので、そうしたクルマの大きな動きを経験した回数そのものが足りません。

 だからシミュレーターでは、ただ速いタイムを出すことよりも、クルマを横に向け、そこから姿勢を整えて、次のコーナーへつなげていく。そんな動きを何度も何度も繰り返しました。失敗しても、すぐにやり直せる。

 実車ならクルマやタイヤへの負担もありますし、練習できる時間も限られていますが、シミュレーターなら何度でも反復できます。バーチャルだからこそできる「量」の練習です。

バーチャルで反復して、リアルで答え合わせ

 そして実車では、北海道で2日間のテストを行ないました。長野県・野沢では、前述の通り世界のラリーで活躍してきた新井敏弘選手が主催の「新井道場」に2日間参加。実際のクルマを走らせながら、グラベルでのクルマの動かし方を学びました。

 そこで私が意識していたのが、シミュレーターで何度も繰り返してきたことを、実際のクルマでも試してみること。もちろん、シミュレーターでできたからといって、そのまま実クルマでできるわけではありません。でも、実車で見つけた課題をシミュレーターに持ち帰って反復する。そして、次に実車へ乗ったときに試してみる。リアルで課題を見つけて、バーチャルで反復し、またリアルで答え合わせをする。

 シミュレーターを実車の代わりにするのではなく、限られた実車での練習をより濃くするために使う。グラベル経験の少ない私にとって、この使い方はすごく良い練習になりました! そして、この練習が実際のラリー北海道でどこまで活かせるのか、とても楽しみでした。

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ラリー北海道は競技が始まる前から楽しい!

 北海道入りしてからは、競技だけではなくラリー北海道ならではのイベントも楽しみました。ウェルカムパーティーでは、同じテーブルになった池田町の皆さんと仲良くなることができました! その後、リエゾンで私たちのクルマを見つけて応援してくださったり、ラリーショーにも会いに来てくださったり。ラリーをきっかけに出会った方が、その後も応援してくださる。とても心温まる出来事でした。

 ちなみにウェルカムパーティーでは、お肉をたくさん食べて、クレープまでしっかりいただきました(笑)。

ラリー

池田ラリーを成功する会のお二人とラリーショーにて!かわいいラリー北海道のミニチュアのぼりをいただきました!

初めてのラリーショーへ!

ラリー

 ラリーショーは、今回初めて選手側として参加しました。たくさんのラリーファンの皆さんと直接お話ししたり、写真を撮ったり、「頑張って!」と声をかけていただいたり、とっても楽しかったです!

 普段SNSなどで応援してくださっている方と実際にお会いできるのも、こうしたイベントならでは。いよいよラリー北海道が始まるんだ! と実感も湧いてきました。そんな楽しい時間を過ごして、いよいよ本番へ。

 ここから私は、北海道が「試される大地」と言われるワケを身をもって知ることになります……(涙)。

バーチャルで練習したことは、本番で使えた?

 いよいよラリー北海道がスタート。北海道の雄大な景色の中を走るグラベルステージは、本当に楽しかったです! そして、シミュレーターで何度も反復してきたことにも、手応えを感じることもできました。

 クルマが大きく動いても、その動き自体に戸惑うのではなく、その先でどう動かしていくかを考えられる場面が少しずつ増えてきました! シミュレーターだけで速くなれる、という単純な話ではありません。でも、バーチャルで何度も経験しておくことで、リアルで起きることに対する自分の引き出しを増やす。これは実際のラリーでも活かせる部分があるんだ、と感じました。

 ところが……ラリー北海道で私が試されたのは、ドライビングだけではなかったのです。

ラリー

「試される大地」、本当に試されました

 順調に走っていたラリー北海道でしたが、1日目の最終ステージでトラブルが発生しました。走行中にクルマの下側を強く打ってしまい、その衝撃で「サブラジエーター」と呼ばれる、クルマを冷やすための部品を破損してしまったのです。

 クルマのエンジンは、走っているとどんどん熱くなります。その熱を冷ますために冷却水を循環させているのですが、今回はその冷却水が漏れる状態になってしまいました。つまり、このまま走り続けるとクルマを正常に冷やせなくなり、最悪の場合、エンジンにも大きなダメージを与えてしまう可能性がある状態です。

 走り終わってクルマを停めたとき、冷却水の漏れに気づき、最初に思ったのは「なんとかサービスパークまで帰りたい!」でした。

 サービスパークへ戻るまでにも、かなりの距離を走らなければなりません。手持ちの水を補充しながら戻ることも考えましたが、漏れる量が多く、途中で水がなくなってしまえば、それ以上クルマを冷やすことができなくなります。

 悔しかったですが、そこでその日の競技を途中で終える「デイリタイヤ」を選択しました。クルマを速く走らせるだけがラリーじゃなかったと、私は自分の知識不足も痛感しました。ドライバーとコ・ドライバーが、クルマの状態を理解して判断しなければならない場面が、ラリーにはあります。

 たとえばサーキットなら、トラブルが起きればピットへ戻ってメカニックに見てもらえます。でもラリーでは、山の中のSSを走り終えたあと、次にメカニックのいるサービスパークへ戻るまで、基本的には自分たちでクルマを走らせて帰らなければなりません。だから必要なのは、走る技術だけじゃない。クルマを壊さずに走ること。クルマに何が起きているのかを理解すること。そして、何か起きたときに対処できるサバイバル能力。

 私は今まで「もっと速く走りたい」と思って練習してきました。でも今回初めて、自分のミスでクルマにダメージを与え、その場で判断を迫られたことで、ラリードライバーに必要なのは速さだけではないことを身をもって知りました。

 北海道のキャッチコピーといえば「試される大地」。いや、本当に試されました(涙)。

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