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AMD「Ryzen AI Embedded X100」のリアルタイムAI制御が、Jetsonの弱点であるCPU性能を突く

2026年09月21日 12時00分更新

Ryzen AI Embedded X100登場と
Kria AI SOMによるロボティクス展開

 今回AMDがフィジカルAIの目玉として持ち込んだのがRyzen AI Embedded X100シリーズである。Ryzen AI Maxシリーズの組み込み向けSKUという位置づけだ。

Ryzen AI Embedded X100シリーズの概要。ベースになるのはRyzen AI MAX 300シリーズである

 もともとAMDは長く、組み込み向けプロセッサーを発売している。連載126回でも触れたが、最初の製品であるElan SC300/SC310は1996年に発表されており、この後もずっと継続して組み込み向け製品が提供されてきた。2017年にZenをベースにしたRyzenが発表された翌2018年にはRyzen Embedded V1000が発売されている

 この後もRyzen APUをベースにRyzen Embeddedのラインナップは拡充されていったのだが、その最新版として2026年1月のCESで発表されたのがRyzen AI Embeddedシリーズである。

Ryzen AI Embeddedシリーズ。実際には民生仕様(0~105度)のものと産業向け(-40~105度)、それと自動車向けのSKUがあるので、品種自体は非常に多くなっている

 もっとも1月の時点ではまだP121/P132のみが発表。3月にP164/P174/P185が追加され、7月にX168/X188/X199が追加されるという順に分けてリリースされた。最初に発表されたRyzen Embedded P100シリーズはStrix PointベースのRyzen AIプロセッサーの組み込み向け製品という位置づけである。

 SKUによって若干差はあるが、P100シリーズもNPUは50TOPSの性能を持っており、ただしCPUやGPUのコア数はけっこう少なめ、TDPは15~54Wとこれも控えめな設定になっており、それもあってかフィジカルAIを前面に打ち出すことはなかった。

 ところがX100シリーズではいきなり方針を転換、フィジカルAIを前面に打ち出している。これはどうしてか? と言えばCPUおよびGPU性能の差が大きい(特にCPU性能)。実のところ先の「Unified Memoryを利用してCPUとGPUが統合された組み込み向け」という定義で言えば、NVIDIAのJetsonシリーズがすでに存在している。こちらのラインナップは多く、自動車向けのAGX OrinやAGX Xavierは別にしても以下のかなり広いラインナップをカバーしている。

Jetsonのラインナップ
シリーズ名 最大AI性能 TDP
Jetson Thor 2070TOPS 40~130W
Jetson Orin NX 157TOPS 10~25W
Jetson Orin Nano 67TOPS 7~15W
Jetson Xavier NX 21TOPS 10~20W
Jetson TX2 1.3TFLOPS 7.5~15W
Jetson Nano 0.5TFLOPS 5~10W

 ところがJetsonシリーズの場合、確かにAI性能というかGPU性能こそ高いのだが、一番ハイエンドのJetson Thor T5000であってもCPUは2.6GHz駆動のNeoverse-V3AE×14程度。その下のグレードのJetson Orin NXでは2GHz駆動のCortex-A78AE×8程度でしかなく、CPU性能ではRyzen系列におよぶらくもない。

 Jetsonシリーズはある意味GPUに全振りした構成なので、Edge AI「だけ」をさせるなら十分に高速なのだが、CPUとNPUが連携するような用途ではCPUがボトルネックになりやすいというあたりがJetsonシリーズの弱点である(後でベンチマークも出てくる)。

 話をX100シリーズに戻そう。今回P100ではなくX100をメインに取り上げたのは、やはり圧倒的に高いCPU性能とバランスの良いGPU/NPU性能が両立した製品だからだと思われる。P100シリーズでもNPU性能は同じなのだが、CPUコア数も少ないし動作周波数もやや低めなこともあって、フィジカルAIのメインに据えるにはやや厳しい(逆に言えばサブとしては十分に使えるという話でもある)。

最大120Wは結構厳しい数字ではあるが、NVIDIAのJetson Thor T5000は最大130Wであることを考えるとそれほど無茶ではない

 ただRyzen AI Embedded X100をチップで供給されても結構使うには困るだろう。もとになるRyzen AI Max自身、チップ単体でリテールに流れているわけではなく、対応するマザーボードも流通していない。しかもLPDDR5xを使う関係でメモリーは直接マザーボードに実装されている。ということはこれを使ってフィジカルAIを構築しようとすると、それこそRyzen AI Haloでも購入して分解して……という話になるが、そもそもが組み込みに向いた構成になっていない。

一見Mini-ITXに見える(ボードの寸法は一緒)が、実際はCOM-HPC Client Type Bという規格に準拠しており、ボードの裏側に400ピンの独自規格コネクターが用意されている関係で、Mini-ITX対応ケースに収めるのは至難の業だろう。あとバックパネルもない

 そこでAMDは今回、Ryzen AI Embedded X100を搭載したSOM(System on Module)として、Kria AIと呼ばれるボードを発表した。実はこのKriaというブランド、もともとはAMDに買収される前のXilinxが、FPGAを搭載したSOMとして2021年に発表したものである。

2021年発表時の資料より。この時はZynq Ultrascale+という、FPGA+Arm CPU搭載のSoCを実装したものだった

 現在はKria K26に加えてKria K24、さらにK24/K26をベースに特定用途向けのハードウェアを追加したスターターキットが用意されているが、今回ここにFPGAではなくCPUだけを載せたSOMとしてKria AIが追加された格好である。

 さらに、Kria AIにRobotics専用のベースボードを追加したRobotics Development Platformも同時に発表された。ちなみにP100の方に関してはこうした動きは今のところない。もうすでにパートナー企業からP100搭載のSOMやSBCが出荷されているので、今さら追加しなくても、ということなのかもしれない。

Robotics Development Platform。ロボティクス向けのI/Oを容易に構築するために、FPGAを搭載したベースボードが用意され、この上にKria AIが載り、全体がご覧のようなコンパクトなパッケージに収められている

 ところで3つ上の画像にもあったが、例えばCPUだけを使って制御ループを回すと、1ループ125μsという数字がある。これはBoschグループ企業のBosch Rexrothが出している産業機器向けのコントローラーをX100に置き換えて実装してみたところ、毎秒8000回の判断が可能だった(から、1回あたり125μs)という実績に基づくものである。

 またGPUのAI推論92msというのは、すでにロボティクスで利用されているAI推論をX100に移植したもので、要件としては100msを切ることが求められており、これを達成している。あるいはVision Classification(入力映像の分類)はカメラなどで撮影した映像がなにかを分類する処理で、NPUを使って0.4ms未満でこれを実行できるとする。

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