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第24回

長寿時代に改めて気づくサービスの先進性と価値

高齢者をポットで見守る「みまもりほっとライン」 25年続く「サービスの温もり」とは?

2026年08月28日 09時00分更新

 目をそらしたい現実だが、団塊世代が90歳台に差し掛かる2040年代に日本は、長寿時代の先にある新たな社会課題に直面する。医療・介護現場での人手不足、独居老人の増加も大きな問題となる。この未来を見据え、25年前から電気ポットを使ったユニークな見守りサービス「みまもりほっとライン」を展開しているのが、象印マホービン(以下、象印)だ。長寿サービスの舞台裏や技術的なチャレンジ、今後の展開について担当者に聞いた。

悲しい孤独死をきっかけに、25年前に始まったサービス

 みまもりほっとラインは25年以上続く長寿サービスだ。きっかけは1996年4月に東京都内にて、病気の息子さんと息子さんを看病していた高齢の母親が共に亡くなり、1カ月後に発見されるという悲しい出来事だった。この事件にショックを受けた地元の医師が「日用品を使って、高齢者の日常を把握することはできないか?」と考え、象印に相談を持ちかけたことに端を発する。

 この医師の考えに共感した象印は、同社の「炊飯ジャー」と「電気ポット」に通信機能を搭載。1997年7月に実験機を医師に提供し、ボランティアの福祉ネットワークで、約30人の高齢者を見守る活動が始まった。この実験の結果わかったのが、電気ポットは使い方に規則性があり、生活のリズムをつかむのにちょうどよいという評価。使用回数のばらつく炊飯ジャーに対して、電気ポットは日常的に利用される人が多い。サービスを統括する象印マホービンの別枝篤司氏は、「利用がなかったり、普段と違った利用パターンがあると、ボランティアと高齢者との交流のきっかけになったんです」と語る。

象印マホービン 執行役員 CS推進本部長 別枝 篤司氏

 その後、大阪や福岡でもモニター実験がスタートしたが、技術的な面で開発は暗礁に乗り上げた。当時のシステムでは、電気ポットと通信機を屋内の電灯線でつなぎ、通信機と確認者側のパソコンを固定電話回線でつなぐ必要があったのだ。家電メーカーである象印では、設置工事やパソコンのソフトメンテナンスは難しく、開発はストップしてしまったという。

 あきらめきれない開発担当者は、当時普及が進んでいたインターネットと携帯電話に目を付ける。この構想に関心を持つ通信事業社と共に、それぞれの知見を持ち寄りながら事業化を進めた。医師の持ち込みから5年後、2001年3月に「みまもりほっとライン」としてサービスがついにスタートしたという。

高齢者に抵抗感を感じさせない自然な見守りをポットで実現

 高齢者向けのサービスは、いざというときに専門スタッフが高齢者宅へ駆けつける「安否確認サービス」と、センサーやカメラを用いてご家族が高齢者の活動を把握する「見守りサービス」に大別される。最近増えてきた後者のサービスは、冷蔵庫やロボット、テレビなどにセンサーを取り付け、遠隔から高齢者の生活パターンを把握するというもの。みまもりほっとラインはこの見守りサービスの先駆けと言える。

 みまもりほっとラインは、見守る相手である高齢者宅に専用の「iポット」を置き、普段通りポットを使うだけで利用を開始できる。「電源投入」「給湯」「空だき」「未操作時間」といった状況を1日最大3回、メールで利用者のご家族に伝えられ、iポットの「おでかけ」ボタンを押すことで外出や帰宅をお知らせすることもできる。通信はセルラーなので、Wi-Fiは不要。メールでリンクされた契約者サイトでは、高齢者のポットの使用状況を1週間ごとに確認できる。

25年の歴史を持つ「みまもりほっとライン」のサービスサイト

 みまもりほっとラインの1つの価値は、高齢者側のプライバシーに配慮されている点である。カメラの場合、見守られる側の高齢者はストレスを感じるが、みまもりほっとラインで通知されるのは、あくまでポットの利用状況だけ。別枝氏は、「監視される抵抗感がないのは大きなメリットだと考えています。スマホアプリの見守りも増えていますが、使わない高齢者も多いので、みまもりほっとラインの需要はそれなりに高いんです」と語る。

 高齢者側は普段の生活でポットを使えば、自然と無事を伝えることができ、見守る側は両親の普段の生活リズムを知ることができる。たとえば、朝ドラの前やおやつの時間に給湯するといった、日々の習慣が見えてくることもあるという。また、想像以上に夏場にポットが使われているという実態を知り、「夏にポットは使われない」という社内の定説も覆されたとのことだ。

 25年に渡って、高齢者と家族を支えてきたサービスの舞台裏には、家族のさまざまなドラマが見え隠れする。サービスの契約や解約、運用に携わってきた象印マホービンの川久保亮氏は、「お子さんがサービスを契約しても、『見守りなんてゴメンだ』と、なかなか利用に至らなかった親御さんもいます。逆に見守ってほしいということで、親御さん側から契約してくれる場合もあります」と語る。

象印マホービン CS推進本部 みまもりほっとライン担当 アドバイザー 川久保 亮氏

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