第326回
「あの人しか分からない」を終わらせたあるシステム開発会社の試行錯誤
属人化の解消は多忙な“Aさん”を救うことから 切り札は「kintone×AI」を自然に使わせる仕組み
2026年08月21日 10時00分更新
岡山県真庭市の小さなIT企業であるランネットは、「あの人しか分からない」という属人化に悩まされていた。そこで、社内で最も忙しい“Aさん”を救うためのkintoneアプリの整備から改善をスタート。それがやがて、社内全体を可視化する情報基盤へと発展していった。
サイボウズは、kintoneユーザーの事例イベントである「kintone hive 2026 matsuyama」を開催。2番手として登壇したランネットの栢野(かやの)雅行さんが披露したのは、kintoneとAIを駆使して社内の属人化に立ち向かった試行錯誤の軌跡である。
“構造的な属人化”をkintoneでどう解消する?
岡山県真庭市にあるランネットは、システム開発や行政DXの支援を手掛けるIT企業だ。今回登壇した栢野さんは入社5年目で、kintone関連の開発を担当。前職は陸上自衛官で、通信インフラの保守・運用を任務にしていたという異色の経歴を持つ。難しいITをやさしく発信する社内VTuber「茅野」の中の人でもある。
冒頭、栢野さんは「業務改善を支援する会社でありながら、皆さんと同じように“超属人化”という問題を抱えていました」と明かした。過去資料が見つからず、担当者は多忙で気軽に質問もできない。担当者側も手間がかかるため情報共有が進まない――。
こうした「あの人しか分からない」状態を、開発用に導入していたkintoneでいかに打破したかというのが本事例の主題だ。
この属人化の実態を紐解くと、事業部では「誰がどの案件を抱えているのか」が曖昧で、各案件やタスクの進捗も不透明だったため、周囲がフォローできない状況だった。そして、作業報告書はあっても思考過程がないため、業務の「再現性」がなかった。開発部でも、kintoneの案件を4年間にわたり栢野さんだけが担当するなど、属人化は明らかだった。
「誰かが悪いわけではない。でも属人化が止まらないのです」(栢野さん)
解決の糸口を探るために状況を構造化してみると、そこには「負のスパイラル」が存在していた。まず、多くの案件を抱えて忙しいからこそ、記録を残す余裕がない。結果として、“自分でやったほうが早い”となってしまい、情報は担当者の中だけに閉じてしまう。こうして特定の人に業務が集中して、さらに忙しくなるという流れだ。
多忙な「先輩社員Aさん」を救うことから変革は始まった
そこで栢野さんは、業務が集中している「一番困っている社員」を救うことから着手した。それが、先輩社員Aさんである。Aさんは、ほぼ一人で、顧客のIPアドレスや利用機器、ライセンスをExcelで管理していた。
まずは、Aさんのために、拠点に紐づくネットワークと機器を一覧化した「機器管理+IPアドレス管理」のkintoneアプリを作成。さらに、顧客情報を一元管理できる「顧客関係管理(CRM)」アプリへと発展させたことで、「ようやくAさんの肩の荷が下りた」という。
そこから栢野さんは、kintoneアプリの領域を広げていく。顧客情報に紐づく案件のナレッジ管理、案件に連動する日報、顧客情報から社員に軸を移した業務負担管理のアプリまで整備された。「つまりIT資産領域から顧客管理、会社ノウハウ、社員の業務管理にまで発展し、それらの情報がすべてつながったのです」(栢野さん)
こうして、「誰が何を抱えているか」は可視化できたものの、新たな問題が発生した。それは、日報に結果だけしか入力して過程を残さない社員がいて、再現性が確保できないという問題だ。
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