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and SORACOM

第23回

仕組みとしてはシンプルだが、業務への効果は絶大

「現場に行くのが当たり前」を変えたアズビルのリモート調整 効果はプライスレス

2026年07月21日 11時30分更新

「現場にあわせた閉域網を立ち上げて、撤収できる」SORACOMの魅力

 SORACOMに行き着いたのは、2023年頃だ。「まずはマルチキャリアのSIMを探していました。たまたま別の部門でSORACOMを使っていたので、話を聞いたらマルチキャリアでSIMが利用できるだけではなく、閉域網が同時に作れるという点に興味を持ちました」と語る。

 岡山氏は、ソラコムのエンジニアと連携し、SORACOMのSIMを挿したLTEルーターを現場に設置し、中央監視システムにリモートログインできるシステムを構築した。利用するユーザーは端末のSORACOM SIMを利用するので、中央監視システムにセキュアにアクセスできる。オフィスのインターネット接続を使う場合も、SORACOM ArcのセキュアなVPN経由で利用できる。これにより、セキュリティの壁を越えることができたわけだ。

リモートエンジニアリングの取り組み

 SORACOMを選択したもう1つの理由は、その手軽さだ。「現場によっては1ヶ月から3ヶ月、半年単位でリモートログインができるシステムを構築して、廃棄してを繰り返します。こういう場合に、SORACOMは『ネットワークを素早く立ち上げて、撤収して』がすごくやりやすい」と岡山氏は語る。

 また、SIM IDをもとにした「SIMベースルーティング」という仕組みを使うことで、複雑なポートフォワーディングの設定から解放された。単なる通信のみならず、セキュリティの高い閉域網を迅速に構築・破棄できる点にSORACOMの魅力があったわけだ。

効果が実証された「リモート調整」

 まずは2カ所の現場でリモート調整を実施したが、効果は大きかった。

 1カ所目の現場を担当した調整技術部の丸野顕生氏は、「現場事務所から現場まではたった3kmなのですが、指定したバスで移動しなければならず、渋滞もあるので、往復で2時間近くかかります。でも、リモート調整を利用すれば、現場事務所で作業ができ、やり忘れがあっても現地に行く必要がありません」と効果を語る。

アズビル ビルシステムカンパニー 関西支社 調整技術部 調整技術 1Gr 課長代理 丸野顕生氏

 やりとりと調整が煩雑な作業でも、リモート調整は効果を発揮した。「建物自体ができあがっていても、空調を利用するのは6月頃のため実際の冷房試運転が行えませんでした。使い始めると、冷房に使用する冷水温度が安定せず、上がったり、下がったりを繰り返す『ハンチング』という現象が発生しました。こうしたときも現場事務所から調整作業ができます。現場に足を運んでいたら、混雑により帰れないこともあったので、本当に効果を実感しました」と丸野氏は語る。話題性も、効果も大きかったので、社内でもかなりアピールされたという。

 結果、移動に15~30分程度かかる現場でも、現場Aは3ヶ月で85時間、現場Bは4ヶ月で300時間という大幅な時間削減が可能になった。定性的な効果でも、「机とイスのあるところでPC作業ができる」「熱中症のリスクを低減できた」「すぐに現場の状態を確認できるので安心」といったメリットがあった。単なる生産性向上のみならず、働き方改革にも貢献することがわかったのだ。

変わり始めた現場の働き方

 後輩の教育やユーザーサポートという面でもメリットは大きかった。弘中氏は、「中央監視システムの画面を見ながら後輩に説明できます。ビル管理のお客さまも、最初はなかなか使い慣れないということで、サポートが必要になるので、お互いに画面を見ながら、円滑に説明できるようになっています」と語る。中央監視システムの画面を出し、センサーや監視盤を目の前にしながら、操作を体験すると新人の理解度も高いという。

利用は30現場に一気に拡大 現場からも愛される「リモート調整」

 移動時間の短縮という定量的効果に加え、生産性の向上、働き方改革、新人の教育といった定性的効果も大きかったリモート調整。さっそくアズビルの業務計画に組み込まれ、利用する拠点は一気に拡がった。「全国に拠点があるのですが、昨年度だけで30現場くらいに展開でき、今年度も同程度の展開を予定しています」と橋本氏。

 リモート調整を導入した拠点の担当者にアンケートを行なったところ、導入意向は非常に強かった。「床の敷設作業で、中央監視システムの場所まで立ち入り禁止という現場もあります。こうしたときでも、遠隔で作業ができます。これもプライスレスな効果の1つです。私が調整技術部にいた頃からあればよかったのになあと思っています(笑)」と橋本氏は語る。

 現在は、竣工前のみならず、竣工後の改修でも利用されるようになり、業務効率を大きく向上させている。「もう何年かすると、リモート調整は当たり前のように使われるようになると思います」と橋本氏は語る。さらに今後は海外でもSORACOMを利用する予定で、容易なセットアップを可能にする仕組みを模索している。

 仕組みとしてはシンプルだが、業務への効果は絶大。「現場に行くのが当たり前」の常識を覆す今回のリモート調整こそ、今後の当たり前になっていくはずだ。

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