第317回
紙とExcelまみれのアナログ業務からの脱却
「新しいことは面倒だ」という保守的な社員の心をほぐし、社内DXを推進させたヒントはYouTubeにあった
2026年07月08日 11時30分更新
工事台帳を核にした一元管理で、決裁スピードを5日間短縮した
続いて村野さんが掲げたのは、使わないと業務が進まないシステムを作る、という方針だった。営業所は受注案件の情報をすべて手入力でExcelに管理し、本社は営業所からメールで届いたデータを手作業で転記していた。そもそも営業所と本社では管理するExcelの様式が違い、転記ミスが増える温床になっていた。
そこで村野さんは、本社のUIに寄せて工事台帳をアプリ化した。迷わないようルールを設定し、自分の案件情報だけをレコードに追加していく形にして、工事台帳での一元管理を実現。メールとFAXはほぼ廃止し、用事があるときはkintoneのメンション機能でコメントする。現場の図面データもここに格納したため、現場の担当者はアプリを開くだけで、どこにいても検索でき、品質を落とさずに作業できるようになった。本社と営業所がレコードを追加するたびに、工事情報のマスターが累積していく。
村野さんが自信作と胸を張ったのが、建設業に欠かせない予実管理アプリだ。工事情報は工事台帳からルックアップするため、転記は不要。入力項目を絞り、工種を選ぶだけで分類ごとの原価管理と自動集計ができる。さらにPDFをレコードに格納できるようにし、印刷まわりには同じ九州のKAIZENのプリントプラグインを採用した。
工事台帳がデータベースになったことで、バックオフィスにも大きな変化が訪れた。必要な情報がすべて工事台帳に集約されたため、書類を探す手間がなくなり、そもそも紙が発生しなくなって、書類棚はスカスカになったという。
「必要な情報がすべてここにあるなら、注文書も作成できるはずだ、と。そのひらめきから、工事台帳から自動で反映して、PDF出力まで可能にしたんです」(中嶋さん)
効果は数字にも表れた。これまで数日~1週間かかっていた決済承認が最短当日~翌日に短縮された。工事台帳のクラウド化で現場完結型の働き方が実現し、転記作業はゼロになり、事務作業の時間は大幅に減ってペーパーレス化にも成功した。それ以上に大きかったのが、空気の変化だ。現場からは、ここをこうしてほしい、こんなアプリを作ってほしい、といった自発的な改善案が続出するようになった。
「ミスが減り、心にも時間にも余裕が生まれました。社内では、情報が会社の資産として共有される文化が定着したんです」(中嶋さん)
二人が見据える先も、工事台帳が核になっている。注文書アプリや予実管理アプリへと派生させたように、基幹となるアプリを作れば、ほかの業種でもさまざまな派生が可能だと考えているのだ。今後はリアルタイムの利益管理へ進み、収益の可視化や日報の進化で赤字の原因を見えるようにし、AIの補助も使いながら、若手社員の背中を押せる環境を作っていきたいという。
村野さんは最後に、会場全体へこう呼びかけた。
「ITの専門家がいなくても、自分たちの手でDXは進められます。そんな私たちも、1年足らずでここまで来ました。会場の皆さんも、今日から一緒に一歩を踏み出しましょう。結局、愛なんです。好きじゃないとできません。その好きを大事にしてください。西部道路には希望があります」と村野さんは締めた。
質疑応答
サイボウズ西村さん:kintoneでの業務改善に、ここまで頑張れたモチベーションを教えてください。まずは村野さんからお願いします。
村野さん:3年前に専務がkintoneを導入してくれて、新しい道具を与えてもらったような感覚でした。まずは遊び感覚で触っていただけなんです。
サイボウズ西村さん:楽しみながら業務改善ができたんですね。では、中嶋さんはいかがですか。
中嶋さん:私は、村野さんに方向を示してもらって、こつこつ形にするのが得意なんです。最初の型を作ってもらえれば、そこから広げるのは割と得意で。
サイボウズ西村さん:低コストでの内製化にこだわっていましたが、内製となると、ご自身のスキルや知識の習得も必要かと思います。どうやってスキルを身につけたのか、参考にされたサイトがあれば教えてください。
村野さん:私はYouTubeのコムデックさんのチャンネルですね。kintone芸人とも呼ばれる方で、ずっと見ては、これは使えそうだというものを真似していました。
中嶋さん:私はペパコミさんです。いつも肩にインコを乗せて解説されていて、それを参考にさせていただきました。
サイボウズ西村さん:お二人ともYouTubeを参考にされたんですね。会場の皆さんも、お悩みの際はYouTubeで検索してみると、いいヒントが得られると思います。
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