最初のルール制定から160年超、世界に広がるサッカーの歴史と変わらない魅力を追う
ワールドカップ・優勝トロフィーの数奇な運命 ―FIFAサッカーミュージアム訪問記
2026年07月06日 16時30分更新
優勝トロフィーがたどった数奇な運命 ―「盗難」から「忘却」まで
FIFAサッカーミュージアムには、歴代ワールドカップのトロフィーも展示されている。
初代のワールドカップのトロフィーは、FIFA初代会長を務めたフランス人、ジュール・リメ(Jules Rimet)氏にちなんで“ジュール・リメ”と呼ばれる。「勝利の女神」をモチーフとしたデザインを手がけたのは、フランス人彫刻家であるアベル・ラフルール(Abel Lafleur)氏。初回の1930年大会から1970年大会まで、優勝チームはこの“ジュール・リメ”トロフィーを掲げていた。
そして1974年大会以降、現在まで使われているのが、地球を掲げる2人の人物像がデザインされたトロフィーだ。こちらは、イタリアの彫刻家であるシルヴィオ・ガッツァニガ(Silvio Gazzaniga)氏が1974年にデザインしたもの。18金製で高さは36センチある。
ちなみにワールドカップのトロフィーは、優勝国が永久保持する仕組みではない。表彰式では本物が手渡されるが、そののち各国チームに贈られるのは複製のトロフィーである。
もうすぐ100周年を迎えるワールドカップの歴史では、トロフィーにもさまざまなドラマがあった。
まずは1954年、西ドイツがワールドカップ優勝国になった際の「台座」問題だ。ラピスラズリという鉱石で作られたジュール・リメの台座は、当初は4面構成だった。しかし、優勝国名を4回刻んだあと、5代目の優勝国である西ドイツの国名を刻むスペースがなかった。そこで、8面を持つ新たな台座に新調され、初代の台座のことは忘れ去られた。
1966年には「トロフィー盗難」事件が起きる。1966年の英国・ロンドン大会の直前、展示されていたジュール・リメが盗まれた。ただし数日後、住宅の生け垣の中から、新聞紙に包まれた状態でジュール・リメが発見される。しかも、発見したのはその家の飼い犬(名前はピクルス)だったという。
災難はまだ続く。1970年大会で優勝したブラジルは、当時の規定に基づき、3度目の優勝によってジュール・リメの永久保持権を得た。その後、ジュール・リメはリオデジャネイロのブラジルサッカー連盟本部に保管されていたが、1983年に盗難に遭ってしまう。これは現在まで行方不明のままであり、ブラジルにはレプリカが保管されている。
時は進んで2013年。忘れ去られていた初代の4面型台座が、ふたたび脚光を浴びることになった。FIFAがサッカーミュージアムの開設準備を進めるなかで、倉庫の棚に初代の台座が眠っていることを発見したのだ。“60年越しのお宝発見”というわけだ。
現在、FIFAサッカーミュージアムには、発見された初代の台座がトロフィー(レプリカ)と共に展示されている。
筆者がFIFAサッカーミュージアムを訪れた4月、男子ワールドカップ2026のトロフィーは“大会直前の遠征”に出ており、展示コーナーには空のケースだけがあった。一方、女子ワールドカップのトロフィーには、2023年大会を制したスペイン代表まで、歴代優勝チームの名が刻まれていた。
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