週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Xアイコン
  • RSSフィード

Boxユーザー“王者”のオンワードHD、塩野香料、北海道電力が「現場のリアル」を語り合う

「導入・浸透・AI活用」3つの壁をどう壊す? IT担当者の共通の悩みに挑んだ3社の知見

2026年06月26日 09時00分更新

 新しい業務ITツールを導入し、社内に利用を浸透させる――。その業務は、簡単なようでいて難しい。企業のIT担当者は、日々そうした“壁”に直面している。

 6月4日、5日の「BoxWorks Tokyo 2026」では、コンテンツ管理プラットフォーム「Box」のユーザー企業3社がこの“壁”をどう突破してきたのか、それぞれの現場経験から生まれた具体的な知見やヒントを紹介するセッションが開催された。

 セッションタイトルは「アスキー大谷が迫る! Boxユーザー祭り王者が語る現場の壁突破」。トークテーマとなったのは「導入の壁」「浸透の壁」「AIの壁……?」という“3つの壁”だ。

(左から)オンワードホールディングス DX推進室 DX推進Div. ITプラットフォームSec. 課長の杉本隼氏、塩野香料 DX推進Gr. 主任の枝木由希子氏、北海道電力 DXデザイナーの夏井祐人氏

業種も規模も違う3社、それぞれが語る“3つの壁”の突破術

 今回登壇した3社はいずれも、過去の「Boxユーザー祭り」において、ユーザーアワードの「Box Customer Award Japan」を受賞した経験を持つ。

 オンワードホールディングス(以下、オンワードHD)は、「23区」「UNFILO」などのアパレルブランドを手がけるオンワード樫山を中核とした、生活文化創造企業グループである。現在では、ライフスタイル事業、企業ユニフォームを作るBtoB事業など、アパレル以外にもビジネス領域を拡大している。同社からは、DX推進室の杉本隼氏が出席した。

 塩野香料は、創業が1808年という、200年以上の歴史を持つ総合香料メーカーだ。食品や日用品に使われる香料の製造に加え、最近では“老舗の変革企業”というビジョンを掲げ、香りの空間演出、生活環境におけるにおいの問題解決などにも取り組みの幅を広げている。セッションに出席したのは、同社DX推進グループの枝木由希子氏だ。

 北海道電力は、北海道の地域に根ざして電力を供給するエネルギー企業だ。火力、水力、原子力、再生可能エネルギーという多様な電源を組み合わせて、日々の暮らしや産業に欠かせない「電気」を安全確実に提供しつつ、持続可能な社会の実現に貢献している。同社のDXデザイナー、夏井祐人氏が出席した。

 以上の3氏に加えて、解説役として、Box Japanでカスタマーサクセスマネージャーを務める伊藤孝洋氏も参加した。伊藤氏は、Boxユーザー祭りの司会を毎年務めており、Box製品だけでなくユーザーの現場にも詳しい。ここに、モデレーターとしてTECH.ASCII.jp編集長の大谷イビサが加わり、セッションがスタートした。

Box Japan カスタマーサクセス本部 カスタマーサクセスマネージャーの伊藤孝洋氏

第一の壁「導入の壁」:経営層をどうやって説得するか?

 企業ITの現場に立ちはだかる第一の壁は「導入の壁」である。ITツールの導入にあたっては、コストもかかることから、会社上層部を説得できるだけの材料が必要になる。「そもそもなぜ導入が必要なのか?」「投資対効果は?」といった問いに答えられなければ、導入の壁は突破できない。

 まず、各社は何を実現したくてBoxを導入したのか。そして、実際に何が実現したのか。

 オンワードHDでは、常態化していたファイルサーバーの容量不足を解消するために、容量無制限で使えるBoxへの乗り換えを決めた。杉本氏は、同じタイミングで大規模なシステムの更新プロジェクトが動いていたため、そこにうまくBoxの導入を組み込むかたちで導入を進める作戦をとったと語る。

 導入後、ユーザー部門では「Box Relay」を使った業務のワークフロー化が、DX推進部門ではノーコード/ローコードツールを活用した業務の自動化が進んでいるという。ユーザー部門自身で作成し、稼働しているワークフローは90個以上に及ぶ。また、ノーコード/ローコードツールはBoxと連携させて、たとえば「注文書の管理フロー」「工場とのファイルのやり取り」といった業務の自動化を実現しているという。

 塩野香料では、ファイルサーバーやNAS、個々人のPCなどに分散していたファイルを一カ所にまとめ、会社全体で情報資産が利活用できる環境を目標として、Boxの採用を決めたという。ただし、経営層を説得するためには“コスト面の壁”を突破しなればならなかった。

 そこで枝木氏は、「Boxの導入による“見えないコスト”の削減効果」を試算し、Boxの投資対効果として具体的に示した。経営層も納得したという。「たとえば、社員がファイル検索に費やしている時間は毎日これくらい、などと、Boxの導入で削減できる作業時間を積み上げていき、ライセンス費用を上回るコストメリットがあることを示しました」(枝木氏)。

 Boxを導入したことで、それまで個々人でばらばらだったコンテンツの保管場所や保管ルールが一元化され、新旧ファイルが入り混じって混乱するような事故もなくなった。さらに、SalesforceやMicrosoft関連などの外部ツールとBoxとを連携させて、データ活用にも取り組んでいるという。

 北海道電力の夏井氏は現場部門に所属しており、その立場からBox導入の目的などを説明した。これまで夏井氏の現場では、紙の資料を管理/保管してきたが、増え続けたために置き場所がなくなり、今後どうすべきかを検討していた。「紙管理のままで、新たに書庫を建設するという選択肢もありました」(夏井氏)。

 検討の結果、たどり着いた結論がBoxの導入だった。「容量無制限」「強力な検索機能」など、前の2社とも重なる採用理由もあるが、最も魅力的だったのは「強固なセキュリティ」だという。社会インフラを支えるエネルギー企業として、情報セキュリティは欠かせないポイントだ。

 さらに、Boxに保存したコンテンツは、将来的にAI活用、データ活用に生かせる点も「プラスαの良さ」だと、夏井氏は付け加えた。紙のままの倉庫保管では、こうしたメリットは生まれない。

 3社におけるBox活用の実態を聞いたBox伊藤氏は、「Boxを単なるファイル置き場ではなく、『DX戦略の中心』として捉えていただいている」とまとめた。Boxでは、顧客企業が導入の壁を突破できるよう、Boxコンサルティングや各種導入支援サービスも展開している。

第二の壁「浸透の壁」:利用に抵抗感のある現場をどう変えていく?

 第二の壁は「浸透の壁」である。新しいITツールを導入しても、現場では使ってもらえず、なかなか利用が定着しないという悩みはよく聞かれる。現場では「ツールが増えて面倒」「これまでのやり方がよかった」「使い方が分からない」など、さまざまな不満の声も上がる。

 Boxを導入した3社では、それぞれどのようにして、Boxの利用を社内に浸透させていったのだろうか。

 オンワードHDでは、ファイルサーバーからBoxへの移行後、半年ほど経った時点で、社員の側から「もっとBoxを活用していきたい」という前向きな声が上がるようになったという。

 杉本氏らDX推進室では社内向けセミナーの開催を考えたが、ほかの業務も忙しく、そこまでは手が回らなかった。そこでBoxに相談し、Boxのカスタマーサクセスチームに社内セミナーの開催を依頼した。

 「このセミナーはなかなか好評で、参加した社員は皆、真剣に取り組んでいました。やはり、導入したまま放っておいても浸透はしていかない。こちらから継続的に学習機会を渡して、浸透させていくという姿勢が大切だと思います」(杉本氏)

 塩野香料では、現場社員にBoxを使ってもらえるように「Boxがないと仕事ができない状態」を目指す方針を立て、社内への浸透を図ったという。社員が迷わず使えるように、共有フォルダはシンプルな構成で設計した。さらに、社長を含む経営層からBoxの利用を促すメッセージを発信したほか、ITが得意な現場メンバーを「活用推進者」に任命して、現場での利用フォローをしてもらう体制づくりも行った。

 「製造業ということもあって、ふだんの業務ではパソコンを使わない社員も多くいらっしゃいます。そこで、活用推進者のメンバーにフォローしてもらいながら、わたしたちDX推進グループも積極的に現場に関わりに行きました。『ここまでできましたね』とか『こんな使い方もできて便利ですよ』とか、Box活用の底上げをしていくようなイメージでしたね」(枝木氏)

 北海道電力では、これまで使っていた他社サービスとBoxを併存させる形で導入したため、「どんな点でBoxのほうが優れているか」を伝えることに注力したという。具体的には、社内ユーザー向けにワークショップを開催したり、社内チャットでBoxの利用についての質問を受け付けたりする取り組みを行った。さらに、社内からの質問と回答は社内ポータルを作れる「Box Hubs」に蓄積し、AIチャットボットが質問に自動回答できる仕組みも作っている。

 「最初はBoxのことを知らない社員もいたので、『新しく入ったBoxとはこういうものですよ』というところから一歩一歩、地道にアピールしていきました」「今年度はさらにBox AIを活用していきたいと考えています。現在は、Boxコンサルティングにご支援いただいて、社内向けのAIワークショップを開催する方向で調整中です」(夏井氏)

 Box側でも、導入後の利用定着や社内浸透の支援に力を注いでいる。伊藤氏は、Boxの基本的な使い方のトレーニングから、ユーザー企業の業務プロセスにどうBoxを組み込めるかという提案、ユースケースの紹介、ユーザー企業内でのアンバサダー制度確立の相談、さらには中長期的なBox活用ロードマップの共同検討まで、幅広い取り組みを行っていることを紹介した。

 「Boxの利用ステップに応じて活用いただける情報をまとめた、『Box活用ナビ』というポータルサイトもご用意しています」(伊藤氏)

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります