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「グルーミング」の舞台になってしまうことも

オンラインゲームが子どもと犯罪者をつないでしまう!?

2025年12月30日 07時00分更新

実名バレは親が原因!?

 とある親御さんとお話ししたのですが、「オンラインゲームでは個人情報を喋らない」という約束をして許可を出したものの、子どもは喋っちゃいましたと仰っていました。

 たとえば、「あー、明日月曜だ。学校ダルい」「学校って小学校?」「なんとか小です」「そうか、なんだ近いじゃん! 今度遊ぼうよ」「イイっすね! ぜひ遊びましょう」となってしまうので。

 会話の流れで喋っちゃう。一緒にプレイし続けていているなかで、助けてくれたり連携がきれいに決まったりするわけです。「守ってくれてありがとうございました」「あのぐらい平気だよー」みたいな。そんな頼りになってめちゃくちゃ良い人だから、信頼するし好きにもなる。もっと仲良くなりたい。

 「今日は楽しかったです。ありがとうございます」「この後もさぁ、良かったら一緒にプレイしない?」「よかった! フレンドよろしく」。まあ、断らないですよね。すでに散々喋っている仲ですし。

 すると、何度もプレイしてますます仲良くなって、気づいたらちょっとした会話のなかで個人情報ってどうしても漏れていくのです。特にボイスチャットをしていると、親に「●●ちゃん、ごはんよ!」と名前呼ばれて実名がバレるとか。

―― 子どもを守りたいと思っている親が原因に。

高橋 結構よくある話で、なし崩し的に「名前割れちゃったから、これからは●●でいいっすよ」みたいな。失言や漏れる音声でさまざまな個人情報がバレていくのです。そしてそのうち、「いつも一緒にプレイしているみんなでオフ会しません?」みたいな流れもよくあることなのです。

 フレンドがまともな人たちなら、「じゃあ成人になるまでオフ会やめとこうね」とか、「その前に親御さんと話させて」と許諾を得てから会うなどする一方、ノリノリで集まった挙句、一人だけ中学生だった、みたいなこともまた普通にあります。

 そもそも、人気のタイトルのなかには規約で15歳以上対象にも関わらず、小学生がプレイしているわけです。システムとして課金があるうえ、いじめや暴言、そして見知らぬ人と出会えてしまうゲームだからこそ対象年齢が設定されているのです。

 そんなゲームをプレイして、フレンドになることも自由でボイスチャットまで可能なのですから、「そりゃ、そうなるでしょ?」と。みなさんSNSには結構気を使っているのに、ゲームには案外気を配っていないのです。

現在のゲーム環境を知らない保護者も

―― ソーシャルエンジニアリング的と言いますか、他人の懐に入るハッカーみたいですね。それが子ども相手だとグルーミングになる。

高橋 明らかに女の子だとわかっている子にはフレンド申請が大量に届くというのは有名な話です。そして、ボイスは変えることができるので、女の子のフリをしてプレイして仲良くなった女の子を呼び出して……という事件もありました。しかも加害者は大学生にもなっていない若者だったのです。

 フレンドになってプレイしているうちに「あれ、女の子だったの!?」というケースも多いのですが、意図的に探し出してグルーミングするというケースもままありまして。

 ネット経由で小学生が被害に遭う事件は右肩上がりなのですが、啓蒙啓発が行き届き始めている中高生は減少傾向にあります。プレイ人口、そして被害の絶対数は圧倒的に中高生のほうが多いはずですので、これは良い傾向と言えます。

 小学生の場合はプレイヤーの低年齢化が著しく、啓蒙啓発も行き届いてはいません。全校的にゲーム経由での被害に注意するようなリテラシー教育はそこまで力が入っておらず、私も講演で小学校に呼ばれる際は、高学年や保護者向けに話してくださいと言われがちです。

 そして保護者に話してもリテラシー教育を受けていない世代の場合、理解できないパターンもあります。ゲーム経由で被害に遭うということに保護者側が思い至らないことも多いので。

 対して小学生は「スマホは持ってないけど、ゲームでならつながれる」と感じています。新型コロナのときも、小学生から大学生まで口を揃えて、「友達とはゲーム内で待ち合わせて、ゲームとは関係ない話をひたすら喋っていた」と言っています。年代は離れていますが、みんな同じ手段を使っていたのです。

―― 親御さんが思っている以上にプレイヤーの母数は巨大ですよね。コロナ禍では世界中でそんな塩梅だったのでフォートナイトが急成長したのですね。

高橋 友達がアバターを格好良くしていたら、自分も課金したくなるでしょうし。本当うまくできているサービスだなと思います。保護者はよくわからずに禁止だとか課金するなとか騒ぎますが、自分だってLINEのアイコンをコロコロ変えているでしょと。その延長線上ですよと。

フォートナイトがコロナ禍におけるコミュニケーション手段だった

二瓶 新型コロナのときはフォートナイトがコミュニケーションの柱になっていたと言っても過言ではなかったと思います。

―― フォートナイトがきっかけで見知らぬ友達が増えたなどは?

二瓶 Switchのアカウンント内での友達関係なので、知らない人ではなく学校の友達です。ちなみに、その頃はスマホでLINE通話する前だったので、フォートナイトのボイスチャット機能が友達とのやり取りの要になっていました。外出自粛の期間中はフォートナイトに(子どもの友達付き合いなど含めて)ある程度助けられたと、僕も妻も思っています。

 そういえば最近、息子が「東方Project」にハマり、「聖地巡礼に行きたい」と言い出しまして。この間、諏訪大社を巡ったりしました。

―― 健康的な推し活!

二瓶 そうなんですよ。タクシーの運転手さんも知らなかった漏矢神社という神社とか。近隣の商店でタクシーを降りて、そこから先は歩いて探すしかないという修行みたいなことになりました(笑) 現在は「推し」関連の知識を高める方向性なので、そこはちょっと面白いなと。

 たぶん、そのうち何かしらのコミュニティーを見つけて友達と行くようになるのかもしれませんね。それはうれしい気もしますし、成長が見られるのかなと。

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