「AIで新規事業作ってよ」 アイディア出しからビジネスモデルまでChatGPTを活用する実践プロンプト
2025年11月21日 16時00分更新
本連載は生成AIをこれから活用しようとしている方たちのために、生成AIの基本やコピペしてそのまま使えるプロンプトなどを紹介。兎にも角にも生成AIに触り始めることで、AIに対する理解を深め、AIスキルを身に着けて欲しい。第36回はChatGPTを使って新規事業を立ち上げるのに役立つプロンプトの書き方について解説する。
ある日突然、社長から「流行りのAIを使って何か新しい事業を考えてよ」と言われたらどうする? 実際は、こんなにライトではないかもしれないが、似たようなことは多くの会社で起きているのではないだろうか。
よし、やるぞと意気込んでも、一人で考え続けるのは難しい。では、誰かに相談しようと思っても、相手を選ぶのに悩んでしまう。社内の上司や同僚は、どうしても、うちの会社では難しいよ、といった社内の常識や力関係にとらわれがちだ。せっかくの斬新なアイディアが、内向きの議論でしぼんでしまうことも少なくない。
そこでお勧めしたいのが、生成AIを壁打ちの相手にすることだ。AIには感情や利害関係がないため、深夜に思いついた突拍子もないアイディアをぶつけても、AIは疲れた顔もせず、24時間365日、真剣に付き合ってくれる。さらに、知識の量が桁違いだ。普通の人間なら自分の専門分野以外の知識は限られるが、AIは、例えば教育業界で流行っている仕組みと飲食業界の新しいやり方を瞬時に組み合わせて提案してくる。
とはいえ、ただ「何かいいアイディアない?」と聞くだけではまともな答えは返ってこない。AIはユーザーの鏡のようなもので、あいまいな質問には、あいまいな答えしか返ってこない。
例えば、今回は中堅建設会社で、AIを使った新規事業を考えろと命令されたというストーリーにする。事業開発の最初のステップはアイディア出しと市場リサーチ。どちらも生成AIの得意分野だ。
アイディアから考えるためのテクニックやフレームワークはたくさんある。今回は、キーワードクロスで考えてもらった。あっという間に、中堅建設会社、AI、新規事業という3つのキーワードから6つの新規事業を考えてくれた。10個出せと言ったら、10個出てくる。もちろん、この方法でなくてもいい。適切なフレームワークを知らないなら、「アイディアを出すフレームワークを教えて」とAIに聞けばいい。
■プロンプト
中堅建設会社で、AIを使った新規事業のアイディアをだしてください。3つのキーワードクロスで幅出ししてください。
■出力
① 「現場効率化 × 生成AI × サブスクSaaS」
● アイディア:建設現場の“マイクロ業務”を自動化するAIオペレーターSaaS
・日報自動生成
・現場写真から進捗レポート自動作成
・現場チャットログから“暗黙知の工事リスク”を抽出
・安全書類・KYシートの自動作成
・作業工程のAI要約
ターゲット:中小規模の建設会社(元請・協力会社)
収益モデル:月額3~20万円のSaaS
強み:現場の“実務の痛み”に最も刺さる
~略
建設現場のいろいろな細かい業務をAIで自動化するSaaSをはじめ、ドローンによる建築物の点検プラットフォーム、ベテランの技能をAI化した教育サービス、“事故ゼロ化”AI安全監視サービスなどのアイディアが出た。
これだ!と思えるアイディアが出るまで、何度でもChatGPTに考えさせればいい。アイディア出しの際のキーワードに「予算1億円程度で」「既製品のAIを使って」「AIベンダーが手を出さなそうなもの」などの要望を入れるとさらにヒット率が高まる。
良いアイディアが見つかったら、次はアイディアを絞り込もう。ライバルや市場を調べ、「このアイディアと似ているライバル企業やサービスを教えて。それぞれの強いところと弱いところをまとめて」と指示する。AIは人間では見落としがちな小さなライバルや、意外な視点を教えてくれる。
今回は、直接競合と間接競合の7サービスを探し出し、特長を比較したうえ、それで差別化できるポイントを指摘してくれた。
「既存の施工管理ツールの上に乗る、“現場マイクロ業務に特化した生成AIオペレーター”というのが、あなたのプロダクトの“空いている席”になります」と結論付けてくれた。
■プロンプト
以下の新規事業アイディアを実現させるために、このアイディアと似ているライバル企業やサービスを教えて。それぞれの強いところと弱いところをまとめて
~これだ!と思ったアイディアを貼り付け
アイディアの輪郭がはっきりしてきたら、次は「本当に儲かるのか?」、「長く続けられるのか?」をチェックする段階だ。まず、儲けの仕組みを具体化する。事業計画は、どこで売上を立てるか、何にお金がかかるか、どうやってお客さんを集めるかといった要素が複雑に絡み合う。
そこでChatGPTに「シビアな目線のコンサルタントとして、このアイディアを元に、大きな利益が上がるビジネスモデルを構築してください」と頼んでみよう。ぼんやりしていたアイディアが、具体的な事業の骨組みに変わっていく。
例えば、月額3~20万円程度のサブスクでは利益が伸びにくいとばっさりと切り込んできた。生成AIは基本的にユーザーに寄り添うポジティブな意見を言う傾向にあるので、「シビアな目線のコンサルタントとして」というプロンプトを入れてニュートラルな指摘をしてもらうようにしたのだ。
ここでは、SaaSは「営業獲得の足がかり」として入り口にし、「AI×BPO(AIオペレーション代行)」で自動化しきれない部分を請け負うサービスをすべきだと提案してくれた。「SaaSの“周辺の面倒な業務”は、建設現場では必ず発生し続ける」や「中小建設会社は“人手がいない”“事務員を増やせない”ため、代行ニーズが異常に高い」と言われれば納得だ。
続けて、3年計画の数字や将来のビジョン、「さらに儲けるための戦略(プロコンサル視点)」まで提案してくれた。
いい感じにまとまってきたら、試して欲しいのが、「ストレステスト」と「改善策の提案」を要求すること。事業案の作成者が見落としがちな潜在的リスクをAIの客観的な視点で洗い出し、事前に対策を講じることができる。
■プロンプト
この事業計画にひそむ『見えないリスク』を5つ挙げてください。それぞれ、どうすれば対策できるかも教えてください
■出力
リスク1:“SaaS部分に対する期待値が高まりすぎるリスク”
● 見えない理由
建設会社は「AIで全部自動化できる」と誤解しやすい。結果、SaaS単体では到達できない業務(例:書類の最終レビュー)まで期待され、失望されて早期解約されるという、建設DXでよく起きる典型的な失敗パターン。
● 破壊的影響
導入後3か月以内のチャーン増加
営業コストが再膨張
PMF誤認による資金難
● 対策
「自動化できる範囲」と「できない範囲」を最初に厳密に宣言→ 契約書に“対象外作業一覧”を明記。
AIの精度向上は“継続の価値”として売る
~略
厳しい意見が羅列され、本当にこの事業案で大丈夫なのか?と不安になるほどだが、それが目的。しっかりと、対策も列挙してあるので、精査して検討すればいい。出力の最後に、
「必要であれば、
✔ リスクを回避する「導入オペレーション設計」
✔ プロダクトの最初の“必殺機能”選定
✔ 投資家向けにリスクを逆に強みにする説明方法
などもまとめます」
のように言ってくれたように、AIに何でも頼めばいい。ただし、AIの答えを鵜呑みにするのは厳禁だ。AIは、事実ではない情報をいかにも本当のことのように答えることがあるからだ。
AIを活用する際に忘れてはいけないのは役割分担だ。AIが得意なのは、膨大なデータ処理やパターン探し、客観的な分析。一方で、人間がやるべきことは、最終的な判断、倫理的なジャッジ、そして何より「鋭い問い」を立てること。AIが出してきた分析結果やリスク指摘を「はい、そうですか」と鵜呑みにするのではなく、それを材料にして、最後に「よし、この道で行こう!」と決めるのは、あなた自身の責任なのだ。
膨大な情報から必要なものを抽出し、整理し、アイディアを精査し、アドバイスまでもらえるのだから、生成AIを使わない手はない。これは、起業する際にも、キャリアプランの再構築でも、フリーランサーの売り上げアップ施策を考える際にも利用できる。まずは、気軽に相談するつもりで、生成AIに話しかけてみよう。
AIで何とかしたい業務を大募集!
「簡単すぎて驚く生成AIの使い方」で取り上げてほしいAIの使い方を大募集。「この作業をAIで時短したい」「こういうことがしたいけどプロンプトはどう書けばいい?」など、お困りのことを解決します。
応募はハッシュタグ「 #ASCIIAI連載ネタ 」を付けてXでポストするだけ。ハッシュタグ「 #ASCIIAI連載ネタ 」がついたポストは編集部で随時チェックし、連載記事で取り上げます。高度な内容である必要はないのでお気軽にどんどんポストしてください。
注目の最新AIニュース
アンケートで判明した年代別生成AIとの付き合い方
2025年11月17日、博報堂DYホールディングスは「AIと暮らす未来の生活調査2025」の速報結果を発表。生成AIの認知率は85.3%に達し、実際の利用者は全体の33.6%、生活者の3分の1が利用経験を持つことが判明した。
利用者のうち45.3%は「2~3日に1回以上利用」するヘビーユーザーで、AIが生活に深く浸透しつつある実態がうかがえる。年代別では、10代の利用率が62.6%と圧倒的に高く、AIネイティブ世代の特性を示している。また、50代以上においても24.6%が利用しており、シニア層へのAI活用も着実に進んでいることが確認された。
生成AIをどのような存在として捉えているかについては、年代による意識差が見られた。利用者全体では「便利な道具」(43.6%)が最多であったが、10代は「悩みを相談できる存在」や「遊び相手」として情緒的なつながりを求める傾向があるのに対し、50代以上は「サポート要員」として道具的に捉える傾向が強かった。
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります







