DALI、ペア5万円台とは思えない質感と音質備えた新コンパクトスピーカー「KUPUD」発表
2025年09月24日 11時00分更新
ディーアンドエムホールディングスは9月24日、デンマークのスピーカーブランドDALIの新たなコンパクトスピーカー「KUPID(クーピッド)」を国内販売すると発表した。
DALIのサウンド哲学を小型ボディーに凝縮した意欲作であり、同社のフラッグシップ「KORE」で培った技術を惜しみなく注ぎ込んだ“正統派”の新世代モデルだ。価格は5万7200円(ペア)と破格。日本では9月26日に世界初のプレミア先行発売を迎え、グローバル展開は10月以降を予定している。日本市場を強く意識した製品であることがうかがえる。
KOREの系譜を継ぐ、まったく新しいエントリースピーカー
2022年に登場したKOREは、DALIのサウンド理念を象徴するフラッグシップスピーカーだ。その技術はEPIKORE、RUBIKOREにも継承されラインアップ展開がされてきた。KUPIDはその流れを汲みつつも、単なるシリーズの末弟ではない。あくまで“コンパクトスピーカー専用設計”として一から開発された新基軸のモデルだ。開発を率いたのはKOREも手がけたDALIの開発責任者クリスティアン・モラー・エステルゴー・ ペダーセン氏であり、「このクラスでCEO開発に積極的に関与した唯一のモデルである」としている。が上位/下位へのモデル展開は現時点では考えていない。KUPIDはDALIの技術と美学を凝縮した製品なのだ。
粘性500cpの磁性流体、良好なトランジェントを実現
DALIのスピーカーは「温かみのある、心地よい音」を特徴としている。それを実現するため、振動板には有機素材を採用している。有機素材は音の吸収が起きやすいという弱点を持つ。そこで、DALIは高速(反応の早い)ドライバーを長年作ってきた。その結果が結実したのがKOREであり、有機素材の振動板が持つ欠点を補う技術が多数採用されているということだ。
KUPIDのツィーターは26mm径のソフトドーム型で、繊維が細く隙間が多いため背面が透けて見えるほどだ。非常に軽量な素材を採用している。音の立ち上がりをいかに素早く反応させるかをテーマとしてきた結果だ。
ツィーターの心臓部であるボイスコイル周辺には、冷却目的で磁性流体が用いられることが多い。しかし液体の粘度が高いとブレーキのように作用し、トランジェント(瞬発力)を損なう場合がある。KOREでは磁性流体を使わない設計を採用した。しかしこれには同時に少し触っただけでもノイズになるといった厳密な品質管理が必要な側面がある。KUPIDはコストを抑えつつもその発想をとり入れ、粘性500cpの新磁性流体を採用した。一般的な磁性流体が3000cp前後であるのに対し、500cpは極めて低粘度であり、流体抵抗を抑えつつ冷却効果を維持することで、明瞭かつスピード感のあるツィーター再生を実現している。
ただし、低粘度の磁性流体にデメリットもある。具体的には柔らかいとオイルダンプが期待できず、ツィーターの低い方の周波数をコントロールする際に制動が乱れやすいという点だ。ここはネオジウムマグネットの強力な磁気回路を採用して電磁制動の質を高めている。結果、コストはかかるものの、非常に反応が高い音が期待できるものとなった。DALIとしては新しいアプローチだ。
スフェリカルコーン──独自形状がもたらす自然な帯域バランス
ウーファーは115mm径のスフェリカル(お椀型)コーンで、振動板には天然ファイバーをベースとした有機素材を使用している。小口径ウーファーはきびきびと動く反面、高い周波数帯域まで音が出てしまう。ここをネットワーク回路でコントロールするのは大変だ。お椀型コーンにすると低域は出るが、中高域の特性がストンと落ちる特性となり、ネットワーク回路がシンプルになる。品質を上げる余地が出てくるため、KUPIDでは一般的な電解コンデンサーではなく、OBERONシリーズと同等クラスのフィルムコンデンサーを用いている。
逆にお椀型コーンのデメリットはコーンの強度が一番ないところをコイルが押すため、ピストンモーション時にコーンが変形してしやすい点だ。KUPIDではコーン中央にアルミ製のサポートリング(カプラー)を追加し、ボイスコイルのボビンとコーンの接合面の強度を上げる構造を採用した。これは組み立て時にセンタリングの精度を高められるというメリットもあるという。
キャビネットは厚板とラウンドコーナーによる柔らかな造形。バスレフダクトは内側にも外側にもフレアが設けられている。取り付けるためのネジは内側から固定して、外観を損なわない仕上げだ。
このようにKUPIDは、既存のOBERON 1の下位モデルではなく、KOREのノウハウを踏襲し、コンパクトスピーカーに応用した最初の機種となっている。カラーは5色展開で、ウーファーコーンの色も筐体に合わせるほどのこだわりようだ。北欧家具のようにインテリアに自然に溶け込むデザインは所有感も存分に満たしてくれるだろう。サイズは幅150×奥行き198×高さ245mmで、質量は2.96kgとなる。
なお、「DALI KUPID 発売記念 ロゴ入りクリーニングクロス&スピーカーケーブル・W プレゼントキャンペーン」として、12月31日の期間内にKUPIDを購入した人にクリーニングクロス、さらに購入したKUPIDを部屋に設置した様子を収めた写真をハッシュタグ「#5つの色のスピーカー」付きでSNS(X、Facebook、Instagram のいずれか)にポストした人には「AudioQuest スピーカーケーブル Q2」(価格8928円、2mペア/裸線仕様)をプレゼントするとのこと。詳細はDALIのサイトを参照。
温かくも俊敏なサウンド
試聴はマランツの「SACD 10」と「MODEL 10」をバイアンプで使用。KUPIDはシングルワイヤーの入力のため、アンプの出力端子のひとつが遊ぶ形になるが、セパレーションを高まるはずだ。スピーカーは過去に「MENUET」用に用意したサウンドアンカーの「SDA4.5DALI」を使用。セッティングは80cmの高さで2.1mの間隔を空け、内ぶりにはせずDALI推奨の正面に向けた設置にしている。
ジャズトリオではアタックの立ち上がりが鋭く、ベースもしっかりとしていた。ウーファーのストロークに余裕があり、小型スピーカーにしては低域の量感がしっかりと得られるのはメリットだ。現代音楽家ウィリアム・クロールの代表作『バンジョーとフィドル(バイオリン/ピアノ)』では抜け感(解像感)の良さと音色の華やかさが際立ち、ブライトで現代的な表現でありながら冷たくならない温度感を保っている点が確認できた。女性ボーカル曲の「Adel 30」では包み込まれるような音場の広さがあり、中域の豊かな広がりが心地よいDALIらしい表現が印象に残った。
KUPIDの能率は約83dBでやや低めであるが、上流にはマランツのハイエンドが採用されていることもあり、非常に優れた再生音であった。もちろん中域や低域に曇りや荒れがまったくないかと言えばそうでもないのだが、この価格帯でここまでの音が出せるスピーカーが存在するということは、これからHi-Fiの世界に入っていきたいと考えるユーザーに対して非常にポジティブな要素になるだろう。しかも、デザインまで優れているのだから、よくやってくれたと頭が下がる思いである。
KOREで培った素材と構造の純度を継承したKUPIDは小型スピーカーという枠組みを超えつつ、手の届きやすい価格帯で提供される非常に魅力的なスピーカーと言えるだろう。
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