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「NTT docomo Business Forum'25」基調講演レポート

モバイルを得たNTTドコビジ DXを中小企業に、AIをすべての産業と地域にもたらす

2025年10月09日 15時30分更新

 10月9日、NTTドコモビジネスは年次イベント「NTT docomo Business Forum」を開催。基調講演に登壇したNTTドコモビジネス社長執行役員CEO小島克重氏は、AIに最適化されたICTプラットフォームを基盤とした「産業・地域DXのプラットフォーマー」を目指すとアピール。大企業前提だったサービスが中小企業にまで拡大し、欠けていたピースのモバイルが充当されたことで、IoTや自動運転などのソリューションが大幅に強化されている。

NTTドコモビジネス 社長執行役員CEO 小島克重氏

NTTコミュニケーションズ時代の資産にモバイルとソフトウェアがプラス

 「産業、そして地域の未来をつなぐ~驚きと幸せの社会をともに創るNTTドコモビジネス~」というタイトルで基調講演を行なったNTTドコモビジネス 社長執行役員CEO 小島克重氏。自身をモデルにした対話型AI「AIコジー」に基調講演をお願いしようとしたが、「『小島さんが登壇した方がみなさんが喜ぶ』というアドバイスを受けたというトピックから講演をスタートさせた。

 NTTドコモビジネスは、NTTグループの再編により、NTTドコモの法人事業をNTTコミュニケーションズに統合する形で7月から新社名で事業をスタートさせている。そんなNTTドコモビジネスの役割について小島氏は、「NTTコミュニケーションズが培ってきた資産に、モバイルとソフトウェアのケイパビリティを加え、価値あるソリューションをグローバルにワンストップで、大企業だけではなく中小企業まで含めて提供する」と語る。注目すべきは、従来NTTコミュニケーションズがターゲットにしていた大企業に加え、中小企業までをカバーすることだ。

 NTTドコモビジネスは「テクノロジーロードマップ2025」を公開し、「AI/ロボティックス」「IoT/データ/デジタルツイン」「仮想化」「データセンター/量子」「セキュリティ」「ICTインフラ」「宇宙/NTN/モバイル」の7つの技術領域に対する未来像を披露している。具体的には「AIエージェントやロボットによる人間の能力を超えた支援や制御」「切れない通信と遅延のないセンシングによる自動運転と遠隔制御」「安全で改ざんできないデータの国境を越えた流通・連携」「データセンター分散で電力不足を解決。距離の壁をなくす高速・超低遅延通信」などを描く。

NTTドコモビジネスのテクノロジーロードマップ

 これらのテクノロジーの基盤となり、社会課題の解決に不可欠なのが、AIに最適化されたICTプラットフォーム「AI-Centric ICTプラットフォーム」であり、「自律」「分散」「協調」の3つのキーワードだという。小島氏は、この30年の日本のICT活用とNTTコミュニケーションズ時代からのサービスの変遷について振り返る。

AI-Centric ICTプラットフォームの実現 グローバルで評価されるNaaS

 NTTコミュニケーションズが設立された1990年代は、ITは業務効率化の手段となり、メールやWebがビジネスで利用されるようになった。これに対して同社が手がけてきたのはグローバルを前提とした通信インフラやVPNのようなセキュアな通信網など通信サービスがメインだった。しかし、2010年代になると、クラウドが登場し、企業間でのコミュニケーションが一般化し、セキュリティも大きな問題になってきた。これに伴い、NTTコミュニケーションズではクラウドやデータセンター、セキュリティやマネジメントなどのサービスを拡充してきた。

 2010年代後半からはスマホやモバイル通信が一気に普及し、企業間でのデータ流通が促進されるようになり、同社もデータ流通サービスに参入。「2022年のドコモグループ入りも大きな変化となりました。NTTドコモが持つ1億人のコンシューマーデータを法人向けサービスに生かすことで、私たちのデータ利活用能力は飛躍的に高まっています」と小島氏は語る。

ICT環境の変遷とNTTドコモビジネスのサービス

 時代の潮流にあわせてサービスを拡充してきたNTTコミュニケーションズ。そしてNTTドコモビジネスが挑むのはAIの時代になる。企業の業務も大きく変わり、既存のネットワークやデータセンターもAIに最適化する必要がある。小島氏は、「今まで私たちが積み重ねてきた価値を、『AI-Centric ICTプラットフォーム』として提供します」と語る。

 AI-Centric ICTプラットフォームはネットワークサービスの柔軟さ、安全性を実現するセキュリティ、固定・モバイル・IoTなどの多様な回線対応、主要なSaaSやGPUaaSへの接続、全国に分散されたプライベートなAIデータセンター、そして自動化やコストを最適化するAIOps/FinOpsなどの特徴を持つ。

AI-Centric ICTプラットフォームの特徴

 このAI-Centric ICTプラットフォームの基盤となるNaaS(Network as a Service)と呼ばれるサービスでは、ネットワークの柔軟な帯域変更や分単位での課金を可能にする。「必要なときに必要な分だけ利用できるのでとてもリーズナブルです」と小島氏はアピール。グローバルの調査会社であるガートナーは、このNaaS分野の世界の通信事業者の1つとしてNTTドコモビジネスを掲載。また、クラス最高の技術革新を推進する世界中のCSPとして日本で初めて「Winner」として選出されたという。「私たちの技術力と実装力が世界に認められた証だと考えています」と小島氏は語る。


重点領域は「AI」「IoT」「デジタルBPO」「地域・中小DX」

 NTTドコモビジネスは、このAI-Centric ICTプラットフォームを基盤とし、「産業・地域DXのプラットフォーマーとして豊かな未来社会の実現を目指す」という。そしてニーズの高い「AI」「IoT」「デジタルBPO」「地域・中小DX」の4つを重点領域として、すべての産業・地域の課題を解決するという(関連記事:AI・IoTなど重点4領域の売上高を「3年で倍に」 NTTドコビジが2025年度の事業戦略を説明)。

4つの重点領域

 具体的な取り組みやサービスについても披露された。AIの分野では、エクサウィザードとの提携で、業務に特化した20種類のAIエージェントを提供。2026年中には200種類まで拡大する。AIエージェントを活用した営業のロールプレイングやデータ分析の事例も動画で披露された。

 BPOに関しては、昨年7月にトランスコスモスと戦略的な提携し、同社の国産LLMである「tsuzumi」を活用した次世代コンタクトセンターや生成AIソリューションの開発を推進する。また、中小企業のDX支援については、生成AIサービス「Stella AI for Biz」のほか、DX投資支援のための融資サービス「BUSINESS LOAN」、法人向けのモバイル新料金プラン「ドコモBizデータ無制限」「ドコモBizかけ放題」などを提供する。「今後は法人向けクレジットカードの提供も予定しています」と小島氏は語る。

 ネットワークとセキュリティ分野においては、docomo businessの名称を冠したサービスを年末までに向けて一気に拡充する。NaaSにセキュリティ機能を追加した「docomo business RINK」のほか、柔軟な回線制御が可能な「docomo business APN Plus powered by IOWN」、AIで顧客接点を進化させる「docomo business ANCAR」などの新サービスが登場(関連記事:“通信会社ならでは”の方法で顧客接点を改善 NTTドコビジがAIサービス群「ANCAR」発表)。

自動運転、ロボットの社会実装を推進

 IoT領域においては、脅威検知・遮断などのセキュリティ機能を標準搭載したIoTサービス「docomo business SIGN」を9月に発表している(関連記事:IoT構築のハードルを下げる NTTドコビジが“セキュリティ標準搭載”の新NaaS)。事例としては、建機のIoT化においてリーディングケースとなっているコマツでのグローバル展開を支援。さらにBMWのコネクテッドサービスも7月からグローバルでの展開を開始しているという。

 業界を越えるデータ流通という観点では、自動車業界のサプライチェーンネットワークである「Catena-X」のオンボーディングサービスプロバイダーに日本で初めて認定されたことも発表された。こうした産業データスペースへの日本でも利用が本格化しており、NTTドコモビジネスでもAI-Centric ICTプラットフォームを基盤としたセキュアな接続を推進していくという。

「Catena-X」のオンボーディングサービスプロバイダーとして日本で初認定

 公共交通機関の利便性向上や人手不足などの社会課題に対応する自動運転に関しても、さまざまな国内の実証実験でNTTドコモビジネスのサービスやネットワークが活用されているという。愛知県の豊橋市、小牧市、豊川市、北海道の千歳市、宮城県の仙台市、神奈川県の横浜市、京都府の精華町のほか、東名高速道路などで実証実験が行なわれ、今後も増えていく予定。トヨタ自動車でも交通事故ゼロに向けた取り組みを進めているという。「自動運転で必要な切れない通信と遅延のないセンシングを実現し、安全性の向上に取り組んでいきます」と小島氏はアピールした。

 この切れない通信、遅延のセンシングは、NTTのIOWN技術を用いた無線での通信品質予測、複数回線のマルチパス通信制御、リアルタイムなデータ伝送など同社のテクノロジーによって実現。MEC(Multi-access Edge Computing)と呼ばれるエッジコンピューティングシステムや分散型データセンターのインフラを用いて、自動運転のみならず、ロボットに向けても最適な通信基盤を実現していくという。

これが私たちが目指す産業・地域DXプラットフォーマー

 ロボットの分野においては、利用エリアの拡大にともない、ロボットと人間が共生・協働する環境を目指す。遠隔からのマルチロボットの制御や運用監視、高いセキュリティ、AIとの連携でデータを活用できるプラットフォームの提供を推進。同日付で川崎重工との戦略的協業も発表し、ロボットやモビリティが人と協調する産業プラットフォームの構築を目指すという。

 こうしたパートナーシップを促進すべく、6月には「ドコモビジネスパートナープログラム」を開始。事業共創を目的にする「OpenHub」でも、すでに1300以上の共創案件が生まれているという。

 最後、小島氏は「NTTドコモビジネスはAI時代に最適化されたAI-Centric ICTプラットフォームを基盤として、さまざまな産業や地域が抱える課題をDXソリューションで解決し、驚きと幸せに満ちたサステナブルな社会を実現して参ります。これが私たちが目指す産業・地域DXプラットフォーマーとしての姿であり、AI時代での私たちの新しいチャレンジです。しっかりとやり遂げて参りたいと思います」を意思表示。阿部サダヲが「やられっぱなしの日本が、もう一度世界に挑戦する」と熱く語る新生NTTのCMをはさみ、「みなさまとともに日本を強くして、グローバルで戦っていきたいと思います」と聴衆に語りかけた。

産業・地域DXプラットフォーマー

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