主要アプリはSnapdragon X Elite対応、快適に動作する
ここからは、クリエイティブ系のアプリケーションを実際に使用しながら、Snapdragon X Eliteがどのような作業に適しているのか、より具体的に見ていくことにしよう。
まず前提として、Snapdragon XシリーズはARMベースのCPUとなっている。x86版のアプリケーションもほとんどのものが動作するが、ARM版のアプリケーションを使うことでより高い性能を発揮できる面がある。
実はクリエイティブアプリの分野ではこの対応が進んでおり、すでにAdobeの「Photoshop」や「Lightroom」、「Premiere Pro」、Blackmagic Designの「DaVinci Resolve」など多くのユーザーが活用しているアプリケーションが使える。他にもGIMP、Blender、Affinity、OBSなど動画制作者や配信者、クリエーターなどが使う多くの主要メーカーとアプリが対応済みだ。
後半ではこれらのアプリを活用しながら、より実使用に近いパターンで検証した結果を見ていこう。
デジカメやスマホ写真のRAWデータ現像速度をチェック
まずは画像編集・デザインソフトの「Adobe Photoshop 2025」を使ったRAW現像の速度をチェックする。PhotoshopはRAW現像にも対応しており、デジタル一眼やハイエンドスマートフォンで撮影したRAWデータを扱えるようになっている。ここでは、撮影した写真のRAWデータの現像処理速度を比較した。検証内容は2400万画素のRAWデータ100枚をCamera RAW 17.5で読み込み、500万画素に縮小し、シャープ出力(スクリーン標準)、JPEG(画質10、最高)で出力するというものだ。
結果として一番早いのはCore Ultra 7 258Vの36秒だが、Snapdragon X Eliteも遜色ない速度で処理できた。注目ポイントは、ACアダプター接続で処理中の平均的なシステム供給電力はSnapdragon X Eliteは約34Wと一番少なく、Core Ultra 7 258Vは47W、Ryzen AI 7 350が43Wだった。
Blenderの3Dグラフィック制作はSnapdragon X EliteのCPUが効果的
3Dグラフィック制作に活用する「Blender」は、モデリング行程やシミュレーション処理にCPU、レンダリング周りの処理にGPUを利用するアプリケーションとなっている。
テストはレンダリング速度の計測用に公式で提供されている「Blender Benchmark」で比較した。なお、Snapdragon X EliteはCPUのみの結果を掲載。Core Ultra 7 258VとRyzen AI 7 350はCPUとGPUを利用した場合のテストも掲載している。
結果はCPUのみの処理でありながらもSnapdragon X Eliteが良好な結果になった。CPUのみとGPUも用いたテストを実施できるのだが、CPUのみであればSnapdragon X Eliteが高速だ。GPUを用いるとCore Ultra 7 258Vが良好な結果となった。
総合的な性能で見ると、GPU性能が高いCore Ultra 7 258Vが有利となるが、Blenderはモデリングや物理シミュレーションなどの制作作業はCPUでの処理が中心なので、実使用に即した評価をするとSnapdragon X Eliteは外出先でもBlenderでの作業を行う際にかなり向いているSoCといえる。
DaVinci Resolve Studio 20のAIマスク処理にも対応
統合ビデオ編集ソフト「DaVinci Resolve Studio 20」はAIを活用した編集機能への対応をより強化しており、前バージョンからはSnapdragon X Eliteでの動作にも対応している。
ここでは、動画に映っている人物または物体を指定すると、AIが自動的にマスク処理を行う「Magic Maskの処理」について比較した。具体的にはACアダプターに接続した状態で、60秒の4K/30Pの動画に映っている人物に対して、Magic Mask (Legacy/速度優先)を実行し完了までの時間を計測している。
結果は、GPUコアを100%利用できたCore Ultra 7 258Vが一番速い結果となった。とはいえ、この非常に負荷のかかる処理をSnapdragon X EliteはNPUとGPUの両方をそれぞれ50%活用して実用的な速度で実行できている。今後、Snapdragon X Eliteへの最適化がさらに進めば結果も変わってくるだろう。
ここまで、クリエイティブアプリでの性能面を中心にSnapdragon X Eliteの実力を紹介してきた。全体を通じてSnapdragon XのCPU性能、特にマルチコアの性能は非常に高く、負荷のかかるクリエイティブ系の処理についても、多くのシーンで十分なパフォーマンスが得られる点がわかった。ARMネイティブのアプリも増えており、今後の展開も期待できる。
次の記事ではビジネスアプリやモバイル利用に関する処理性能や省電力性能について紹介していこう。
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