週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Xアイコン
  • RSSフィード

生成AIにもクリエイティブにも快適、モバイルノート選びの新しい選択肢

高い基本性能とAI性能を求めるなら、Snapdragon X

2025年09月30日 17時00分更新

 ノートPCの市場で、クアルコムのSnapdragon Xシリーズを搭載した製品が注目を集めている。きっかけはマイクロソフトがCopilot + PCの展開をはじめたことだ。Copilot+ PCはWindows 11が持つAI機能を存分に活用することができる。

 クアルコムのSnapdragon XシリーズはCopilot+ PCの基準を満たす、高速で優れたAI処理性能、高い省電力性を備えており、マイクロソフトの「Surface」シリーズやASUSの899gモバイルノート「Zenbook SORA」などで採用されている。

 そこで気になるのが、Snapdragon X Eliteをはじめとする各SoCの実際の処理性能や、ビジネスで重要な省電力性能だろう。そこで2回に分けて、クリエイティブにも活用できる高い処理性能と、ビジネスユースで気になるモバイル環境での性能やバッテリー持ちについて紹介していく。この記事ではクリエイティブ系の作業を中心にSnapdragon Xシリーズの実力を見ていくことにする。

性能&コスパに優れたSnapdragon X Eliteの12コアCPU

 まずはSnapdragon Xシリーズについて簡単に紹介しておこう。スペックに応じて大まかに3モデルに分かれており、上位モデルがSnapdragon X Elite、中位モデルがSnapdragon X Plus、下位モデルがSnapdragon Xとなり、それぞれにバリエーションがある。

 なかでも、モバイルノートでの採用が多いのは以下の3種類だ。主にCPUとGPU性能に違いがあり、NPUに関してはいずれのモデルも45TOPSでCopilot+ PCの条件を満たしている。

Snapdragon X Elite(X1E-78-100)
 最大12コア、3.4GHz、GPU:3.8TFLOPS、NPU:45TOPS
Snapdragon X Plus(X1P-42-100)
 最大10コア、3.4GHz、GPU:3.8TFLOPS、NPU:45TOPS
Snapdragon X(X1-26-100):
 最大8コア、3.0GHz、GPU:1.7TFLOPS、NPU:45TOPS

 この記事では、動画編集や写真の現像処理など、比較的負荷の高いクリエイティブ系の作業を実行した際の性能をどこまで出せるかについて検証。最も性能が高いSnapdragon X Eliteを搭載したノートPCと、同一メーカーの近いスペックでインテルやAMDなど競合他社のCPUを搭載した製品とどのような違いがあるかを見比べながら、その実力をチェックしてみた。

検証機種:

 ASUS Zenbook SORA(UX3407RA)
 ASUS Zenbook S14(UX5406SA)
 ASUS Zenbook 14(UM3406KA)

※ACアダプター接続時はWindows11「最適なパフォーマンス」、「フルスピードモード」、バッテリー動作時はWindows11「バランス」、「スタンダードモード」で設定。ドライバーは原稿執筆時点(9月中旬)の最新のものを利用している。

マルチコア性能が高く、バッテリー駆動時も性能が落ちない

 動画編集/画像編集を始めとしたクリエイティブな作業を実施する際、かつては高性能なデスクトップPCを活用し、自室にこもって作業することが多かった。しかしながら、近年は撮影した現場ですぐ作業を始めたり、移動中に作業したりする機会も増えており、クリエイティブ系の作業をノートPCでこなしたいと考える人も増えてきている。

 NPUを搭載したCopilot+ PCはテキスト・画像・音声・動画など、複数メディアを横断して扱うクリエイティブ作業に適したAI機能を搭載しており、画像編集ソフトや動画編集ソフト内で自動生成・自動補正・要素の抽出といった処理を即座に行える。また、NPUがCPU/GPU負荷を肩代わりすることでバッテリー消費を抑制。結果的に軽量で高速なパソコンを作りやすいという利点も持っている。

 まずはCPUの基本性能を知るため、CGレンダリングなどのクリエイティブ作業で重要なCPU性能を比較する「Cinebench 2024」のスコアを比較してみよう。CinebenchのテストにはMultiとSingleの2種類がある。Multiはクリエイティブ系のアプリケーションを使用する際に重要なマルチコア性能を計測するもの。Singleはコア単体での性能を計測するものでマルチコアに対応していないビジネス系アプリなどを実行する際に効いてくる指標だ。

 まずはACアダプターに接続した状態での計測。クリエイティブ系のアプリケーションを使用する際に重要なマルチコア性能を比較するMultiのスコアでは、Snapdragon X Eliteが他社モデルを引き離す結果になった。Snapdragon X Elite搭載のCopilot+ PCはAIやビジネス系の処理だけでなく、外出先でちょっとした動画編集や画像編集をこなすのに十分な性能を持ったパソコンと見ることができる。

 また、ビジネス系アプリなどで重要なSingleのスコアはCore Ultra 7 258Vなど競合製品のスコアがやや高い結果だが、興味深いのはACアダプターに接続した状態ではなく、バッテリー駆動にした状態で同じテストにするとその結果が逆転する点だ。競合製品では、バッテリー駆動で動作する際にはCPUの利用を制限して、システム全体の電力消費を効率化する。これがベンチマーク結果にも出ている。

 この際、マルチコア性能の傾向についてはACアダプター接続時とバッテリー駆動時で大きな違いはないが、面白いことにシングルコアの性能は、Snapdragon X Eliteだけがパフォーマンスのスコアが下がらなかった。Snapdragon Xシリーズ搭載のパソコンは電力効率が良好だが、省電力が求められるバッテリー駆動時にその利点が現れていると言えそうだ。単にバッテリーが長く持つというだけでなく、電源につながない状態で負荷のかかる作業を実施しても作業の快適性に差が出ないといった点もメリットと言えそうだ。

 これは外に出てパソコンを使用する際にACアダプターを持ち運びたくないと言う人にメリットがある。また、家庭内でも電源につながず好きな場所でノートPCを使いたい場合に嬉しいポイントだろう。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう