OpenAIがAIを活用するPCでもスマホでもない新デバイスを開発中
2025年05月23日 15時30分更新
OpenAIが1兆円以上でスタートアップ「io」を買収
2025年5月21日、OpenAIはあるスタートアップを買収すると発表した。しかし、1年前に設立されたばかりのスタートアップで、まだ実績がないのだ。そして買収額はなんと65億ドル(約1兆75億円)とOpenAIとして過去最高額となる。
この企業の名前は「io」。AppleでiPhoneなどのデザインをした著名デザイナーであるジョニー・アイブ氏が設立した企業だ。ジョニー・アイブ氏はAppleを退社した後、クリエイティブ集団LoveFromを創設し、Appleをはじめ、Airbnb、Ferrari、Monclerなど世界的なブランドとコラボレーションしている。
2年前、LoveFromとOpenAIはひっそりとコラボレーションを開始。新しい製品ファミリーを開発するため、アップルで開発やデザインに携わっていたスコット・キャノン氏やエヴァンス・ハンキー氏、タン・タン氏らと共にioを設立したとのこと。
彼らは最高のハードウェアおよびソフトウェア エンジニア、最高の技術者、物理学者、科学者、研究者、製品開発と製造の専門家を集め、インスピレーションを与え、力を与える製品の開発をしているという。そして「これ以上興奮することはありません」とブログを締めている。しかし、何一つ、開発しているプロダクトの内容はわからない。
公開された動画に、一部プロダクトに触れている部分が
映画のようなクオリティの動画も公開された。サンフランシスコのカフェ・ゾートロープでアルトマン氏とアイブ氏が語り合う場面だ。ほとんどが、アイブ氏がアルトマン氏を、アルトマン氏がアイブ氏を、そしてサンフランシスコを褒めるばかりだったが、一部プロダクトに触れている部分があった。
ioはAIを使って様々な素晴らしいものを作ることができるデバイスファミリーを作るいうミッションを掲げて設立したという。そして、ある日、アイブ氏はアルトマン氏に電話し、「これは私たちのチームが今までに作った中で最高の作品だ」と語った。最近、アルトマン氏はこのプロトタイプを家に持ち帰ることを許され、日々使っているという。
今、クラウドにはChatGPTという魔法のようなインテリジェンスが存在する。しかし、そこにアクセスするには数十年前からあるノートPCというデバイスを開き、ブラウザを起動し、プロンプトを入力してEnterキーを押す必要がある、と現在のスマホやPCというデバイスをディスっているのには驚いた。
つまり、今開発しているのは、ノートPCやスマホとは異なるAIガジェットということなのだろう。
現在、生成AIはほぼリアルタイムに音声で自然な会話をすることができる。これをスマホではなく別アプリで体験したい、というのはとても理解できる。しかし、なかなか難しいハードルであることも確かだ。
2018年に設立されたスタートアップHumaneは、2024年に「AIピン」をリリースした。衣服に付けるウェアラブルデバイスで、カメラ・プロジェクターなどを搭載し、スマートフォンを持ち歩かなくてもAIアシスタントにアクセスできることを売りにしていた。
しかし、製品の完成度が低く、スマホの代替となることができず、1年も持たずに事業が終了。今年2月にはサーバーが停止し、製品は"文鎮”となった。
莫大な資金のあるOpenAIがiPhoneをデザインした人物とタッグを組むのだから、このような失敗が起きないように期待したい。今開発しているプロダクトは、来年公開されるとのこと。
開発中のプロダクトのために集まった錚々たるメンバー
とはいえ、開発中のプロダクトが高性能かつ安定板の「AIピン」だとしたら、いくらカッコいいとしてもちょっと肩透かしになるだろう。希望も含むが、おそらく度肝を抜く製品を考えているはず。
実際、少し前からOpenAIはハードウェアに興味を持っていることが知られている。Appleではアイブ氏の下でMacBookシリーズのハードウェアエンジニアを担当し、その後Meta(旧Facebook)でARメガネ「Orion」の開発責任者を務めたケイトリン・カリノフスキー氏もOpenAIにジョインしている。
カリノフスキー氏は「新しい役割では、まずOpenAIのロボティクス分野とパートナーシップに注力し、AIを現実世界に導入し、人類にとってのメリットを最大限に引き出すことを目指します」とLinkedinに投稿している。
また、OpenAIは2024年11月、Amazon創業者ジェフ・ベゾス氏らとともに、サンフランシスコのロボティクススタートアップ「Physical Intelligence」へ総額4億ドル(約600億円)の大型投資を実施している。Physical Intelligenceは、元Googleのカロル・ハウスマン氏がCEOを務め、UCバークレーのサージ・レヴィン教授、スタンフォード大学のチェルシー・フィン教授など、ロボット工学とAI分野の著名な研究者によって設立された注目企業だ。従来の「特定タスク専用」から脱却し、現実世界で人間のように柔軟かつ汎用的に行動できるロボットの実現を目指している。
さらに、OpenAIはGPU不足とコスト高騰への抜本策として独自AIチップの開発を急ピッチで進めている。チームは元Google TPUエンジニアのリチャード・ホー氏を中心に約40名へ拡大し、Broadcomとの共同開発体制を敷き、2026年の量産を目指している。
妄想になるが、ハードウェアとチップ、そしてソフトウェアをOpenAIという同一組織で並行開発することで、Appleばりのプロダクトを作り上げようとしているの可能性もある。いち消費者としてはぜひ度肝を抜くようなプロダクトを期待したいところ。来年のお披露目が楽しみだ。
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