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提出物を上司のチェック前にクオリティアップ! ChatGPTの壁打ちで高評価が得られる企画書やプレゼン資料を作る

2025年04月18日 16時00分更新

 本連載は生成AIをこれから活用しようとしている方たちのために、生成AIの基本やコピペしてそのまま使えるプロンプトなどを紹介。兎にも角にも生成AIに触り始めることで、AIに対する理解を深め、AIスキルを身に着けて欲しい。第13回は企画書やプレゼン資料を上司のチェック前に生成AIでブラッシュアップしてクオリティを高める方法について解説する。

上司の確認前に提出物を生成AIでチェックしてもらう

「この企画書、このままで上司に提出して大丈夫だろうか」 「この報告書の論理展開に穴はないだろうか」 「このフレーズもっと説得力のある表現にできないか」

 企画書やプレゼン資料を上司に提出する直前、果たしてこの内容で通るのだろうかと不安に駆られた経験はないだろうか。誤字脱字や文法の乱れはないか、論理構成に飛躍はないか、読んでいてわかりにくい部分はないかなど、一度気になり始めるときりがない。

 忙しい同僚に協力してもらうのも頼みづらいし、かといって上司に修正を求められると手戻りが大きい。そんな時に活用したいのが生成AIだ。今回は、ChatGPTを壁打ち相手として活用し、成果物のチェックをしてもらおう。

「これ、提出して大丈夫かな……」

 ChatGPTは感情やバイアスを持っていないので、客観的にチェックしてくれるのがメリットだ。また、24時間365日、いつでも壁打ちに応じてくれるため、深夜の作業や締め切り直前のチェックにも対応できる。同僚や上司であれば、「今、忙しいから後で」となりがちな状況でも、ChatGPTなら即座にフィードバックが得られる。

 文法や誤字脱字のチェックはもちろん、論理構成の甘さや説明不足の部分、想定される質問や反論まで、様々な角度からのフィードバックが期待できる。自分では気づかなかった視点を得られることもある。

 さらに心理的安全性が確保されているというのもポイントだ。自分の能力のなさをさらしてしまう、といった不安なく、どんな内容でも相談できる。この心理的ハードルの低さは、特に若手社員や新入社員にとってはありがたいところだろう。

 しかし、ChatGPTは基本的にユーザーに寄り添うので、「これはいい資料ですか?」と聞くと「いい資料です」と答えがち。きちんとチェックして欲しいなら、プロンプトにこだわる必要がある。

クオリティを上げるためにはプロンプトの書き方を工夫する

 まず重要なのは、目的とコンテキストを明確に伝えること。例えば、「これは社内向けの報告書で、プロジェクトの現状と課題を伝えることが目的です。対象は技術に詳しくない部署の上司です」といった背景情報を伝えることで、より的確なフィードバックを引き出せる。

 次に、「具体的な質問を投げかける」ことだ。漠然と「チェックしてください」と依頼するよりも、「この説明は初心者にも理解できますか?」「この提案のリスクとして考えられる点はありますか?」「もっと説得力を高めるには何が足りませんか?」といった具体的な問いかけをする方が、精度の高いフィードバックが得られる。

 ChatGPTの指示を元に修正し、再度確認するサイクルを回すことも効果的だ。同じセッションなら改善されたか聞いてみればいいし、別セッションで同じプロンプトを再度試してもいいだろう。

 では、企画書をチェックしてもらおう。新規事業で、新しい飲食店の企画書を作ると想定し、入数を重ねるごとに割安になるという業態を考えてみた。Wordの企画書をChatGPTにアップロードし、チェックしてもらおう。兎にも角にも「厳しい目線で分析」や「ダメ出しをして」と幻覚にチェックするプロンプトを入れる必要がある。そうでないと、手ぬるいフィードバックになってしまうからだ。また、想定されるツッコミポイントもわかる限り列挙しておく。

 実際に試したところ、想像以上のダメ出しが出た。計算が甘い、市場が小さい、飲食業界全体の傾向に反しているなど、耳が痛い。混雑時の対応不能リスクやグループ利用の前提が弱いなど、飲食コンサルか?というような指摘もあり、クオリティが高い。ベースのAIモデルである「GPT-4o」でこの出力なのだから恐れ入る。

■プロンプト
新規事業の企画書です。経営者として厳しい目線で内容を分析し、徹底的にダメ出しをしてください。企画の魅力、想定されるコストやリスク、トレンドをはじめ、多角的で詳細な指摘をお願いします。その後の壁打ちも予算やコスパに厳しい経営者として応答してください。

■出力
1. コンセプトの魅力と市場性に対する指摘

● 話題性頼みの短期的戦略
「スライド方式」という新奇性は目を引きますが、その一発芸的な性質は、継続的な顧客維持に不安が残ります。SNSバズに依存する戦略は、一度失速すれば顧客離れが加速するリスクが高いです。

● プレミアム×値引きという矛盾
「高級酒を値引きで提供」とありますが、これはブランディング上の致命傷になる可能性があります。高級=価格で価値を感じる顧客も多く、「安く提供=価値の切り下げ」と捉えられる恐れも。高級ブランドがディスカウントショップに並ぶ感覚です。

~略

さらにブラッシュアップするための壁打ち用のプロンプト

 さて、とはいえせっかくのアイディアは活かしたい。そこで、壁打ちを続行する。もう、口語で感じたことを入力していけばいい。面倒なら音声入力してもいい。アプリでもブラウザでもマイクボタンを押して話せば、テキストを入力できる。

 口語で譲れない部分を指摘すると、それを踏まえたうえで回答してくれる。人間のように拒否しないのがありがたい。ただ、こちらが口語になったので、ChatGPTの口調もくだけてしまった。

 とは言え、現実的な対応策を次々と打ち出してくれる。これは本当に、経験者のアドバイスに近いクオリティと感じる。しかも、壁打ちしてとプロンプトに書いたので、最後には次の話題の選択肢も提示してくれている。以下に、このセッションの共有URLを記載しているので、ぜひ実物を見てほしい。

■プロンプト
アイディアは続行したい。コンセプト店にしたいので、日替わりも避けたい。その上で、収益率を上げたいけどどうすればいいかね? ワンオペ?

■出力
OK、コンセプト店として「Stairs BAR」のアイディアを続行するなら、"割引=エンタメ"として活かしつつ、収益性を担保する"見えない工夫"が必須です。日替わりNGも承知。

~略

#結果の共有URL
https://chatgpt.com/share/67f89ec8-ef78-8004-ab91-8f4f57844b1e


 報告書なら「この結論に至るロジックに飛躍はありませんか?」「データの解釈に偏りはありませんか?」といった問いで、論理性や客観性を高められる。メール文面のチェックなら「この文面は失礼な印象を与えませんか?」「もっと簡潔に伝える方法はありますか?」といった問いが役立つ。プレゼン資料なら「質疑応答で想定される厳しい質問は何がありますか?」と問いかけて、不足している要素を洗い出すことができる。

 一つ注意しておきたいのは、機密情報の取り扱いだ。社内の秘匿情報や顧客の個人情報など、機密性の高い情報はChatGPTに入力しないようにしたい。この辺りは情シス部門などの指示に従おう。

 また、最終判断は自分自身で行うという姿勢も忘れないでほしい。ChatGPTはあくまでサポートのためのツールであり、提案された内容が常に正しいとは限らないからだ。最終的な判断は、文脈や状況、自身の知識と照らし合わせて自分で行うこと。

 上司に提出する前にChatGPTと壁打ちする習慣を身につけることで、成果物の品質向上だけでなく、自身の思考力や表現力もブラッシュアップされていくことだろう。なにはともあれ、まずは記事内のプロンプトをコピペして試して欲しい。

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ボーカル付の音楽を生成できるAI「Lyria」の提供をGoogleがスタート

 2025年4月9日、Googleは音楽生成AI「Lyria(リリア)」をプライベートプレビューで利用できるようになった。「Lyria」は、テキスト入力から最大30秒の高品質な音楽を生成できるAIモデルで、ジャズやクラシック、ポップス、エレクトロニックなど多様なジャンルに対応し、なんとボーカル付きの楽曲も自然に生成できる。

 YouTubeとの提携の下、アーティストやクリエイターがより創造的な音楽表現を追求するための基盤を提供することを目的としており、その性能は従来のAI音楽ツールを大きく凌駕すると注目を集めている。

 プロジェクトは大きく三本の柱から構成される。「Lyria」が高精度な音楽およびボーカルを生成するAIモデルとなる。次に、「Dream Track」というYouTube Shorts向けの音楽生成実験が展開され、最後に、プロフェッショナル向けの楽曲制作支援ツールである「Music AI Toolsが」提供される。

 「Dream Track」はYouTubeやYouTube Createアプリなどから利用できるのだが、今のところ米国のユーザーに限られている。デモを見る限り驚くべきクオリティなので、早く日本でも試したいところだ。

「Lyria」を使えばYouTubeショート動画に、テキストプロンプトから楽曲を追加できる

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