週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Xアイコン
  • RSSフィード

Windowsのような世界へ! 楽天、MWCでOpen RAN戦略とAIスーパーアプリの進化を語る

2025年03月11日 15時00分更新

 楽天は3月3~6日までスペイン・バルセロナで開催されたMWC Barcelona 25に今年も出展。同社のブースにはセッションエリアが設けられており、連日数多くのセッションが行なわれ、楽天グループのグローバル戦略と技術革新、そして未来への展望を来場に向けてアピールしていた。ここでは楽天のセッションや展示などをまとめて紹介する。

楽天

MWC25のブースにて連日数多くのセッションを開催していた楽天

特別レセプションでの三木谷会長講演
楽天の革新的な取り組み

 開幕に先駆けて、バルセロナ市内にあるRakuten TVオフィスにて開催された特別レセプションでは、三木谷会長が登壇し、楽天のテレコムにおける革新的な取り組みについて語った。

 1997年にeコマースプラットフォームとして創業以来、楽天はオンラインバンキング、クレジットカード、旅行代理店など70ものサービスを統合したユニークなエコシステムを構築。モバイル事業への参入は、社会インフラとしての重要性が増す一方で、高コスト体質が課題となっていた通信業界への問題提起であり、「安価で無制限」なモバイルサービスの実現を目指すものと語っていた。

楽天

Rakuten TVで開催されたレセプションに登壇する三木谷氏

 楽天モバイルの戦略の中核にあるのが、ネットワークの完全仮想化「Open RAN」である。レガシーなハードウェアに依存せず、ソフトウェアによって柔軟かつ効率的なネットワーク構築を実現することで、コストを大幅に削減し、競争力のあるサービス提供を可能にした。

 当初は大手通信事業者から懐疑的な目で見られていたこの挑戦的な取り組みは、日本国内で高い顧客満足度と加入者数の増加という具体的な成果を上げている。

楽天

楽天の三木谷浩史会長

楽天
楽天

「楽天シンフォニー」戦略の強調
シスコやエアスパンとの連携も

 MWC25では、この仮想化技術とノウハウを世界中の通信事業者に展開する「楽天シンフォニー」の戦略が改めて強調された。楽天シンフォニーは、クラウドネイティブなO-RANソリューションを提供することで、通信事業者のコスト削減、ネットワークの柔軟性向上、そして新たな収益源の創出を支援する。

 シスコやエアスパンといったパートナーとの連携を通じて、その技術力と相互運用性を高めている点も注目されている。三木谷会長はセッション後のカコミ取材で「既存の通信事業者のレガシーシステムからの移行には時間がかかるものの、部分的なO-RAN導入の動きは着実に進んでいる」と語った。

楽天

楽天ブースにて日本のメディアからカコミ取材を受ける三木谷氏

Open RAN戦略の方向性は「Windowsのような世界」

 さらに三木谷氏は、従来のパソコンの状況を例に挙げ、楽天の目指す世界は「Windowsのように、自分たちのシステムの上にさまざまなハードウェアが使えるようにすること」だと話している。Windowsを汎用性の高いソフトウェアプラットフォームの比喩として用い、楽天のOpen RAN戦略の方向性と、自社開発のソフトウェアの重要性を説明していた。

 楽天が描く未来において重要な役割を担うのが、スーパーアプリ「Rakuten Link」。無料通話やメッセージング機能から進化し、楽天エコシステムの様々なサービスへのアクセスを一元化するプラットフォームへと成長を遂げている。

 MWC25のセッションでは、Rakuten Linkが単なる多機能アプリではなく、AIによる高度なパーソナライズ機能を備えた超知能アプリへと進化していると説明した。ユーザーの意図や状況をデータに基づいてリアルタイムに理解し、最適な情報やサービスを提供することで、ユーザーエンゲージメントと収益性の向上を目指すとのこと。

楽天

Rakuten Linkに搭載されるAIコンシェルジュは、ユーザーの旅行計画、ショッピング、スケジュール管理などを包括的にサポートするマルチエージェント体験を提供するという。さらに、セキュリティ機能も統合され、ユーザーは安心してRakuten Linkを利用できるようになる。

 楽天シンフォニーは、このRakuten Linkのノウハウとプラットフォームをほかの通信事業者にも提供することで、彼らの顧客体験価値向上と新たな収益機会の創出を支援する考えだ。

シスコとの協業でネットワークインフラの強化

 ネットワークインフラの面では、楽天はシスコとの協業を通じて世界最大級のIPv6およびSRv6ネットワークを構築している。これにより、爆発的に増加するデータトラフィックやIoTデバイス、そしてAI時代の新たなネットワーク要件に対応できる、シンプルかつスケーラブルなインフラを実現する。

 ソフトウェア定義ネットワーク(SDN)の導入により、ネットワークの運用効率と柔軟性を高め、将来のサービス展開を加速させると説明していた。

楽天
楽天
楽天
楽天

楽天エコシステムのさらなる拡大を狙う

 楽天はまた、Rakuten TVやViberといったグローバルなコンテンツ・コミュニケーションプラットフォームを通じて、そのエコシステムをさらに拡大している。

 Rakuten TVはヨーロッパを中心に1億5000万以上の世帯にリーチし、多様なコンテンツを提供することでユーザーのエンゲージメントを高めている。

 Viberは、メッセージングアプリとしての強固な基盤の上に、決済、広告、そしてAIを活用した新たなビジネスソリューションを展開し、スーパーアプリとしての進化を加速させている。

楽天
楽天
楽天
楽天
楽天
楽天

 MWC25における楽天のプレゼンテーションは、単なる技術展示に留まらず、通信業界の常識を覆し、楽天がより自由で豊かなデジタル社会を創造しようとする強い意志を示すものだったと言える。

 モバイルネットワークの民主化、AI駆動のエコシステム、そしてグローバルなプラットフォーム戦略。これらの要素が融合することで、楽天は次世代のデジタルインフラを牽引する存在となる可能性を秘めている。

■関連サイト

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

S