kintoneやkrewDataを活用し、アプリの内製化を進めている京セラ機械工具事業本部とマルテー大塚。kintoneの導入・運用担当にインタビューし、kintoneと内製化の浸透、内製化を支援するツールとしてのkrewDataの価値について聞いた。(インタビュアー ASCII編集部 大谷イビサ 以下、敬称略)
部署名は違うけど目線は両方とも「情シス」
大谷:では、まず木下さんの会社と役割を教えてもらえますか?
木下:京セラは全社でDXを推進する組織があり、そこでは全社の方針を決めるのですが、事業部にもDXを推進する組織があります。弊社は事業も多角化しており、全社方針は必ずしも事業部にフィットしないからです。そこで現場発のDXを推進しようという話になっています。トップダウンのDXとボトムアップDXを同時並行でベクトルを合わせて推進しております。
大谷:じゃあ、京セラさんの事業本部には、だいたいこうしたDX組織があるわけですか?
木下:大半はありますね。こうした戦略の中、私ももともとは全社の情報システム部門にいたのですが、5年前に機械工具事業本部に異動してきて、DX戦略の責任者として旗振りをやっています。それ以前は8年間、M&A後のPMI(ポスト・マージャー・インテグレーション:統合プロセス)に携わっていたのですが、そのうちの1社が機械工具事業本部の案件であり、その関係でこの事業本部のDXに関わることになったという経緯です。
もともと機械工具事業本部のDXチームは5年で解散する計画で、今年はその5年目になります。内製化を加速し、当たり前にDXできる環境を根付かせて終わらせなければならないというミッションです。
大谷:時限プロジェクトなんですね! 詳細は後ほど聞くとして、次は石井さんの会社と役割と教えてください。
石井:私が所属しているマルテー大塚は、塗装用の刷毛(はけ)やローラーを作っているメーカーなんですが、そこから塗装で必要なモノは基本的になんでも用意しますというポジションになっています。社員数はグローバルで数千名規模くらいの会社。実は京セラインダストリアルツールズ(リョービ株式会社からパワーツール事業を継承して設立)から大量に電動工具を仕入れていますので、京セラさんとも浅からぬ仲です。
木下:ありがとうございます! その事業継承に関わっていました(笑)。
石井:ただ、私はホールディングスの情報システムにおります。だから、木下さんとの比較で言うと、私は全社の方を担当しています。
大谷:木下さんがDX戦略室、石井さんが情報システムということですね。
木下:私自身ももともと石井さんと同じ情報システム部。現場に出向いてやっているか、本部からオペレーションしているかという意味では「対岸」にいるんですが、根底は同じことを考えていると思います。
10年以上前にkintone導入 SFA・CRMから始めて全社プラットフォームへ
大谷:まずはマルテー大塚グループのkintone導入の経緯を教えてください。確かkintoneのリリースからわりとすぐに使っていたんですよね。
石井:はい。われわれがkintoneを導入したのは2013年なので、もう10年以上前ですね。最初はExcelでつけていた営業日報をSFA/CRMとして顧客管理するのが目的。当時はすでに別の製品を特定の1支店のみに試用してもらっていたのですが、セミナーで話を聞いてよさそうだったkintoneを導入することにしました。
大谷:どこらへんがよかったんですか?
石井:試用していた製品は1顧客1訪問レコードだったので、登録が大変でした。でも、kintoneはテーブルを使えばレコード内に明細を持てるので、1日1レコードに訪問履歴を記載してそのまま訪問テーブルにできます。しかも、JavaScriptが書けるので、保存したテーブルをレコードとして別のアプリに展開すれば、集計を始めとした活用に関する課題もカバーできるはず。そのときはそう考え、kintoneのSFAとCRMを始めました。トライアルとして1支店で先行させたのですが、評判がよかったので、そのまま全国展開しました。
当初はSFAとCRMだけだったので、基本的には営業担当だけが使う業務システムの位置づけ。でも、「kintoneって実はいろんなところに使えるのでは?」という話になり、2016年にExcelでやっていた経理の立替金精算をkintone化し、それをきっかけに他部門への展開を開始しました。
大谷:他部門への展開はわりとスムーズだったんですね。
石井:いやいや、社内展開はめちゃくちゃ時間かかっていますよ。SFAとCRMだけだった時代は私が一人担当で、現在のように担い手が増えるまで6年くらいかかりましたね。
現在は承認や申請業務のkintone化を進めています。名刺の申請とか細かいワークフローが150以上あって、総務も困っていたので、1つずつ移行しています。2022年から始めて、進捗も20%程度まで行っているかなという感じです。ただ、これが契機となって、主要会社の全社プラットフォームになりました。主要会社のホワイトカラーの部門にはだいたい入るようになりました。
基幹システムの周辺システムをkintone化した京セラ
大谷:続いて京セラ 機械工具事業本部でのkintone導入経緯も教えてください。
木下:事業部でkintoneを導入したのは2020年ですが、その前年の2019年に私が異動してきています。異動してきて、最初に取り組もうと思ったのが基幹システムの周辺にあるシステムの統合でした。とはいえ、担当者にシステムの数を聞いても答えは「いっぱい」としか返って来ないので、まずはAccessやExcelの棚卸しから始めました。
弊社には幹となっている基幹システムと、枝葉にあたる周辺システムがあるのですが、膨大なExcelマクロやAccess、スクラッチで作ったレガシーシステム、パッケージとか、とにかくバラバラでした。この中でDXをやろうとしても、情報が集めにくいので、これらを統合することに決めました。そこで選んだのがkintoneでした。
大谷:kintoneを選定した理由について教えてください。
木下:周辺システムを分析してみると、半分はマスター関連、つまり基幹システムから情報を取得して、それを活用するパターンが多かったんです。その次はExcelの集計作業とワークフロー。この3つのキーワードで検索したら、kintoneが出てきたわけです(笑)。
さっそくサイボウズの大阪オフィスに行ったら、営業の方から試してみますか?と案内していただいたので、そのまま導入させてもらいました。
大谷:最初に作ったアプリはなんですか?
木下:在庫移動のアプリですかね。われわれは20ヶ所くらい営業拠点があるのですが、大阪にあるセンター倉庫にある在庫を引き当てるのに、全国のカスタマーサポートが電話やメールで依頼していました。依頼に対して、センター倉庫の担当が引き当て申請の手続きや出庫の指示をしていたのですが、この作業に月80時間くらいかかっていたんです。
なぜこんなに時間がかかっていたかというと、電話してもいない、メールしても返事が来ないみたいなロスの蓄積です。この作業って、引き当ての許可をもらうということなので、基本は管理者の意思決定です。たとえば、センター倉庫のとある商品に対して、4つの営業所から引き当ての要求が来た場合、意思決定が行なわれないと、お客さまを待たせるだけではなく、4営業部がずっと時間をロスすることになります。このロスタイムを減らすのがアプリの狙いでした。
これを皮切りに周辺システムのkintone化が始まり、現時点では800アプリくらいがkintoneで動いています。
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