コスト面での課題は残るが
次世代のインターコネクトとして有望なHybrid Bonding
こうした問題を3つに集約して、それぞれ論じるとする。まずインターコネクトの話。ここで論じているのはHybrid Bondingである。
一般論であるが、ダイを基板の接続、あるいはダイ同士の接続は基本Bumpと呼ばれるハンダのボールを利用してきた。下図はこのBumpを利用する場合の基本的な接続手順である。長らく利用されてきた実績ある方法である。
最近は、特にシリコン・インターポーザーを利用する場合などには、ハンダボールの直径を非常に小さくしたMicroBumpと呼ばれるものも利用されているが、それでも以下の問題がある。
- Bumpを使う限り、温度(と圧力)を掛けた時にハンダが広がる関係で、Pitch(Bumpの間隔)を10μm未満にするのが極めて難しい。
- Bumpは基本ハンダ(さすがに最近は鉛は使われず、スズと銅、銀の合金などが利用されることが多いが、これも用途に応じてさまざまなものがある)で構成されるが、確実な接続が優先されることもあって、電気抵抗などが多い。
- Bumpを経由する場合は、基本チップの外に信号を出すという扱いになるので、PHYというほど大げさではないにしても出力用の回路(Fan Out)が必要になり、これが通信に利用する消費電力の増加につながる(あと非常にごくわずかではあるが、レイテンシー増加につながる)。
これを解決するのがHybrid Bondingと呼ばれる技法で、要するにBumpを介さずに直接2つのダイ(あるいはダイとパッケージ)を接続する方法である。もっとも現状ダイとパッケージの接続はまだ難しく、ダイとダイの3次元積層に限られている。TSMCのSoIC、あるいはインテルのFoveros DirectがこのHybrid Bondingに該当する。メリットはBumpの逆で、以下のように高速化や省電力化には欠かせない特徴を兼ね備えている。
- 接合時にBumpが広がらないので、ピッチを10μm未満にすることも十分可能。
- 基本は銅と銅が直接触れ合う形になり、余分な抵抗が減る。これにより消費電力と、寄生容量に起因するレイテンシーを最小限に抑えられる。
- 基本はFan Outは不要(実際には若干保護回路が入る)
実際このHybrid Bondingを利用した場合、まず接続に必要となる面積は30分の1、接続に要する消費電力は10分の1であり、レイテンシーは8分の1になるというのがここでの説明である。ほとんどモノリシック(つまりマルチダイ構成を使わない1ダイ構成)と変わらない特性を維持できるとする。
では欠点は? というと、まずはコストである。TSMCのSoICや、これを利用したAMDの3D V-Cacheが好例だが、Hybrid Bondingはファンデルワールス力を利用する。分子間力を利用しての接続だが、このためには接続面が非常に平滑でないといけない。
したがって接続面をCMP(Chemical/Mechanical Polishing:研磨剤などを使ってキレイに磨く処理)やRinse(CMPの後で、表面を整える処理)などが必要となる。また、2つのダイの接続面が正しい位置関係にないと、うまく信号が伝わらないことになる。このための位置合わせの精度は1μm未満でないといけないわけで、これに猛烈な手間(とコスト)が掛かる。
加えて言うと、検査もまた大変である。Bumpの場合は10μm程度だから、X線CTスキャナーで検査することで、正しくBumpの接続ができているか確認できるのだが、Hybrid BondingはギリギリNano-CT(1μm未満の解像度を持つX線CTスキャナー)が必要であり、その下はTEM(透過型電子顕微鏡)などの領域になってしまう。
左の写真のように、「接続できているようでつながってない」とか「中央はつながっているけど両端がつながってない(これは少しの衝撃や歪みなどで剥がれる可能性がある)」などをチェックしようとすると、猛烈な手間が掛かる。
このようにいろいろと課題はあるものの、Hybrid Bondingは現時点では次世代のダイ間接続のインターコネクトとして非常に有望であるとし、複数チップを積層するようなケースで利用できるというのが1つ目のまとめである。
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