この記事は、内閣官房による地理空間情報を活用したビジネスアイデアコンテスト「イチBizアワード」に掲載されている記事の転載です。
地理空間情報で気候変動対策から
社会インフラ、医療、流通まで幅広く支える
国土保全や防災、社会インフラ整備といった幅広い領域で、地理空間情報を用いたソリューションを提供する国際航業。1947年創業時の航空写真測量から事業領域を広げ、現在は空間計測から建設コンサルティング、システム・ソリューションまでのワンストップサービスを行政機関や法人企業へ提供する企業だ。
現在注目のサービスは、自治体DXを実現する空間情報共有プラットフォーム『SonicWeb-DX』だ。国や自治体の行政内部と外部データを安全に連携することで業務効率を大幅に改善し、コストの大幅な改善を実現する。
2024年7月からは横浜市で運用を開始したほか、2024年10月には外部と連携した行政DXの実現と業務の効率化が評価され、グッドデザイン賞の中でも特に優れた内容に贈られる「2024グッドデザイン・ベスト100」を受賞している(主催:公益財団法人日本デザイン振興会)。
国際航業は“空間情報で未来に引き継ぐ世界をつくる”というミッションを掲げており、現在は2030ビジョンとして“情報をつなげる力で人、社会、地球の未来をデザインする”という旗印のもと、事業を推進している。
国際航業株式会社 コーポレート統括本部 広報部 部長の和田直人氏は「優先的に取り組む経営課題として気候変動対策に注力し、ガバナンスを充実させ、人々の暮らしを支え続け、多彩な人材を活かし、柔軟で高品質な技術サービスを追求し、パートナーと手を繋ぎ将来のために進むという理念を掲げている。2023年にはミライト・ワン グループの一員となり、グループの存在意義とする “技術と挑戦で「ワクワクするみらい」を共創する”も我々のミッションとして取り組んでいる」と語る。
同社の最大の強みは「センシング分野」の技術だ。基幹技術である航空写真測量をはじめ、衛星画像や衛星SAR(合成開口レーダ)観測、航空レーザ測量、ドローン測量のほか、MMS(Mobile Measurement System)を用いた計測など、宇宙から地上、水中、地中にも対応した計測技術を有している。
また、GNSSなど複数の測位方式を用いた技術を活用して、屋外だけでなく屋内でもシームレスに人やモノの位置情報を取得するプラットフォームや、インフラ整備や防災向けに高精度変位計測による地盤や構造物の変位をリアルタイムに、3次元かつミリ単位の精微さで計測し、モニタリングする技術も提供する。
国際航業は、これらの技術で得た空間情報データを分析・解析して「建設コンサルティング」や「システム・ソリューション」の分野に幅広く活用しており、事業領域は国土保全や防災対策、社会インフラ整備、環境保全のほか、医療、福祉、国際協力、販促、物流など多岐にわたる。
持続可能な社会への取り組みとしては、2023年6月にはみずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社と協業し、TNFD(※)の枠組みで企業の事業活動における自然環境へのリスク評価を実施するサービスを開始した。
ほかにも、独立行政法人国際協力機構(JICA)を通じたルワンダ共和国キガリ市の送水幹線強化計画への協力、能登半島地震の災害調査活動や、デジタルツインを構築して3次元ハザードマップを作成し、住民の防災意識の向上を図る取り組みを実施している。
※注:TNFD:自然関連財務情報開示タスクフォース(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)企業・団体の活動が自然環境に与える影響や、リスクを開示するための枠組み。
GISを軸にLGWANとインターネット連携で
業務を効率化『SonicWeb-DX』
国や自治体は、平常時や災害時を問わず、インフラを一定の品質で維持・管理することが求められる。しかし、多くの自治体は従来の住民の要望や職員が確認した情報を手作業で一覧表や表計算ソフトに記録するアナログな業務体制が残っており、作業の効率化やデータの共有が課題となっている。
また、現在は少子高齢化もあり行政機関のリソースが限られており、自治体DXとしてクラウドサービスなどを活用した業務の効率化も求められている。
これらの課題に対して、国際航業では新サービス『SonicWeb-DX』の提供を開始した。従来のGIS(地理情報システム)による行政内部の情報を用いた業務支援に加えて、庁内のLGWAN(総合行政ネットワーク)とインターネットを接続し、SNS情報やオープンデータなどの外部情報を掛け合わせることで、さらなる業務の効率化や新しい活用方法を実現する仕組みだ。
代表的な活用例としては、道路や河川、下水道といった市が管理するインフラの維持・管理がある。『SonicWeb-DX』を用いた自治体の場合、住民は道路が破損しているといった要望を電話や対面に加えて、LINEでも伝えることができ、受付内容は庁内GISで一元的に管理・共有して対応部署に割り振られる。
国際航業株式会社 事業統括本部 事業推進部 担当部長 兼 自治体推進G グループ長の繁田啓介氏は「これまでは、電話やメールで受け付けた内容を再度入力し直し、一件ごとに写真や書類を探して内容を確認する手間があったが、SonicWeb-DXでは受け付けた要望をすぐに対応する部署へと割り当てられ、インターネット上のデータも活用して効率的に確認作業を進められる。特に、対応すべき要望が増えがちな月曜日の業務の効率化が進み、喜ばれることが多い。職員の月曜日の憂鬱を少しでも軽減できれば」と語る。
受け付けた内容への対応は『SonicWeb-DX』のマップ上で調査を進められ、まずは自治体が持つ台帳情報をもとに該当箇所が県道か市道のどちらに属するかといった、管理主体などの情報を確認できる。
管理する管理主体が異なる場合は、内容を転送することも可能だ。さらにGoogleストリートビューと連携して、現地の写真を参照することでより詳しい状況を確認することが可能だ。実際の現地調査もタブレット端末を用いて情報を確認し、調査内容をその場で庁内GISへとリアルタイムに反映して整備の担当者へと引き継ぐことができる。
すでに複数の自治体が『SonicWeb-DX』の運用を開始している。代表的なものとしては、記事冒頭で取り上げた2024グッドデザイン・ベスト100で紹介された横浜市の事例がある。2024年7月から運用を開始しており、市に寄せられる年間5万件もの道路、公園、河川及び下水等に関する要望・陳情についてのインフラ管理や現地調査に『SonicWeb-DX』を活用している。
実際の導入事例について、繁田氏は「政令指定都市や中核市を中心に、住民の要望をLINEでも受け付ける自治体が増えているが、要望の大半は電話や対面で受け付けることが多く、SoniWeb-DXのように要望を一元的かつ効率的に管理・共有できるシステムが重要だ」
「また、人口数万人といった比較的小規模な市の場合でも、インフラ管理について年間1000件程度の要望を受け付けており、市の規模に対して多くの職員が対応するなど負担が増すという悩みを聞く。SonicWeb-DXなら、これらの業務を効率化できるという反応を頂いている」(繁田氏)。
『SonicWeb-DX』は、災害・危機管理などに関するSNSの情報をリアルタイムに抽出し、初動対応の判断やマップによる災害情報の可視化や、被災した自治体や職員への情報共有といった機能も提供している。
これは、国際航業が代理店を手がける株式会社SpecteeのAI防災・危機管理ソリューション『Spectee Pro』と連携した機能だ。
『Spectee Pro』では、SNSに投稿された多くの災害情報を収集し、正確な位置情報が含まれない写真やテキストからもAIが位置情報を解析して有用な災害履歴として蓄積している。このデータを『SonicWeb-DX』上で管理し、素早く職員と共有できる。
『SonicWeb-DX』はLGWANとインターネットを接続し、外部のSNSやサービスも活用することで安全かつ効率的な業務システムを提供するサービスだ。この取り組みは自治体のDX推進においてβモデル(※)などに取り組む自治体との相性も良いという。
※注:βモデル:総務省が策定した「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」に基づく、LGWAN接続系にインターネット接続系に業務端末・システムを接続する際の配置に関するモデル。今後の展開について繁田氏は「インターネットのデータを活用するには個人情報管理や、情報の正確さの管理といった問題もある。そういったリスクに対応しつつ、様々なサービスに繋がることで、行政DXの促進と安心安全なまちづくりに繋げたい」と語る。
「イチBizアワード」から生まれる
アイデアとマッチングの機会に期待
内閣官房は地理空間情報を活用したビジネスアイデアコンテスト『イチBizアワード』を開催(募集は終了済)しており、2025年1月29日~31日に東京ビッグサイト南ホールで開催される『G空間EXPO2025』にて発表・表彰される。
国際航業は「空間情報で未来に引き継ぐ世界をつくる」というミッションのもと、ビジネスアイデアコンテスト「イチBizアワード」に協賛。発表と表彰を実施する「G空間EXPO2025」にも出展する。
協賛と出展の狙いに関して、和田氏は「我々も地理空間情報を活用した新たなビジネスアイデアなど、新しい考え方を吸収していきたい。そこから企業間のマッチングや学生と繋がることで、地理空間情報の活用についての裾野を広げて“空間情報で未来に引き継ぐ世界をつくる”ことを実現できれば」と期待を寄せる。
(提供:国際航業株式会社)
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