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地域プラットフォーム作りと例の基幹システム移行の話

中国新聞社やオタフクソース 広島の100年企業はAWSをどう活用しているのか?

2024年12月24日 09時00分更新

 広島大学を会場として開催されたAWSユーザーの地方イベント「JAWS FESTA 2024 in 広島」。本編にあたる「酒まつり」の前に行なわれたセッションでは、前回紹介したサタケに加え、中国新聞社、オタフクホールディングスなど地元の100年企業が次々と登壇。AWSの利活用はもちろん、自社の課題感や取り組みをわかりやすく説明してくれた。

1つのIDで複数のサービスを利用できる中国新聞社の「たるポ」

 AWSを使いこなしていたサタケに続いて、地域プラットフォーム「たるポ」について紹介したのは、中国新聞社 メディア開発局の石井将文さん、明知隼二さんの2人だ。「新聞社として新しい取り組みをいろいろやっているので、ご紹介したい」と石井さんは語る。

中国新聞社 メディア開発局の石井将文さん、明知隼二さん

 中国新聞社は広島を中心に130年以上に渡って新聞を発行している。発行部数は47万部強で、地元紙としての信頼感は揺るいではいないが、激変するビジネス環境の中、業務やビジネスのDX、新しい収益源の創出が喫緊の課題となったという。

 2022年にはミッション・ビジョン・バリューの作成、そしてDX宣言を行ない、デジタルサービスのユーザー増と収益化、基幹システムのサイロ化、会員サービスのアップデートなどを積極的に進めている。「魔宮のようなデータ管理になっており、これをどのように整理するかが大きな課題。どんなお客さまが読んでいるのかも、理解できていなかった」と明知さんは振り返る。

 こうした中、1つのIDで中国新聞社の複数のサービスを利用できるポイントサイトとして2024年3月にスタートしたのが「たるポ」になる。「このまち応援プラットフォーム」を謳うたるポでは、ユーザーが使えば使うほど経験値がたまり、月替わりで「木」が育つという仕組みとなっており、月末に育った分のポイントを山分けするという流れになる。「10月は経験値が溜まるたびに徳利が木になっていく(笑)」とのことで、酒まつりを意識した遊び心のある取り組みも行なわれている。

複数IDを統合するインフラとして生まれた「たるポ」

 また、オフライン連携を重視しているのも「たるポ」の大きなポイント。イベント管理SaaSと連携することで、イベントのチェックインやQRコードを使ったガチャも実施している。地元企業との連携も進めており、「広島東洋カープさまとはファン感謝デイの整理券配布をID連携させながらやってみるという取り組みもやらせてもらった」(明知さん)とのこと。

鍵は地元企業とのコラボ AWS Clean Roomsの活用も視野に

 たるポはサービス開始から7ヶ月で登録者数は19.5万人を超え、年内には20万を超える見込み。MAUやメールの開封率は向上し、ログイン導線でのカゴ落ちやID管理にまつわる問い合わせ数は減少した。

 サービスはスケールアウト性やサービスの継続性、コストの最適化などさまざまな理由から、AWSをベースに構築されている。「チケットプレゼントなどを行なうと、一時的にIDやアクセスが増えるので、確実にサービスを提供できる必要があった」と明知さんは語る。また、将来的にインフラ構築を自前で行なうための人材教育の体制、外部サービスとの連携のしやすさも、AWSを選択したポイントだという。

 今後、連携サービスのデータは一元的に分析し、顧客理解やマーケティングに活用していく。「中国新聞デジタルを、いつ、どのような頻度で、どういうニュースを見ているのかも収集できる。ここから出てくる興味・関心データに、イベントやチケットプレゼントのデータ、新たに設けたモニターの声をひも付けていく」と明知さんは説明する。

 また、AWS Clean Roomsを用いることで、複数の企業で顧客データをセキュアに共有し、データコラボレーションを実現していく構想もある。「顧客データを出すことに慎重な会社もあるので、丁寧に活発にお話しを進めている。でも、これが実現できると『地域の深い情報』を使ったデータ分析の体制ができると考えている」(明知さん)。

Amazon Clean Roomsを用いたセキュアなデータ共有で新しい地元企業とのコラボを模索

 将来的には中国地方の活性化を実現すべく、たるポのプラットフォームを基盤に、従来の新聞社の枠を超えたビジネス展開や企業間連携を進めるという。「全国規模の会社、世界規模の会社に飲み込まれない、このまちのエコシステムを作る一助になりたい」と明知さんはまとめた。

オタフクは「ソースを売る」のではなく「お好み焼を普及させる」

 続いてAWSを採用したデータ分析基盤について説明したのは、お好み焼用のソースである「お好みソース」でおなじみオタフクホールディングス IT推進部 部長の岡本候子さん。首都圏の人間からすると興味深いOtafukuグループの沿革からまず話をスタートした。

オタフクホールディングス IT推進部 部長 岡本候子さん

 お好み焼用のソースで圧倒的な認知を誇る同社だが、創業した1922年は醤油の卸売りと酒の小売を行なっていたという。創業者がものづくりとして最初に作ったのも「お多福酢」という醸造酢で、ソースを作り始めたのは実は戦後だ。太平洋戦争で広島は焼け野原となり、会社も工場もなくなったが、創業者が事業を再度立ち上げるのにあたって、「これからは洋食の時代じゃけん。ソース作りんさい」というえらい人の声を受けて作り始めたという。

 とはいえ、ソースメーカーはいくつもあったため、後発メーカーとしての差別化を図る狙いでできたのがお好み焼用のソース。「さらさらとしたソースだと鉄板に流れ落ちるけん、もっととろみのあるソース作ってや」というお好み焼き屋のリクエストで作られた同社の「お好みソース」は1952年に発売された。ちなみに現地の方のコメントになると、岡本さんの広島弁がいきなり堂には入るのが個人的にはツボだった。

知ってる会社の知らないヒストリーは超楽しい

 さて、お好みソースも当初は広島県がメインの商圏だったが、その後、全国区となり、今ではグローバル進出も果たしている。現在はソース、酢、たれなどの調味料を製造・販売するオタフクソースを中心に、お好み焼き関連の材料、醸造製品の販売、パッケージング、天かすなどを手がける複数の会社でグループ9社を構成している。

 また、創業当初から「お好みソースを売る」というモノ売りではなく、「お好み焼を普及させる」というコト売りにフォーカスしているのも同社のユニークなところ。現在は粉物文化の普及に取り組む「お好み焼課」があるほか、お好み焼のミュージアム「Wood Egg」やお好み焼の体験施設「OKOSTA」なども運営しているという。ランチ前だったこのセッション。ここまでの10分の話だけでも、お好み焼熱が十分に高まる。

スピリッツがカッコよすぎる

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