週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

プロセッサーから直接イーサネット信号を出せるBroadcomのCPO Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU

2024年12月02日 12時00分更新

光学部品と電子部品をまとめて一つにした
BroadcomのCPO

 既存の問題は下の画像に示したとおりで、スイッチのチップからトランシーバーモジュールまでの配線距離が長すぎ、しかも信号の高速化にともないどんどん損失が増えることをなんとかしたい、というものだ。

右上の灰色の部分がトランシーバーのレセプタクル。その先のPaddle Cardがトランシーバー内部の基板で、この上にトランシーバーの回路が載る

 その解決案は、スイッチチップの「すぐそば」でさっさと光化してしまえば、その先の減衰はあまり問題にならないというものである。

まずはディスクリートの光部品を、SiPh(Silicon Photonics)で置き換える。これはトランシーバーモジュールの光信号変調をCMOSベースの回路で実装するというもので、省電力化・低コスト化が見込める

次にその光部品をスイッチチップの脇に、チップレットの形で実装する(左側写真)。将来的にはこの光部品をプロセッサーに直接搭載する(写真右側)ことも視野に入れているが、まずはスイッチというわけだ

 スイッチチップそのものから光信号を出す、というのは現実問題として問題が多すぎる。いわゆるSilicon Photonicsと呼ばれる、CMOSベースで光信号を扱うための技術そのものは上の画像にもあるようにすでに実用化の域に達している。

 ただしCMOSベースといってもそれは最先端の5nmや3nmではなく、それこそ90nmや40nm程度。インテルは研究室レベルの成果として22nmプロセスを利用したCMOSの光アンプを実装したという話を2022年に発表しているが、量産レベルの話ではない。

 一方で400Gイーサネットのトランシーバーに入っているDSPは、5nmプロセスなどで製造されて稼働している。これを40nmに持ち込むのは無理である。そこで光学部品と電子部品は別々のCMOSプロセスで製造し、それをまとめて一つの部品にしよう、というのがCPOである。

Tomahawk 4(Humboldt)用のCPO断面図。この世代、EICはまだCMOSでは速度が足りなかったためか、SiGeで構成されている。ただしこの次のTomahawk 5ではEICもCMOS化された

 上の画像で言うと、スイッチとの接続は右側になる。スイッチから来た信号はまずSignal Processing ASICに入り、ここで変調やコーディング、エラー処理(FEC:Forward Error Collectionと呼ばれる処理)を経てその左のEIC(Electrical IC)に入る。

 EICでは先に挙げたGearboxなどの処理を行ない、例えば50Gbpsの信号×8を400Gbpsの信号に変換したうえで、TSV経由でEICの上のPIC(Photonics IC)に信号を伝える。PICでは電気信号を光信号に変調する。

 具体的に言えば、CPO左下にある"Laser"(光の生成源)からの光を受けて、電気信号にあわせてその光をOn/Off(厳密にはこれもPAM-4なので、4レベルの強度に変換)する形で光信号化し、それを外部に出力するかたちだ。

 現時点で最新のTomahawk 5ではこのCPOのうちEICが7nm CMOSに変わっており、またパッケージにFOWLP(Fan-Out Wafer Level Package)を採用している。

FOWLPは台湾ASEが2016年に実用化しているが、現状FOWLPはASE以外にも多くのOSATがサービスを提供しており、TSMCのInFOもFOWLPとみなせるので、製造がどこかはこれだけでは不明である。構造を変えたのは、おそらく低コスト化(TSVはどうしても高価になる)であろう

 CPOの製造方法を示したのが下の画像だ。EICをまず作り、これにPICをひっくり返して重ねるかたちだが、途中にキャリア(製造途中に使われる土台)を3つも必要とするあたり、なかなか大変である。

CPOの製造方法。この方式ではEICにVIAを構築する必要がないので、結果として安価ということだろう。EICとPICの回路そのものは最上段で構築しており、その下が今回の説明の肝である。この書き方では、OSATを使って構築しているように見える

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事