第797回
わずか2年で完成させた韓国FuriosaAIのAIアクセラレーターRNGD Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU
SamsungのチップとSemiFiveのプラットフォームを利用する
Made in Korea製品
そのWarboyの内部構造が下の画像だ。制御用にRISC-V(SiFiveのU74)×4を搭載する少しおもしろい構成で、製造はSamsungの14LPPプロセスで行なわれた。実はこのチップ、同じ韓国のSemiFiveが開発したAI inference platformを利用していることが2023年に明らかになっている。
要するに上の画像で、NPUの部分はFuriosaAIが自身で開発したが、その他の部分はSemiFiveのAI inference platformをほぼそのまま利用した格好だ。肝心のNPUの中身は未公開だが、これは次のRNGDのところで触れたい。
WarboyはComputer Vision Processorとしてリリースされた。実際に、16カメラからの同時取り込みと物体認識や超解像/ノイズ削除/圧縮率向上のデモが公開されている。提供はPCIeカードのほか、このカードを複数枚装着したシャーシや、そのシャーシをラックに詰め込んだ形での構成も用意されている模様だ。
HBM3とCoWoS-Sで集積する
第2世代AIアクセラレーター「RNGD」
無事に第1世代の製品展開を済ませた同社が今年のHotChipsで発表したのが第2世代であるRNGDである。発音は"Renegade"だそうだが、そのRenegadeの意味は「反逆者」「背教者」である。Warboyもたいがいではあるのだが、ものすごい名前を付けたものだ。
RNGDは2022年に開発がスタートし、2024年に最初のシリコンが完成という、猛烈なスピードで開発された。
これはまだ開発カードの範疇ではあるのだろうが、限りなく製品に近い構成である。冒頭で説明した8月のHot Chips会場でのデモは、このカードを使って行なわれた模様だ。
構成は、TSMC N5で製造されたチップに12GBのHBM3を2スタック、CoWoS-Sで集積するという最新の構成である。
実はこのRNGDでは、SemiFiveのプラットフォームと決別したらしいことが話題になっている。SemiFiveはHPC Platformを高性能プロセッサー向けに提供しているが、こちらはSamsungの5nmをターゲットとし、メモリーはGDDR6ベースである。ところがRNGDはTSMC N5で、しかもHBM3を利用しており、もうこの時点で出来合いのプラットフォームを利用したのではないことがわかる。
またFuriosaAIはArmとFlexible Access for Startupsという契約を結び、初期コストを抑えてArmのCPU IP(今回はCortex-A53を利用している模様だ)を利用していることがArmから公開されているほか、RNGDのPCI Express 5.0 I/FとHBM3のI/FにはRambusのXpressAGENT IPを利用したことをRambusが明らかにしている。
FuriosaAIはRNGDの開発にあたり、デザインパートナーとしてGUCを選択したことが明らかにされている。GUCもAFA(Arm Flexible Access)およびRambusのXpressAGENT IPの利用権を持っており、そしてTSMCの5nmを利用する物理設計が可能な技術力やCoWoS-Sに対応できる能力を持っている。この決断は、「韓国のAIスタートアップが(最初の製品を製造した)Samsung Foundryに見切りを付けてTSMCに鞍替えした」と少し話題になった。
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