第792回
大型言語モデルに全振りしたSambaNovaのAIプロセッサーSC40L Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU
Hot Chips第5弾は、SambaNovaのSC40Lを取り上げたい。SambaNovaと同社の最初のプロセッサーであるSC10は連載595回で説明しており、今回はここからのアップデートになる。
前回は2020年12月で、ちょうどCardinal SN10というチップをリリースした直後である。この後2021年、SambaNovaはCardinal SN20をリリース、そして2022年にCardinal SN30をリリースしている。ただこのSN20とSN30は同じもので、SN20×2がSN30という構成である。スペックをまとめると以下になる。
各プロセッサーのスペック | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
SN10 | SN20 | SN30 | ||||
製造プロセス | TSMC N7 | TSMC N7 | TSMC N7 | |||
トランジスタ数 | 400億 | 430億 | 430億×2 | |||
RDUコア数 | 640 | 640 | 640×2 | |||
SRAM容量 | 320MB? | 320MB | 320MB×2 | |||
Off-Chip DRAM | DDR4×6ch? | DDR5×3ch? | DDR5×4ch? | |||
FP16性能(TFlops) | 320 | 344? | 688 |
要するにSN20はSN10のマイナーバージョンアップといった構成で、SRAM容量を若干増やしたのと、おそらくは動作周波数をやや引き上げた程度の差しかない(この話は後述する)。
SN20を利用した製品とサービスは存在はしたのだろうが、すぐにSN30に置き換えられることになってしまった。なぜ「存在はしたのだろう」と言えるかというと、同社の提供するSoftware Tuning ToolであるSambaTuneのRelease Notesに"Release 1.17 (2023-10-20) Added GPT13B examples for SN20 and SN30."の文言があるからである。ただ、どの程度の期間SN20を利用したサービスが提供されていたのかはやや疑わしい。
もう1つ謎なのが、DRAMの種別である。2020年にSN10が発表された時のスライドによれば、TBクラスのメモリーを外付けできるという話であった。これに関しては、Hot Chips 33のスライドで、SN10-8R(SN10を8チップ搭載したシステム)がDDR4-2677を48ch接続して容量12TBであると記述されており、つまり1個のSN10にはDDR4-2667を6ch接続でき、おのおの256MBで合計1.5TBの容量になる、と考えられる。
SN20/SN30に関してはDDR5、という話が出ている2021年4月にSamsung Electronicsが公開したTech Blogによれば、SambaNovaのプラットフォームはDDR5を利用する、と説明されている。帯域的に言えば2021年末の段階ではまだDDR5-4800がなんとか出てきた程度の段階なのでDDR4に比べて帯域が倍というわけにはいかないのだろうが、容量的にはDDR4の2倍までサポートしていることもあり、おそらくはチャネル数を半分に減らしても同程度の容量(最大1.5TB)が可能になったものと思われる。
時期的な問題を考えると、ここでDDR4を使い続けるメリットは乏しい。なのだが、これと矛盾した資料が(しかもSambaNova公式から)出てきているのが頭が痛い。下の画像はALCF(Argonne Leadership Computing Facility)に納入されたSambaNovaのSN30ベースのプラットフォームの説明なのだが、ここには"TBs of DDR4 off-chip memory"とか書かれているのがわかる。
この"off-chip"がまた意味深だったりするのだが、それはともかくとして2022年にリリースされた製品がDDR4というのは正直考えにくい。ここはおそらくDDR5のタイプミスだと筆者は考えている。したがって、先の表は"DDR5?"としたわけだ。
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