中国発のゲーム『黒神話・悟空』が一大ヒット
ついに中国から本格的なAAAタイトルが出たことで注目を集める
西遊記をベースとした中国発ゲーム『黒神話・悟空』(以下、黒神話)がPS5/Steamで8月にリリース、一大ヒットとなっている。
ゲーム内容は如意棒を持った孫悟空が綺麗なフィールドを巡りながら西遊記の物語に出てくるさまざまな敵を倒すというもので、システムとしては2005年に登場したゴッド・オブ・ウォーに近い内容になっている。
詳しい内容はASCIIの記事「『黒神話:悟空』はほかの死にゲーと比べて難易度はどう? クリア後レビュー【ネタバレなし】」のほか、インターネット上に多数あるのでそちらを参照いただきたいのだが、日本から見れば数あるAAAタイトルの1つといったところで、「中国製なのかー」くらいの感覚かもしれない。
実際に日本や中国のレビュー記事を見てみても、まあまあ綺麗にできてるよね的なものが多く、中国人ゲーマーにとっても、遊んでみたら神作すぎて感涙した! というほどではない。
それでも『黒神話・悟空』は中国人にとってはものすごく重要な存在である。中国の家庭用ゲームの歴史は、「小霸王」ブランドなどの海賊版ファミコンから始まり、メガドライブやGBA、PS2、PSPの海賊版、その後は本物のWiiやPS4の正規版が人気になった(Wiiに似せた威力棒Viiという伝説級のヘボいゲーム機も出た)。
そんな中国で20数年、日本を含む中国国外のゲーム情報を紹介し、ゲーム好きを支え続けた「遊戯機実用技術」というゲーム雑誌において、初めて表紙を飾った中国ゲームタイトルが「黒神話・悟空」なのだ。
たとえるなら、発売日にお祭り騒ぎとなったWindows 95、むしろ長蛇の列となったファミコンのドラクエシリーズ発売日といっていい(実際、黒神話のリリース日を休日にした企業もある)。
2020年にトレーラーが配信されて以来、ずっと話題になっていたが、その期待の高さからリリースから1時間で100万ユーザー、2週間で購入者は1500万に達したと分析されている。またSteamのレビューの8割が中国人だという。そんな状況だから動く金は実に大きい。
ゲームコミュニティの仲間の家に集まってプレイすることも
自作PCショップにもコロナ禍以来の大活況
そこで筆者が、中国のゲーマーの何人かに話を聞いたところ、ゲーマーの間でも注目のタイトルだったので、プレイできる環境がある人はまず買っていたとのこと。
日本では30万円はするGeForce RTX 4090を挿したゲーミングPCに加え、最新のゲーム機をひととおり所有する人もいて、その人の家に招待されて体験したという人も。中国各都市にSNSの微信(WeChat)で作られたクローズなゲーミングコミュニティがあり、その中で仲のいい人同士が、ゲーム機やゲーミングPCを所有する人の家に集まるのだそうだ。
そうしたお金持ちゲーマーは何者なのか聞いてみたが、ゲーム仲間ではあっても、どのような職業の人物なのかはよくわからないとのこと。ただ中国の各都市で林立するよくあるタワマンの一室に住んでいて、決してコレクターではなく人気のゲームだけ買っているとのことで、別に人物もスネ夫的な性格ではなく、普通に楽しくゲームで遊ぶ仲だと聞いた。
中国ではそれなりの所得がないと、GeForce RTX 2060、Core i7級のゲーミングPCはおろか、PS5も買えない。コミュニティにも属していないと友だちの家にも行けない。そういう人はどうするかというとモールのPS5などが遊べる有料試遊スペースや、路面店のネットカフェで遊ぶ。
これらの店もまたとない商機とばかりに、『黒神話・悟空』が動作するPCやPS5を用意。こうした店は近年閑古鳥が鳴いていたが、黒神話が遊べるか? という問い合わせが多く寄せられ、過去にないほどの客入りとなったそうだ。
一方、高給取りならばゲーミングPCが買えるわけだが、これまた長らく閑古鳥が鳴いていた自作PCショップに人が戻ってきたとのこと。たとえば中国最大級の電子街である深センの華強北にも多くの人がショップブランドPCを求める客が多く来店した。実に2020年の新型コロナでのリモートワーク・リモート授業ニーズ以来の特需だ。
各店は黒神話に必要なスペックに対応し、かつプリインストールしたショップブランドPCをアピール。コロナ禍に買ったPCをアップグレードする場合はビデオカードを中心に約1万元(約20万円)、ゼロから組む場合は、約1万8000元(約36万円)程度となる。また需要が伸びると、価格が上がるのは中国の業界ではあるあるで、リリース前後では毎日のように200元ずつ価格が上昇したという。
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