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タブレットのはしり? パレットディスプレイやロケーションフリーテレビなどソニーが尖りまくっていた20年前

2024年09月06日 12時00分更新

 2002年、ソニーは他社に遅れをとりつつもテレビ市場でそれまで主力だったブラウン管テレビから、薄型テレビへと徐々にシフトを始めました。

様々なラインナップを揃えていたソニーのテレビ「WEGA」

 市場で売れ続けるブラウン管は残しつつ、世の中のトレンドが移りつつある薄型かつ大型テレビの商品群を充実させ、液晶テレビ、プラズマテレビ、リアプロジェクションテレビといったバリエーション豊かな力技でラインナップ攻勢をしかけました。

 ただ、この頃に筆者が思ったのは、テレビというものがテレビ放送というコンテンツを見るだけのディスプレーでしかなく、進化の枠を飛び出せないことに退屈さを感じていました。ちょうどこの時期に、VAIOがアグレッシブかつチャレンジングな製品を出し続けていたからかもしれません。

 でもそんな中、とんでもなく心をわしづかみにするテレビが発売されました。

今で言うタブレットが付いたテレビ
時代を先取りしすぎた「<ベガ> HZシリーズ」

 2003年に登場した、大画面のプラズマディスプレイと「パレットディスプレイ」と名付けられた小さな液晶ディスプレイという構成の<ベガ>“HZシリーズ”です。

<ベガ> HZシリーズ

 これは、単にサイズの異なるテレビがセットになったという製品ではありません。パレットディスプレイと呼ばれる小型テレビのようなものは、7型のワイドVGA液晶(800×480ドット)に、バッテリーを内蔵しているので、部屋の中に持ち運んで使うことができます。

 ただテレビを見るだけでなく、インターネット閲覧やストリーミング動画の再生ができたり、側面にあるメモリースティックスロットではデジカメで撮影した画像を見ることもできました。さらに、AV機器を操作できるマルチリモコンといった役割もあります。

パレットディスプレイで見られる番組表

 これだけでも結構おもしろい試みなのですが、さらにテンションを上げてくれるのが、タッチパネルをジェスチャーで操作できる「エアタクト」というユーザーインターフェースです。

 画面を指でなぞるように動かすと、様々な操作ができます。たとえば、タッチパネルを左右になぞればチャンネル選択というのはありがちですが、手前から上にシュっとなぞると、パレットディスプレイにあった映像を大画面のプラズマテレビに飛ばせたり、その逆に下になぞれば、プラズマテレビの画面が手元のパレットディスプレイに映るといった具合です。

 ウェブコンテンツもストリーミング動画も、デジカメの画像も、プラズマテレビとパレットディスプレイをコンテンツがいったりきたりと操れて、まるで魔法のようだ! と感動したことを覚えています。

 余談ですがこの頃ならではというか、「So-net」が運営するエアタクト搭載プラズマテレビ<ベガ>を対象としたストリーミング配信サイトを、発売と同時に開設。最新映画の予告編映像やドキュメンタリー、音楽映像などさまざまな専用コンテンツを用意するという大掛かりなことまでやっていました。

ロケーションフリーテレビも忘れるな!

 もう1つ強く印象に残っているのが、2004年に発売されたワイヤレスでテレビを楽しめるロケーションフリーテレビ「LF-X1」です。

ロケーションフリーテレビ「LF-X1」

 12.1型の液晶モニターと本体部となるベースステーションにわけられて、ワイヤレスで持ち運びしながら、テレビ番組やビデオ、インターネットを家中のどこからでもタッチパネルの簡単操作で楽しめるテレビです。

 その前にも似たコンセプトの「エアボード」を発売していましたが、4年ぶりに刷新されました。エアボードと根本的に違うのは、双方の通信に5GHz帯と2.4GHz帯のデュアルHi-Bitワイヤレスを採用していること。映像の安定性も画質もまるで違っていました。そのおかげもあって、別売のお風呂ジャケットを用意すれば、お風呂に入りながらテレビ視聴できたのです。

 さらに、外出先でもインターネット環境さえあれば、自宅にあるベースステーションにつながっているテレビやDVDプレイヤー、ビデオデッキからコンテンツをリアルタイムに視聴できました。まさか、外にいながら自宅の機器を操れるなんて!

 そもそもこんな巨大で重いモニター(約2.4kg)を出張や旅行に持っていくのか? という疑問すら抱くことなく、「こんなことできるなんてすげぇ!」と素直に驚いていました。

残念ながら後世に続かなかったプロダクト

 こんなすごい技術を具現化できるのだから、きっと将来的にはもっとすごいテレビが出てくるに違いない! と、いつもソニーには本気で期待していました。

 ですが、実際にはこれらのコンセプトを持ったモデルは続くことなく、徐々に人々から忘れ去られていきました。だいたいソニーは新機軸を打ち出してもそのあとが続かない、なんてことはよくある話で、今思えばユーザーとしてよくキレなかったなと思います。

 今となっては、スマホやタブレットがテレビと連携するのも、外出先で動画をみるのも当たり前なので、「なんだそんなことか」と思うかもしれません。

 ですが、アナログからデジタルに変わっていく中で、今まで想像もしてなかったこと、夢に描いていたようなことが、現実の技術に落とし込まれてプロダクトとなって登場してくると心が踊りました。技術の伸びしろがある時代で、窮屈ながらもワクワクさせてもらいました。

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筆者紹介───君国泰将

ソニー(とガンダム)をこよなく愛し、ソニーに生きる男・君国泰将氏

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