GT500ではランキング首位のau TOM’Sが底力を見せる
eSports出身レーサー・冨林勇佑、真夏のSUPER GTはトラブル続きで1周で終わってしまう
SUPER GT 第4戦が8月3~4日に富士スピードウェイで行なわれ、GT500クラスは8号車「ARTA CIVIC TYPE R-GT」、GT300クラスは65号車「LEON PYRAMID AMG」が、それぞれ今季初優勝を飾った。
GT500ではシビックがワンツーフィニッシュ
GT300はMercedes-AMGがワンツーフィニッシュ
6月の第3戦鈴鹿から2ヵ月のインターバルを挟み、2024シーズンも中盤戦に突入した。今回の舞台は今季2度目の開催となる富士。ちょうど夏休み期間中ということもあり、多くの家族連れで賑わい、2日間の総来場者数は5万2200人と大盛況となった。
しかし、2日間とも今季一番の暑さとなり、決勝レーススタート時は気温35度、路面温度56度と非常に暑いコンディションの中で350kmのレースが始まった。GT500クラスは、予選からホンダ シビック TYPE R-GT勢が速さを見せ、なかでも8号車が順調なペースで周回。前半から着実にリードを広げた。
後半に入って、100号車「STANLEY CIVIC TYPE R-GT」が背後に迫ってくるも、8号車の後半担当である松下信治が意地のドライビングをみせ、最後は3.2秒のリードを築いて今シーズン初勝利を飾った。2位には100号車が入り、シビック TYPE R-GTが導入後初勝利&初ワンツーフィニッシュを飾った。
一方のGT300クラスは、予選でポールポジションを獲得した65号車が序盤からリードを広げていく展開となった。さらに25周目にはコース上でのストップ車両にいち早く気づいて、早めのピットストップを決断。ちょうどドライバー交代を行なっている最中にFCY(フルコースイエロー)が導入され、追い越し禁止ですべての車両がスロー走行だったため、一気に大量リードを手に入れることとなった。
とはいえ、後半スティントは45周以上も走らないといけないため、タイヤと燃費を意識して走らなければならない。そこはチームのエースである蒲生尚弥がうまくペースをコントロール。最大で50秒以上あったリードは最終的に31秒まで減ったが、それでも確実にゴールまでマシンを運ぶというミッションを遂行し、今季初優勝を飾った。
2位には4号車「グッドスマイル初音ミクAMG」が久々の表彰台獲得。途中は56号車「リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R」と激しいポジション争いを繰り広げたが、4号車の後半担当である谷口が必死にポジションを守り抜き、初音ミクカラーのマシンが、およそ2シーズンぶりにGT300の表彰台に立った。
eスポーツ出身の冨林選手は
終始トラブルで思い通りに行かない週末に
さて、当連載で応援している冨林選手はというと……。各クラスで熱戦が繰り広げられた中、グランツーリスモ世界チャンピオン経験を持つ冨林勇佑が乗り込んだ9号車「PACIFIC ぶいすぽっ NAC AMG」は、公式練習からトラブルが続出していた。第3戦鈴鹿から2ヵ月のインターバルを利用して、マシンのパフォーマンスアップを図ってきたが、走り出しからトラブルに見舞われて、そのチェックに時間を費やされることになっていた。
そのトラブルは解消されて、午後の予選に臨んだが、今度はABSの部分で不具合が見つかり、Q1を担当した冨林も満足のいくブレーキングができず。結果的に1分39秒119のベストタイムでAグループ13番手と不本意な結果に終わった。最終的にGT300クラス25番手となり、後方からの追い上げを目指すこととなった。
「Q1でちゃんとABSが機能してくれていれば、1分18秒の前半くらいまでは行けたと思います。決勝は追い上げるレースをしたいですけど、朝のトラブルでセットアップがほとんど出来ていない状態なので……」と冨林。前回に続いて、今ひとつ歯車が噛み合ってくれない状況に肩を落としていた。
気を取り直して迎えた決勝レース。今回は冨林がスタートドライバーとしてマシンに乗り込んだ。350kmという初めてのレースフォーマットで、少しでも上位を目指すべくスタートを切ったが、1周目に駆動系のトラブルが発生。なんとかピット入り口まで戻ってくるも、そこで動けなくなってしまった。
マーシャルの手を借りてピットレーンまでマシンを戻したが、戦列に復帰することはできず。冨林の第4戦はわずか1周で終わることとなった。
2ヵ月ぶりのSUPER GTは不完全燃焼に終わってしまったが、今月末には第5戦鈴鹿が予定されている。まずはトラブルを修復して、今度こそ冨林らしい走りを期待したいところだ。
au号がほぼ最後尾からのスタートも
GT500王者の底力が光ったレース
そんなSUPER GT第4戦富士大会では、GT500クラスで安定した活躍を見せる36号車「au TOM'S GR Supra」の底力も発揮されるレースとなった。
SUPER GTでは成績に応じてサクセスウェイト(ハンデ)を搭載するというルールが導入されている。さらにGT500クラスではウェイト量が50kgを超えると燃料リストリクター制限が入り、ストレートスピードが遅くなって、上位入賞が難しくなる。現代のSUPER GTでは、このサクセスウェイトとうまく付き合いながらシーズンを戦わなければならないというのも、見どころであり難しさでもある。
今季の開幕戦で優勝を飾った36号車は、第2戦・第3戦でも順調にポイントを積み重ね、第4戦目にして74kgものサクセスウェイトを背負って参戦。燃料リストリクター制限も2段階目に突入し、より厳しい状況で今回の富士ラウンドを戦わなければならなかった。
その影響が出て、予選は14番手に沈むも、決勝レースでは持ち前の安定感で追い上げを開始していく。坪井 翔が担当した前半でポジションを上げ始めると、ライバルが折り返しを迎える前にピットストップを済ませる中、36号車はペースの良さを武器に、後半までピットを引っ張る作戦を選ぶ。
40周目にピットインし山下健太に交代。10番手でコースに復帰すると、ライバルよりもフレッシュなタイヤという利点を存分に活かして追い上げを開始。ストレートスピードで絶対的に不利な状況でも諦めずに仕掛けていき、終盤に3つポジションアップ。7位でチェッカーを受け、ポイントランキング首位をキープした。
「シーズン後半を考えると、この富士が一番の正念場だと思っていたので、この結果で終えられたのは大きいです」と坪井。終盤に怒涛の追い上げをみせた山下も「今年一番のレースができました」と笑顔をみせていた。
後半戦もサクセスウェイトが重くなり、さらに厳しい戦いが予想されるが、着実に2連覇に向けて一歩ずつ近づいている36号車の戦いぶりから、一層目が離せない。
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります