第446回
「Ryzen 9 9950X」「Ryzen 9 9900X」は“約束された”最強のCPUになれたのか? ベンチマークで見えた利点と欠点
Zen 5アーキテクチャーの電力制御のすごさとワットパフォーマンスの高さに驚かされる
次はCPU温度 (Tctl/ Tdie)の推移だが、TDPが170WのRyzen 9 9950Xの場合、最終的に7950Xと同じ95度あたりまで上昇し頭打ちになる。DDR5-6000を組み合わせた場合でも温度の傾向はDDR5-5600時と大差ない。
一方TDPを120Wに絞ったRyzen 9 9900Xは170Wの7900Xに比べ10度近く低い温度で安定した。パフォーマンスは前世代と同等以上でも温度が低く扱いやすい、というRyzen 7 9700XおよびRyzen 5 9600Xと同じくくりで考えられるだろう。
そしてCPU Package Powerの推移に目を移すと、Ryzen 9 9950Xは200W、9900Xは162Wあたりでビタッと安定する。DDR-6000を使用していてもその傾向はほぼ変わらない。
これに対しRyzen 7000シリーズのデータは変動が激しいが、特にRyzen 9 7950Xのデータに注目。CPUのクロックや温度はRyzen 9 9950Xよりも高い一方で、CPU Package Powerだけは9950Xよりも低い。Ryzen 9 9950Xは7950Xよりも効率的に電力を受け取りつつも、それを無駄に熱に転化させず処理を実行したことになる。
一方Ryzen 9 9900XのCPU Package Powerは7950Xとほぼ同程度だが、わずかに7900Xの方が上だった。TDP 170WのRyzen 9 7900Xの場合CPU温度が95度の壁に頭をぶつけてしまうため、それを回避するためにパワーを絞っている状態である。しかしRyzen 9 9900XはTDP 120Wの枠内を使い切りながらも、ソケットから受け取る電力は7900Xよりも小さい。
Ryzen 9 9950Xのデータも含めると、改めてZen 5アーキテクチャーの電力制御のすごさとワットパフォーマンスの高さに驚かされる。ただ少々絞りすぎて、前世代との性能差が見えづらい部分もあることは確かだ。
最後にDDR5-5600とDDR5-6000使用時において、メモリーコントローラーの消費電力はどう変化するのか? Ryzenのメモリーコントローラーだけの消費電力は見ることができないが、それが置かれているIODの消費電力なら、SoC Powerとして追跡できる。
RyzenのIODの消費電力はメモリーのクロックをDDR5-5600から6000に変更するだけで5W程度上昇する。Ryzen 7 9700XおよびRyzen 5 9600Xにおいて、DDR5-6000使用時にエンコード速度が落ちてしまう原因は、CPUに回すはずだった電力をSoCが奪ってしまったから、ということになる。
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