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「つながる」から「共鳴する」へステージを移すソラコムの最新動向

「あらゆる場所、あらゆるモノ」は現実だ レイ・オジー氏と安川CTOがたどり着いたIoTの形 

2024年07月31日 11時00分更新

進化と深化を続けるSORACOMプラットフォームの最新動向

 興奮冷めやらぬ基調講演の後半は、SORACOMプラットフォームの「シンカ」がテーマとなった。シンカがあえてカタカナになっているのは、これまでになかった機能やサービスを生み出す意味での「進化」と、より深くユーザーの課題に対してダイブする「深化」の2つの意味があるから。

 前者の「進化」について説明したのは、ソラコムのChief Engineering Officerである片山暁雄氏。「午前中の基調講演では、心臓が悪くなって倒れる役ということで、登場させていただいた」とコメントする。

基調講演内の動画でも名演技を見せたソラコムのChief Engineering Officer 片山暁雄氏

 SORACOMプラットフォームは、サービスローンチ以来つねに進化を続けており、2週間に1回のペースで新機能や機能改善のリリースを継続している。片山氏の率いるエンジニアリングチームは、600万回線、3万以上までユーザーが増えた現在も、日本のみならず、グローバルにおいて先を見据えた拡張を進めている。また、大規模なIoTシステムを前提に、アカウントダッシュボード、コンソールの高速化、詳細な料金明細表示なども強化しているという。

 同日発表されたのは、内部統制を評価するための監査レポートである「SOC2 Type 1報告書」受領の報告。これはセキュリティや機密保持に関する取り組みを第三者機関に評価してもらうための取り組みで、SORACOMプラットフォームとユーザー環境を含む監査でも活用できるという。

 サポートチャットボットのアップデートも発表された。これは昨年発表されたばかりで、サポートの回答として生成AIによる回答を選べるようになっているのだが、今年はもう少し踏み込んでコンソールにQ&Aメニューを追加。質問に対して生成AIがチャット形式で答え、ドキュメントも提示してくれる。サポートチャットボットは昨年から研究を続けており、すでに5世代目に突入している。

サポートチャットボットのアップデート

 午前中に発表された「SORACOM Query Intelligence」は、ユーザーデータや通信履歴などを含むソラコムのプラットフォームデータに対して、自然言語でクエリが行なえるという機能。具体例として利用された「過去3日間でアメリカで使われたSIMを特定し、地図上に位置情報とともに表示してください。AT&TとT-Mobileでイベント数の多い順に上位30くらいで。キャリア別に色分けしてほしい」という細かいリクエストに対しても、きちんと地図とSIMの利用場所をマップしてくれた。マップ生成に利用したSQLも見られるので、クエリの妥当性も調べられるという。

 さらにWebブラウザ経由でデバイスに直接接続できる「Web Terminal」も新機能の1つだ。従来はデバイスに直結できるエンドポイントを提供するSORACOM Napterというサービスがあったが、利用に当ってはエンドポイントとターミナルの設定が必要だった。しかし、Web Terminalであれば、コンソール上でSIMを選び、接続設定のダイアログが出れば、OKを押せばWebブラウザ上にターミナルが立ち上がる。通信もWebSocketを用いているので、エンタープライズでありがちな、ファイアウォールやプロキシを超えられないという課題も解消できるという。今後はSSH以外のプロトコルにも対応する予定だ。

 最後に紹介されたのは、デバイスとクラウド、オンプレミス環境を双方向につなげるVPGにも新たに「VPG TypeF2」が追加され、接続がより容易になった。従来から提供してきた大規模ユーザー向けのVPG-TypeFでは、デバイスからの接続のためにゲートピアと呼ばれるVX-LANゲートウェイをクラウドやオンプレミスに設置する必要があったが、VPG Type-F2ではこのゲートウェイが不要になる。「シンプルにネットワークを構築してもらえるし、より柔軟なルーティングも行える。より大規模なIoTネットワークを構築したいとか、双方向でつなぎたい場合はType-F2を選択していただきたい」と片山氏はアピールする。

シンプルなネットワーク構成が可能なVPG-Type F2

 片山氏は、「SORACOMプラットフォームを進化することで、IoTの敷居を下げる民主化を進め、ユーザーのIoTビジネスをより拡大していきたい」とまとめた。

SORACOM Relayで価値創造に集中できたクラリオンライフサイクルソリューションズ

 続いてのトピックは、ソラコムの案件としても増えてきたカメラ。カメラの画像とAIを組み合わせれば、いろいろな可能性が広がるのは自明だが、カメラの多くはクラウドにつながっていない。しかし、ひとたびインターネットにつなげてしまうと、セキュリティ的に危険な状態に陥るカメラもある。

 こうしたカメラの課題に対して、昨年発表したのが、SORACOM AirやArcの安全な通信路を利用し、既存のIPカメラを追加ソフトなしでセキュアにクラウド接続する「SORACOM Relay」になる。ユーザーが動画をリクエストすると、SORACOM RelayがIPカメラで汎用的に用いられているRTSPのプロトコルを用いてセキュアなWireguard経由で動画を取得。ユーザーのクラウドに動画データを届けるという仕組みになっている。

 ここで登壇したのはSORACOM Relayを活用するクラリオンライフサイクルソリューションズの鶴巣亨輔氏だ。

クラリオンライフサイクルソリューションズ 鶴巣亨輔氏

 カーステレオ、カーナビ、アンプなどを手がけるクラリオンの子会社が集まって2000年にできたのが前身となるクラリオンセールスアンドマーケティング。その後、2019年にフランスの自動車部品メーカーであるフォルシアの傘下に入り、2023年にクラリオンライフサイクルソリューションズに商号を変えている。現在は「安心・安全・快適」を掲げ、バスやトラック、営業車、建機、タクシーなどおもに働く車に向けてのデバイスを開発・販売している。

 今回、SORACOM Relayを採用したのは、今秋発売される通信型のドライブレコーダー「CF4000」になる。ソニー製の高品質カメラを4台備え、AIによる画像認識で危険運動の挙動を検知・警告する予防安全機能を搭載するほか、駐車中の不審者や衝撃を監視する。検知データはすべてクラウドに送信され、データ分析やレポート作成に活かせるという。

 最大の目玉は、特定の車両やドライバーの状況をリアルタイムに確認できるライブ配信機能だ。映像・音声データの送信にはSORACOM Relay、通信にまつわるデータの送信にはSORACOM Beamを用いているという。SORACOM Relayを採用したのは、サーバーからデバイスを特定し、リクエストを送信できる点や映像・音声に特化したRTSPを利用できる点が大きかった。また、バックエンドのサービスをソラコムに任せることで、本来やるべきビジネスや価値創造に集中できる点を評価。さらにデバイスとSORACOMプラットフォームのセキュリティが確保されているのもメリットだという。

SORACOM RelayとBeamを活用したシステム

 鶴巣氏は、「交通事故の直後やドライバーの体調不良、駐車時の異常などがあったとき、車やドライバーの様子を見たいタイミングで高精度のカメラ画像を瞬時に見られる。IoTとオートモーティブの世界が接点が広くなっている。私たちは安心・安全・快適を実現すべく、ソラコムの技術部隊と協力しながら、お客さまの課題を解決していく」とまとめた。

 今回、ソラコムは同社との話し合いを経て、サーバーの稼働時間を抑えるリザーブドプランを新たに用意した。また、SORACOM Relayにおいてもモーション検知機能がサポートされた。ソラカメのみならず、クラウド上に蓄積されたデータから検知した静止画をアップロードし、AI等で分析できるようになった。

生成AIをSORACOMプラットフォームに埋め込み、連携できるように

 最後、生成AIの取り組みについて説明したのが、ソラコムのCTO of Japanの松井基勝氏だ。

 ソラコムは昨年から生成AIへの取り組みを本格化しており、昨年の7月にはユーザーデータの分析に生成AIを活用できるHarvest Data Intelligenceを発表したり、松尾研究所と共同で「IoT×GenAI Lab」を設立したりしている。松井氏は、「生成AIはマルチモーダル化したり、性能も上がっており、もっと活用できると考えている。IoTと生成AI、そしてみなさんお持ちのドメイン知識を組み合わせて、活用できる機運が上がってきました」とコメントする。

ソラコム CTO of Japan 松井基勝氏

 松井氏は、午前中に紹介したSORACOM Fluxの動画から、AIモデルを選定できるメニューを紹介。「みなさん推しのAIモデルがあると思うのですが、OpenAIの持ち込みやAmazon Bedrock、Google Geminiなどにも対応しています。普段使ったことないものを試していただき、自分のユースケースに当てはめることもできます」とアピールした。

 複数のAIモデルの利活用も可能。従来のMLやHaikuのような軽量モデルを使ってまずは条件分岐を設計し、対象を抽出した画像だけ高度なモデルで深掘りするといった手法も有用だという。また、生成AIの出力を自然言語のテキストではなく、JSON形式にすると、システムの連携が容易になるという。もちろん、Webhookを経由して、カスタムロジックなどを実行するなど、外部APIサービスや自社システムとの連携も有効だという。

生成AI活用のススメ

 今度はSORACOMプラットフォームと生成AIの連携も進めていく。アクションやイベントソースの拡充に加え、SORACOM Fluxに送信されたデータの活用、外部サービスの連携も強化していく。「こんなデータ欲しいとか、こんなサービスと連携したいんだけどという声をお待ちしております。まずは帰って、SORACOM Fluxのアプリを作成してみてください」とのことで、SORACOM Fluxキャンペーンを告知した。

 SORACOMプラットフォームの進化と深化を掘り下げた基調講演。安川氏は、SORACOMプラットフォームの一覧を披露し、サービスの機能やデータ活用についてまとめる。さらに新発表のSORACOM Fluxや生成AIについても言及。「今までのように人間が見て判断するための方法も充実させていきますし、今後は一層AIを活用し、デバイスの動きも自動化して、より多くのユースケースで、当たり前のようにみなさんのアイデアを形としていけるプラットフォームにしていきたい」と抱負を語り、午後の基調講演を終えた。

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