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シャープらしい経営とは何か、そしてそれは成果につながるものなのか

2024年08月05日 08時00分更新

シャープらしさを取り戻すとは?

 沖津社長兼CEOが、就任会見で打ち出したのが、「シャープらしさを取り戻すこと」である。

 「社長として、最も成し遂げたいことは、『シャープらしさ』を取り戻すことである。これが私に課せられた一番のミッションである」と宣言する。

 沖津社長兼CEOは、「シャープは、他社に真似される商品をつくることで、お客様からの評価を得てきたが、コロナ以降、以前に比べて新しい商品が出ていないことは反省しなくてはならない。ここ数年、シャープらしさが失われていたことの最大の要因は、業績悪化である。その責任は経営の問題であり、事業をやっているメンバーもよくない状況にあった」と語り、「まずは黒字化しないと『シャープらしさ』は取り戻せない。2024年度は黒字化することを誓う」と決意を示した。

 そして、「『シャープらしさ』は、1年程度で、簡単に戻るものではない。ブランドと一緒で、落ちるときはすぐに落ちるが、戻すには時間がかかる。私の後任や、その先の後任によって、『シャープらしさ』をきちっと戻すことにつなげたい」と、長期的視点で取り組む姿勢もみせた。

スパイラル展開が成長の源泉

 シャープは、2年連続の最終赤字となり、経営再建策として、液晶パネル生産のSDP(堺ディスプレイプロダクツ)を停止し、AIデータセンターに転換するなど、デバイス事業のアセットライト化を進めている。

 2027年度を最終年度とする中期経営方針では、デバイス事業を縮小し、白物家電をはじめとするブランド事業に投資を集中。これにより、ブランド事業で利益を稼ぎ、財務体質の強化することで、黒字転換と事業成長を図るシナリオを描いている。

 だが、長年に渡るシャープの成長戦略は、デバイス(技術)とブランド(商品)の両輪による「スパイラル展開」だ。この視点から捉えれば、液晶パネル生産を中心としたデバイス事業の縮小は、シャープの事業構造が片肺飛行になりかねない事態にも受け取れる。

 実際、シャープの歴史を紐解くと、技術と商品のスパイラル展開が成長の源泉だった。

 1964年にトランジスタダイオードを開発し、それを搭載したオールトランジスタダイオード電卓がヒット。この収益をもとに、MOS型ICやMOS型LSIを開発し、それらを最新の電卓に搭載して会社を成長させた。この半導体技術の蓄積は、液晶パネルの開発や太陽電池の開発につながり、計算結果を鮮明に表示できる液晶電卓や、電池が不要な太陽電池電卓の商品化につながった。これは「電卓スパイラル展開」と呼ばれ、技術と商品の組み合わせによって、スパイラルに成長していく構造だった。

 「液晶スパイラル展開」も同様である。セグメント表示やドットマトリクス表示といった技術は電卓やワープロといった商品に採用され、その成果をもとにSTN液晶やTFT液晶へと進化。それらの液晶パネル技術を、PCや小型テレビ、ハンディ端末、携帯電話などに位置早く採用し、その成果をもとに大型液晶パネルへと進化。これらが大型テレビやスマートフォンなどに採用されることになり、シャープの商品の優位性が発揮された。

 このように、シャープの事業成長は、デバイス(技術)とブランド(商品)の両輪があってこそ成しえたともいえ、シャープの歴代社長もそれを声高にアピールしていた。

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