仕事で使えるビジネス版LINEである「LINE WORKS」の連載では、アカウント作成の基本からビジネスシーンでの活用術、便利なTipsなどを紹介していく予定。第137回は、7月に行なわれたセミナーの内容を元に「LINE WORKS ラジャー」というサービス名になった新製品の「スマホ版トランシーバー」の機能や利用シーンについて紹介する。
LINE WORKSは7月17日と23日に「スマホ版トランシーバー」の紹介セミナーを実施した。「スマホ版トランシーバー」は2024年5月に開催されたLINE WORKSのビジネスカンファレンス「LINE WORKS DAY 24」で初披露された開発中の新製品だ。
プレゼンターはLINE WORKS株式会社 事業企画本部 Senior Service Planning Manager 小田切悠将氏。小田切氏は2022年9月からLINEのAIカンパニーでAI製品の事業企画を行っていた。2023年4月にLINE WORKSとAIカンパニーが統合したことで、AIを使って何か新しい価値を提供するといった取り組みの中で生まれたのが、「スマホ版トランシーバー」となる。
AIを用いてテキストと音声のコミュニケーションを実現する
例えば、小売業の現場ではスタッフ間でトランシーバーを利用していることが多い。商品を扱う際に両手がふさがるので、スマホなどを操作できないためだ。顧客から質問があった際に、スマホを取り出して入力するのは手間がかかるという理由もある。しかし、店長が本社とコミュニケーションする際は、LINE WORKSなどのチャットツールやメールを使ってテキストでやり取りすることになる。こうなると、店長が板挟みになって両方のツールを使う必要が出てくる。
「スマホ版トランシーバー」なら、この課題を解決できる。店長と本社スタッフはLINE WORKSを利用し、現場では「スマホ版トランシーバー」を使って音声でコミュニケーションできるのだ。
その際、LINE WORKSの音声AI技術を活用することで、現場が話した内容はテキストになってトークルームに送信され、本社が入力したテキストは音声合成されて、現場には声として聞こえるようになる。本社の人も店長も現場スタッフも、皆が同じコミュニケーションの輪に入れるのが特徴だ。
「トークルームに送った文字を音声合成しますが、文字を機械的に読み上げるのではなく、自然な声をAIで生成しています。また、音声を文字に起こす際も、そのまま起こすのではなく、「えー」とか「あー」など、フィラーと呼ばれる言い淀みを除去して綺麗な文章を投稿することが可能です」(小田切氏)
スマホだけで完結することによるメリット
スマホを使うということは、利用できる距離に制限がない。同じ店内だけでなく、遠隔地にある店舗とでもリアルタイムでつながることができるのだ。トランシーバーだと異なるフロアでは電波が届きにくいし、拠点が離れると電波が届かずに会話ができない。しかし「スマホ版トランシーバー」なら、日本と海外拠点をつなぐことだってできる。
トランシーバーとして使うのであれば、UIもシンプルでなければいけない。「スマホ版トランシーバー」も誰でも使えるようにわかりやすい操作画面になっている。真ん中の丸いボタンを押しながら話すだけでいい。他の人が話しているときには、真ん中にその人の顔写真が表示されるのもわかりやすい。タブは「トランシーバー」と「メッセージ」の2つだけで、「メッセージ」タブではチャット画面が表示され、会話の履歴を確認できる。誰でも直感的に使えるので、使い始めの説明も不要だろう。このUIを実現することも、新しいアプリとして開発した理由の一つだという。
「新人が入ったり、端末が故障したときに、専用の業務用端末は手配をする経路が限定されていたり、発注しても届くまでに日数がかかってしまうことがあります。一方、「スマホ版トランシーバー」はその名の通りスマートフォンを利用しているので、アプリさえ入れればその瞬間から使えます。仮に壊れたとしても、トランシーバーと比べれば、代替機の手配は簡単です。急遽スタッフが増えた場合には、個人の端末をBYODで使っていただくことも可能でしょう」(小田切氏)
顧客と話しているときにトランシーバーで話しかけられても、返事ができないだけでなく話の内容にも集中できないだろう。この場合も、「スマホ版トランシーバー」であれば、文字起こしされているので、「メッセージ」タブで発言を振り返ることができる。何度も先輩に聞き直して気まずくなるといったことが回避できるので、現場としてはありがたい機能だ。
さまざまな業界での利用が予想できる
前述のとおり小売であれば、販売スタッフ同士のコミュニケーションに加え、店舗・倉庫間の在庫確認や店間移動の相談などもできるようになる。
建設業であれば、複数の現場を統括しながら、離れた現場の状況を把握することができる。イベント業なら、アルバイトもコミュニケーションに参加できるし、時系列を踏まえた作業記録の確認や報告書作成のための証跡管理も行える。介護業界では、家族からの電話や来訪を各フロアや部屋にいる担当者へシームレスに共有すると言った使い方が想定される。
発話の方式はアプリのボタンを長押しして話す方法と、PTT(Push To Talk switch)スイッチを備えるヘッドセットを利用する方法の2パターンから選べる。ヘッドセットを使えばハンズフリーで音声を聞くことができるし、自分が話す際は耳元のボタンを長押しすればいい。両手を使う現場スタッフがスマホを操作しなくてもコミュニケーションできるというわけだ。
リリース予定は2025年の初頭を予定している。原稿執筆時はβテストがまだ募集されていたので、筆者もさっそく申し込んでみた(※βテストの募集は7月末で終了)。
セミナーでは最後に質疑応答が行われた。
Q:バッテリーや通信量(料金)への影響はどうなっているのでしょうか?
A:我々も優先度高く考えています。やはり1時間、2時間でバッテリーが切れたり、何ギガも通信量を消費してしまう形だと、実用に耐えません。ここはしっかりと労働時間や労働環境を考慮して開発を進めております。
Q:利用料金プランはどういったものでしょうか?
A:前提として、現状のLINE WORKSプランとは別となる予定です。詳細に関しては検討中でございますので、決まりましたらお伝えできればと思います。
Q:LINE WORKS(チャットツール)を持っていないと使えないのでしょうか?
A:こちらに関しては、LINE WORKSをお持ちでない企業様でも使っていただけるように考えております。
「スマホ版トランシーバー」はLINE WORKSと連携し、テキストと音声でシームレスにコミュニケーションできるのが強みだ。利用料金が不明なのでコスパはまだわからないが、現在、トランシーバー専用端末を使っていて課題を感じている企業は多いはず。サービス名は「LINE WORKSラジャー」に決まったとのこと(関連記事:2025年登場のLINE WORKSのスマホ版トランシーバーは「LINE WORKS ラジャー」に!)。今後も追加で情報発信がされていくようなので、要注目だ。
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