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kintoneでなにが減り、なにが増えたのか?

kintone担当者の本音が全漏れ 匠との出会いで劇的ビフォアフとなった資材リンコム

2024年06月27日 09時00分更新

 kintoneユーザーが自らの事例を披露するkintone hive sapporo。4番手として登壇した資材リンコム 北海道支店の橋本未帆氏は、FAX、電話、紙だらけの職場での業務改善ストーリーを披露。独特のフランクすぎる語りと個性豊かなイラストベースのスライドで会場を笑いを誘いつつ、kintone担当の目線で業務改善に至るまでの道のりを解説した。

資材リンコム 北海道支店 橋本未帆氏

あるのはFAXと電話とメールだけ

 「○○が減ったら、○○が増えた話」というタイトルで登壇したのは、2年前のkintone hive sapporoは客席で見ていたという橋本未帆氏。「ここに立つのが夢だったので、感無量です。とはいえ、すごいことはしていないので、期待しないで聞いてください!」と第一声に観客席が笑いが漏れる。

 「資材リンコムのCM、見たことある方ー? 正解です。CMやってないです!」とのっけから聴衆をいじり倒し、「パンダが好きなので、スライドにも一杯出てきます。私の顔を見るのに飽きたら、パンダを見て和んでください!」とキャラの強さがにじみ出る橋本氏。派遣社員、契約社員を経て、現在は資材リンコム 北海道支店 営業統括部門に勤めており、kintone歴は5年に及ぶという。

 資材リンコムは電柱やコンセント、鉄蓋、ケーブルなど情報通信建設工事に必要な資材を取り扱っており、従業員は約150名。2022年に関西の3支社と合併し、全国エリアをカバーできる体制になったという。北海道支店は17名で、きっちりした雰囲気の情報通信建設工事(通建)チームに加え、工具、安全用品、防寒具、防災対策用品など一般工事用品を販売する一般工事チームがあるという。(想定通り)橋本氏はくだけた雰囲気のある一般工事チームに所属している。

 通建チームは全拠点で稼働しているレギュラーチームなので、マニュアルもEDIも在庫もある。一般工事チームは一部の拠点でのみ稼働しているため、いろいろなものがイレギュラー。「オラ東京さ行くぞ状態。マニュアルもねえ、EDIもねえ、在庫もねえ。あるものはFAXと電話とメールだけ」(橋本氏)とのことで、あるものでなんとかしなければならなかったという。受発注は手書きとExcelを駆使しつつ、FAXで送っていた。上長から印鑑をもらうのが大変な作業だったという。

一般工事チームはイレギュラーだらけ

進まない業務改善 有能すぎる上司の栄転でバトンは橋本氏に

 橋本氏は、「こんなことありませんか?」と聴衆に問いかける。「なんとなく違うチームと疎遠」「マニュアルがないので質問がしづらい」「書類が多すぎる」「残業が当たり前で一日中眠い」などなど。「きっとどれか、もしくは全部に当てはまるから、みなさんkintoneを導入したのではないですか? 例外でもなく弊社もかつてはこうでした。ハンコをもらうときしか話さない上長がいたり、ストーカーのように追い回してみたり、押してくれないから『あのハンコおじさん、勘弁してほしいよね』と陰口をたたいていたりしました」といろいろ正直な橋本氏だ。

こんなことありませんか?と聴衆に問いかける

 また、外勤と内勤でうまくコミュニケーションがとれず、思わぬミスが生じていたり、年度末に処分する書類の量があり得ない量になってしまい、廃棄にコストがかかっていたり、営業に行って帰ってきたら事務処理が膨大に残っていたり、職場は問題だらけ。とはいえ、くせの強いチームであるため、紙での作業環境を改善しようとしても、収拾が付かず。早々にお手上げする人、今のままでも困ってないという人、残業もやだけど妻が怖くて家に帰りたくない人、中のことは任せたという人などなど。橋本氏も業務改善の意欲はあったが、解決策がないということが2年くらい続いていたという。

 こんな状況からの転機になったのが、上司が見つけてきたkintoneだ。「これを使うと、いままで紙で作業していた価格表や進捗管理表がなんとパソコンでできる」(橋本氏)とのことで、上司がCMのようにアプリを作成。ただ、上司が有能すぎたため、1年後に東京に栄転となり、機械音痴を自認する橋本氏の元にバトンが渡されたという。

 結果的にkintone担当になってしまった橋本氏は、周りのリクエストに答え続けなければならないが、いままで使う立場だったので、なかなかうまくいかない。セミナーに参加してみてみたものの、それっぽいアプリしかできず、浸透しなかった。「新しいものアレルギーが発症し、患者は病院送りになりました(笑)。じゃあ、一生紙でやってなよと言えれば楽なんですが、それじゃあ自分も、みんなも仕事も楽にならない。なにより自分が使うものなので、いいものにしたいと思い、やってみることにしました」と橋本氏は語る。

引き継いだkintone担当のつらみ

自己解決だけがすべてではない プロに頼るのも業務改善

 続く転機は「匠」との出会い。取引先から「札幌にkintoneのプロがいる」という情報を得た橋本氏は、匠を名乗る斎藤栄氏(ラジカルブリッジ)と出会い、劇的ビフォアアフターを遂げる。3時間×6回で業務改善とアプリ改善を実施し、「なにをやっているかわかりませんが、プロってすごい」ということで、kintoneからの帳票発行や承認ルートの的確化まであっという間に実現してしまった。

匠の登場でkintone導入が一気に前に

 前者の帳票発行では、ステータスが発注書発行に進むと注文書データが自動作成される仕組み。Excelでの編集や画面の遷移がまったくなくなり、注文書のみならず6種類の帳票発行まで可能になった。「社内で解決しようとしても、どうしても超えられない壁はみなさん絶対にあると思うので、そういうときは各地にいるkintoneのプロにお願いすべき。お財布と相談ですが、自己解決だけがすべてではない。プロの技術を取り入れてみるのも業務改善の1つだと思います」と橋本氏は聴衆に語りかける。

 後者の承認ルートの的確化に関しても、今までは修正が発生するたびに、ハンコが必要になっていたが、手戻りのないプロセスを匠に組んでもらったことで、ストーカーのように上司を追い回すこともなくなったという。

 そして、アプリとスペースを用いたkintone活用を横で学ぶうちに、橋本氏もkintoneが楽しくなってきたという。まずやってみたのは条件書式というプラグインを活用し、大事な部分を色で強調できるようにした。「納期の3日前になると黄色で色掛けするようにし、見落としを防止しています」とのこと。

 また、コロナ禍で在宅が主流になってきため、社内外で連絡が取れるように、引き継ぎチェックリストを導入した。さらにアプリのみならず、スペースの充実を図るようにした。kintoneアプリがリリースされると、コメントが付けられるようになった。今までメールでの一斉送信だけだった社内だが、コメントによって従業員の見え方も変わってきたという。

楽しくなってきた橋本氏がスペースが充実へ

結局「○○が増えたら、○○が減った話」とは?

 アレルギーだらけだったkintoneだが、今では支店内全員で使うようになった。ほかのチームとのやり取りも増え、橋本氏以外のメンバーも入った業務改善チームも構築された。「使う人が増えたら、コミュニケーションの機会も増え、情報共有しようという人もだんだん増えてきました。kintoneの「いいね」からリアルの会話も増えて、紙も減って、残業も減って、いいことばかり増えています」と橋本氏は語る。

 そんな橋本氏も時間が増えたおかげで、4月から学生と社会人の二刀流ができるようになった。「kintoneで業務改善の夢を叶えたら、ほかの夢も叶うかもよということを伝えたいです」と語る。

 実際、業務での削減時間は大きかった。Excelで作成していた書類が撲滅された帳票作成の業務では時間で37時間/月、押印申請にかかる時間で10時間/月、紙の印刷やファイリングが不要となった帳票発行で11時間、全部で58時間が削減された。また、管理者との対話会やチームや支店での飲み会が大幅に増えた。「陰でハンコおじさんと呼んでいた上司と今ではいっしょにお酒をのんでいるので、これはおじさんにとっても、私にとってもうれしい効果だったのではないかと思っています(笑)。安部社長、北海道支店はなかよく働いてま~す」と橋本氏はアピールする。

楽しくお酒をのむ時間も増えた

 紙の保管が不要になった倉庫には、売れ筋商品の工具を大量ストックできるようになり、顧客のニーズにも迅速に対応できるようになったほか、災害対策用品という名のBBQセットも完備。「信じられないほどの劇的ビフォーアフターになりました。ありがとうkintone、ありがとう匠!」(橋本氏)ということで、ゆくゆくは全支店を制覇して、kintoneユーザーとのコミュニケーションの輪も拡げたいという。

 最後、橋本氏は「リンコムのリンクは情報通信社会という意味でのリンクなのですが、人と人とのコミュニケーションという意味で、本当の意味でリンコムになればいいなと思っております」と語り、伏せられていたセッションタイトルが「紙が増えたら、会話が増えた話」であったことを明らかにした。

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