これまではx86互換チップが話題になってきたが
AIアクセラレーターの世界では台頭の可能性もありえる!?
中国製CPUについては、独自命令セットで第10世代Core i5相当の「龍芯3A6000(龍芯科技)」、x86で第1世代Ryzen相当の「海光C86 3350(中科海光)」、同じくx86で第7世代Core i5相当の「兆芯KX-6000G(上海兆芯集成電路)」、ARMで第6世代Core i5相当の「飛騰D2000(飛騰信息技術)」などがある。
x86 CPUでは「海光C86 3350」が中国製CPUの中では最も優秀と言われているが、中国独自製品あるあるというのだろうか、なかなかパッケージ製品として販売されているのを見ることはなかった。
最近になり中科可控という龍芯搭載端末を出す企業から海光搭載のPCが発表された。これに「芯動科技(INNOSILICON)」の「風華2号(Fantasy II)」というビデオチップが入っていて、パーツの中国色が極めて強い機種となっている。AIにより操作が簡略化したことが特徴だといい、中国独自パーツ端末でもAIの波がじわじわと来ている。
最も期待されているのが独自の命令セットの龍芯だ。龍芯はかつてのトランスメタ「Crusoe」のような「命令を変換して処理する」仕組みを採用していて、その技術もさることながら、同社業績発表会において「龍芯の命令セットはライセンス料やロイヤルティを支払う必要がない。テープアウト、人件費、その他の関連経費にかかる一時的な費用だけを回収できれば、数十万個を販売すればコストを回収できる」と強気のコメントをしている。
ただし過去に、DVDの中国製上位互換のEVDという規格と製品をリリースした際、「オリジナルなのでライセンス料やロイヤリティを支払う必要はない」という態度を出し、日本などから猛反発を受けた過去もある。
龍芯はCPUにとどまらず、AIアクセラレータカード「2K3000」やビデオカード「9A1000」といった製品を近々リリースする予定で、中国のAIブームは龍芯の将来的な製品ラインアップにも変化を与えている。
龍芯搭載端末はNASを含め、政府や国営企業ほか、医療、教育、金融、電力、公安などで数百万台納入されているというが、今年に入り中国の国民的SNSの微信(WeChat)のLinux版が動作し、龍芯上でも動作することが確認された(ようやくといったところだろうか)。さらには龍芯は、中国を中心とした「(Open)Harmony」のエコシステムを構築しているファーウェイとの協力に前向きという意思表示を発表している。
これまでの中国独自パーツ開発企業は、まったくといっていいほど将来のビジョンが見えなかった。しかし今は摩尓線程であれ龍芯であれ、目指すところが見えるようになり、そのキーワードがAI時代のチップ開発である。他の企業もこの状況の中で台頭する可能性はあるかもしれない。米国が厳しく規制すると中国はなにもできなくて困るというフェーズではなくなり、どうにかやっていけそうだ。
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