2024年5月24日、アドビはAdobe Acrobatの活用を紹介する勉強会を開催した。この中では、北米で提供を開始した生成AI機能「Acrobat AI Assistant」の機能を国内で初披露。アドビの技術とLLMの組み合わせにより、まさにPDFと対話することが可能になっている。
PDFを知り尽くしているからこそできる生成AI機能
ほぼ1ヶ月前の2024年4月17日に提供開始されたAcrobat AI Assistantは、Acrobatの生成AI機能。デスクトップ版、Acrobat Reader、Webアプリ、モバイルアプリなど、すべてのActobatにおいて、追加4.99ドルの追加サブスクリプションで利用可能になる。現時点では英語版のみで日本語版の提供は未定だが、今回の勉強会では開発中の特別ビルドを元に日本語版での利用イメージが初披露された。
米アドビ デジタルメディア事業部 Document Cloud プロダクトマーケティングディレクター 山本 晶子氏は、Acrobat AI Assistantについて「PDFを知り尽くしているアドビだからこそできる生成AIの活用。アドビの独自技術でPDFになにが入っているかを解析し、LLMを組み合わせることで、ユーザーがいまをこのPDFからなにを知りたいかを把握している」と説明する。
Acrobat AI Assistantの機能は、大きくサマリーとアシスタントの2つがある。山本氏はまずサンプルとして日本医師会から提供されているコロナ対策の医療機関向けガイドラインのPDFを開き、アシスタントメニューでサマリを表示する。サマリでは16ページにおよぶPDFの内容がリスト化され、要約されているので、なにが書かれているかが直感的に理解できる。
山本氏は、「コロナ禍の忙しい最中に自治体の職員やお医者さん、看護婦さんが、これらをいちいち読んでいる時間はありません。この中でホントに重要なところだけを抽出して、理解して、実行する。こうした生産性向上のツールとして、サマリは使い勝手がよい」と指摘する。
Acrobat AI Assistantが対象とするのは、基本的に開いているPDFのデータを対象とするため、信頼性が担保されているという。その上でアドビの技術とLLMによって人間が理解しやすい要約を生成する。要約のテキストをメニューからコピーすることも可能なので、PDF全体を送付することなく、関係者に内容を知らせることができる。
既存のPDFから新しい価値を生み出せるツール
続いて披露したのはアシスタントの機能。こちらはまさにPDFと対話するというイメージだ。アシスタントのメニューを開くと、AcrobatはPDFから、ユーザーが聞きたいと思う内容を先回りし、質問と回答をセットしてくれる。生成AIが文書からFAQを自動生成してくれるわけだ。
たとえば、サンプルである医療機関向けガイドラインであれば「マスク着用の新しい考え方はいつから適用されますか?」「感染者の同居家族はどのような対応をすべきですか?」といった質問が用意されており、クリックするとPDFをベースに回答を生成してくれる。
もちろん、自分で質問することが可能。「マスクの着用は義務化されるのですか?」という質問を投げると、「義務化されるわけではない」と回答してくれる。また、「コロナ渦の感染は増えていますか?」といったソースが重要となる質問に関しては、慎重な言い回しをしつつ、LLMの信頼できるデータ(Proven Data)からニュースソースを表示する。そのため、間違った情報が出てくる確率は非常に低いという。
山本氏は、「われわれは膨大な情報を読んだり、検索することに時間を使い、それについて考えたり、新しいものを生み出す時間をとれていない。でも、Acrobat AI Assistantを使えば、膨大な情報から必要な部分を抜き出して、作業時間が圧縮し、新しいものを作ることができる」とアピール。全世界で3兆を超えると言われる既存のPDFから、新しい価値を生み出せるツールだと説明した。
Acrobat AI Assitantの日本語対応のスケジュールは未定。ただ、優先度の高い言語には入っているとのことなので、一時も早い市場投入を待ちたい。
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