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〈後編〉taziku田中義弘さんインタビュー

ボカロには初音ミク、VTuberにはキズナアイがいた。では生成AIには誰がいる?

前編に引き続き、株式会社taziku 代表取締役の田中義弘さんにAIアニメプロジェクトの詳細と今後の展開などについてお聞きした

前編はこちら

日本は“キャラクター”が新しいテクノロジーを牽引する国だ

まつもと 私がずっと気になっているのも、『背景はうまく動かせた。実用レベルだと思う。問題はキャラクターだ』ということです。まさに田中さんがおっしゃった通りで、物語性に欠けます。

 「AIのイラストって死んでるよね」って言われることがありますけれど、それを生き生きとした、まさに“アニメする”ことが必要だと思います。それについては今後研究開発していく、という段階なんでしょうか?

田中 ある程度まではできています。2023年12月に具体的な形として、「アイアニ」を発表しました。

 これはどういうことかと言えば、『これまで日本では、新しいテクノロジーの登場したときに、それを象徴するキャラクターも一緒に生まれてきたよね』という話がもとになっています。

 VOCALOIDの初音ミクしかり、VTuberのキズナアイしかり、あるテクノロジーの誕生と共にそれを布教するというか、代表になるキャラクターが生まれ、そのキャラがシーンを牽引することで一般化していった、という歴史があります。

 翻って、生成AIを象徴するキャラクターはまだいない状況なので、では象徴するキャラクターを僕らで作って発表しよう、と。ただし、キャラだけ作っても文脈がないと受け入れられないので、アニメから創っていこう、というのがAIアニメプロジェクトの骨格になります。

「アイアニ」メインビジュアル

まつもと まずは業界を盛り上げる“キャラクター”が必要だというわけですね。

田中 そこからキャラクターって誰なの? 何なの? と考えました。VOCALOIDなら歌姫がいるというのはすごく自然ですし、VTuberは二次元とコミュニケーションを取れることがミソなので、話せる二次元アイドルが妥当です。

 では、生成AIを象徴できるキャラクターの属性は? と問われたら、それはやはりアニメーターというか、クリエイターなんじゃないかと。

 AIを使って頑張るクリエイター、AIを道具として捉えてAIと人間の力で作品を生み出すという熱量があるキャラクターを作ろうという話になり、次にどんな世界観――最終的にアニメにしたいって思いがあるので――ならば違和感がないかを考えました。

 現状、アニメの仮タイトルは『AIで愛情込めて、アニメ制作中!』で略して「アイアニ」。AIって魂がないと見られがちなので、あえてAIと愛情をかけたネーミングにしました。

 “架空のアニメスタジオが、日々AIを使ってアニメ制作に関する無理難題をクリアしていく”という内容です。

田中義弘さん/株式会社taziku 代表取締役。大学を卒業後、グラフィックデザイン事務所を経て、株式会社アイデアクラウドを設立。デザイン、AR・VRなどのテック事業などを立ち上げ、その後、DMM.comへ株式譲渡し代表取締役を退任。tazikuを創業

まつもと なるほど。

田中 そしてこのアニメは1クールのテレビシリーズにするような構成ではなく、現実世界とリンクしながら――AI技術は日々進展しているので――名探偵コナン的に“毎回起こる事件をベースにした一話完結のショートアニメシリーズ”を想定しています。

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