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第14世代のSpecial Editionはクセ強め?

暴れ馬すぎる「Core i9-14900KS」、今すぐ使いたい人向けの設定を検証!

2024年03月15日 00時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集● ジサトラユージ/ASCII

AIの力を借りればさらに盤石

 Core i9-14900KSのCPU温度を90℃に制限する設定により、MTP無制限設定時よりも安定性を向上させることはできたものの、Cyberpunk 2077のようにまだ不具合の出る部分がある。もっと良い方法はないものか?

 そこで最後にインテル公式のOCツール「XTU(Extreme Tuning Utility)」を試してみることにした。XTUにはCoreプロセッサー(第14世代)環境でのみAIを利用してOCの最適な設定を詰めてくれる「AI Assist」という機能があるが、これを利用してパラメーターの最適解を出して貰おうというものだ。BIOSデフォルトのままでもとてつもない暴れ馬なCore i9-14900KSをさらにOCするというのは一見おかしな判断のように思えるが、AI Assistは安定動作する中で最大限攻める設定を導きだしてくれる。まさに“逃げたら一つ、進めば二つ”なのである。

 ただ、XTUを利用するにはWindows 11のセキュリティー機能の一つである“メモリー整合性”をオフにする必要がある。セキュリティーレベルが下がるため筆者としてはXTU利用を強く勧めるものではない、ということはお断りしておく。

XTUのダウンロードページ:本稿では1月5日付けで公開されているv7.14.0.15を使用した。まだCore i9-14900KS対応について記載がないが、AI Assistも利用可能だ。ダウンロードはこちら(https://www.intel.co.jp/content/www/jp/ja/download/17881/intel-extreme-tuning-utility-intel-xtu.html)から

XTUを使用する際はWindows 11の「デバイスセキュリティー」→「コア分離」内にある「メモリー整合性」をオフにする必要がある

第14世代環境でXTUを利用すると、AIを利用した自働OC機能「AI Assist」が利用できる。“Characterize”ボタンを押して暫く待つだけでよい

 今回の検証環境でAI Assistを利用して調整してもらったところ、Pコアのアクティブコア数が1ないし2の時は63倍、それ以上の場合は60倍という設定を提示された。定格が62倍/59倍なので言うまでもなくしっかりOCされている。さらに、Turbo Boost Power Max(PL1)が320W→470Wへ大幅増量された。電圧類は変更されていないがTVB周りの設定が調整されている。

AI Assist実行終了直後。このままApplyすればAIによる推奨設定がそのまま適用される。XTU上でプロファイルを作成していつでも呼び出せるようにしておくのがオススメだ

青部分がAI Assistによって付与された設定値。Pコアの倍率(≒クロック)は定格よりも+1倍されている。その一方で電圧関係はまったく変更されていない

 それではCore i9-14900KSにAI Assistで軽くOCした場合のパフォーマンスを、90℃制限時のものと比較してみよう。検証条件については前述のテストと同一である。

CINEBENCH 2024:CPU温度90℃制限時とAI Assist利用時のスコアー

Handbrake:CPU温度90℃制限時とAI Assist利用時のエンコード時間

 シングルスレッド性能はAI Assist利用時のほうが90℃制限時より微妙に下がった一方で、マルチスレッド性能はさらに伸びた。Handbrakeのエンコード時間も、CINEBENCH 2024のスコアー上昇に連動して短縮している。

システム全体の消費電力:CPU温度90℃制限時とAI Assist利用時の比較

CPUの消費電力:CPU温度90℃制限時とAI Assist利用時の比較

 性能が向上したのだから消費電力が増えてしまうのは必定。CPUの消費電力は平均値ではわずか9Wの上昇だが99パーセンタイル点が大幅に上がっており、より長時間消費電力の高い状況が続く、即ちブースト状態が長く続いていることを示唆している。

Call of Duty:1920×1080ドット時のフレームレート。CPU温度90℃制限時とAI Assist利用時の比較

Cyberpunk 2077:1920×1080ドット時のフレームレート。CPU温度90℃制限時とAI Assist利用時の比較

 ゲームパフォーマンスについても同様だが、Cyberpunk 2077は起動に失敗することがなくなった。明らかにAI Assistによるチューニングのほうが単純な温度ベースの制限よりも優れていることを示している。

発売前にβ BIOSが出る?

 長々とここまで検証してきたが、本稿でCore i9-14900KSの評価が終わったわけではない。BIOSのデフォルト設定(MTP無制限)でCINEBENCH 2024の10分走が完走できるようになって初めて、従来モデルとの差を比較するための入り口に立てる。本稿を読む前にCore i9-14900KSを購入してしまった方は、BIOSの更新まで安定性確保のために色々と工夫が必要だ、ということを伝えるための記事となる。

 正直こんな安定度のCPUを出すのはどうかと思うが、Core i9-14900KSのようなマニア向けモデルに関してインテルは以前から“売れそうだから出す”スタンスを続けており、今回もこのパターンであるという印象を抱いた。だが、Core i9-13900KSの時はパット・ゲルシンガーCEOがわざわざ発表したのに対し、今回のCore i9-14900KSは6.2GHzに到達したにも関わらずサイレントローンチとなった。不具合がわかっていたからサイレントになったのか、0.2GHzの伸びはアピールするに至らないと判断したのか、真相はどちらだろうか?

 だが本稿を提出する前日(つまり3月13日)、ASUSのフォーラム(https://rog-forum.asus.com/)に「Support New CPU」と銘打たれたβ BIOSが公開された。Core i9-13900KSの時も発売後に何回か安定性向上BIOSがリリースされていた経験から、素性のわからないBIOSに飛びつくのはリスクが高すぎると判断し、検証は見送った。公式サポートからこれに準ずるBIOSがリリースされた時に改めて、Core i9-14900KSの検証を行なってみたいものだ。

ASUSのフォーラム(https://rog-forum.asus.com/t5/intel-700-600-series/raptorlake-resources/td-p/907811/page/41)に突如貼られた同社製Z790マザー向けのβ BIOSたち。これが安全なファイルなのかも不明であるため、使用には覚悟が必要だ

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