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UPDATE EARTH 2024 ミライMATSURI@前橋 会場レポート

新しい未来を創る可能性は大有り! 最先端デバイスとロボット技術を前橋で体感した

■衛生的かつ低コストで使い捨てOK! ■紙製のロボットハンド

 もう一つ、ロボット関連のブースを紹介したい。「Folding Gripper」(https://protopedia.net/prototype/2724)は、紙から構成された、折りたたみ式の指機構を持った使い捨てのロボットハンド。現代では人手不足や重労働の問題を解決するためロボットの導入が進んでいるが、特に医療現場や食品加工工場などでは衛生面や安全性が重視される。そこに着目して開発されたのがこの製品だ。

Folding Gripper

紙製使い捨てロボットハンド「Folding Gripper」。紙でできたシート状の展開図(右)を組み立てると指部分になる

 最大の特徴は紙などのシート状の展開図から1本の指が構成される点。これにより従来のロボットハンドにあった軸や軸受けといった機械部品や潤滑油は一切使用せず、大きさを自由に変更できるため、大型のコミュニケーションロボットから小型軽量のドローンまであらゆるものに搭載可能になった。

 加えて、低コストで使い捨てができるため、洗浄の必要も衛生面での心配も不要となった。シート状の展開図はリサイクル可能なプラスチック素材や土にかえる再生紙で製作することもでき、環境にも優しい。

 モノの当たる位置によって自動的に動作するリンク機構を搭載している点も「Folding Gripper」ならでは。少ないモーター数でさまざまな物体をつかむことができ、たとえば、食品など大きさや形が異なるものに特に威力を発揮する。小さいものは指先でつまむ、大きいものは指全体でつかむといった動作でも、複雑な制御は不要だ。

 折りたたんでコンパクトに収納できる点にもこだわったという。「使い捨て」できるということは、それなりのストックが必要となるが、薄板状態に折りたたんで収納できる機能も付加した。専用ソケットに折りたたんだ指部分を数枚収納しておけば、指部分に触れることなく、レバーを使ってワンタッチで使い終わった指部分の排出と新しい指部分を交換できるのも、大きなメリットと言える。現代の著しいロボット技術の進化やその導入には、この「指」のような細部のテクノロジーも欠かせないことを改めて実感した。

■重さわずか45gの羽ばたく飛翔ロボットが目指す未来像

 早稲田大学の渡邉研究室(https://www.watanabe-lab.jp/)のブースでは、「羽ばたきドローンWiFly」と呼ばれる羽ばたき型飛翔ロボットが展示されていた。カーボン製の軸に取り付けられたポリスチレン(ポリエチレン製フィルム)がパタパタと羽ばたくロボットの重さは、なんとクロワッサンと同程度の45g、小型カメラを付けても約50gほどだという。

羽ばたきドローンWiFly

「羽ばたきドローンWiFly」。小型・軽量なので操作しやすく、万が一、落下しても危険性が低い

 垂直飛行、水平飛行など自由度が高く優れた飛翔能力を持ち、航続距離を伸ばせるといった特徴は、両翼を独立して制御する「両翼独立羽ばたき機構」、アーム先端に付けたバッテリーを動作させて重心位置を制御する「重心移動機構」、尾翼の動作により飛行姿勢を安定化させる「昇降舵機構」の3つの機構によるものだ。

 ここまで小型・軽量化を追求したのは、1機、2機ではなく、大量にかつ広範囲に飛ばしたいという目的があったから。たとえば、これにセンサーを搭載し、大量に広いエリアに飛ばせば広範囲にわたる情報を即時に取得でき、インフラ網の監視のほか、災害時の避難誘導、事故現場の情報収集などに大いに役立つようになる。また、気温、気圧、風速、湿度などのデータを取得し、天災を予測することも期待されている。

 一見、羽虫のようなそのフォルムは、トンボを模倣したデザインだという。目標とするのは、飛行中に落下したりしない生物、つまり鳥や虫が持つような機能を搭載した小型の飛翔体。最終的には、人工知能や人工筋肉を搭載し、無線通信を使わない完全自律制御を目指したいそうだ。

 
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