サイボウズが名古屋営業所を開設して間もない頃から パートナーであるウィルビジョンは、数多くのkintoneスペシャリストを抱え、開発から運用までトータルでサポートしている。内製化の需要とともに安価で必要なときに利用できる「コンサルパック」の利用も拡大。これまでの実績やサービスの特徴について、ウィルビジョンの前田義人氏と曽我真子氏に聞いた。
名古屋の老舗kintoneパートナー ニーズに合わせて4つのサービス
2008年創業のウィルビジョンはITコンサルやシステム開発を手がける名古屋のIT企業。2013年からkintoneの社内利用を開始し、2015年からサイボウズのオフィシャルパートナーになっている。ウィルビジョン管理部 総務・広報の曽我真子氏は、「当時は名古屋にkintoneパートナーが少なかったので、せっかくなら名古屋で一番になろうということでパートナーになりました」という。
2017年にはCYBOZU AWARD コンサルティング賞を受賞しているが、kintone界隈に名がとどろいたのは、2020年の「kintone hack」で優勝したこと(関連記事:チーム戦も解禁!カスタマイズの楽しさを堪能できたkintone hack NIGHT)。常連の優勝が多かったkintone hackで優勝をもぎ取ったことで、kintoneへの造詣の深さが全国的にもアピールされたという。
実際、社内でのkintone資格の保有率は100%で全国トップクラスを誇る。サイボウズのパートナー評価制度(CyPN:Cybozu Partner Network Report)でも、コンサルティングや教育分野のサクセスパートナーとなっている。「400社以上に上るサイボウズの公式パートナーのうち、コンサルティング分野のサクセスパートナーは30社程度なので、差別化要因になると思います」と曽我氏は語る。
現在ウィルビジョンは、複数のサービスでkintone構築から運用までをトータルでサポートしている。アプリの構築から運用開始までトータルサポートする「kintoneアプリ構築サービス」、運用後の要望を短期間・ローコストで解決する「kintone技術支援サービス」、kintoneの利用方法や他社事例を踏まえたアドバイス、開発支援を提供する「kintone伴走支援サービス」、そしてオンラインで画面を共有しながらコンサルを提供する「kintoneコンサルパック」の4つだ。初回相談は無料なので、ユーザーは気軽に相談して、自身に適したサービスを選ぶことができる。
4つのサービスのどれを選ぶかは、顧客の意思が大きいという。ITソリューション事業部 マネージャーの前田義人氏は、「すでにkintoneを使っていたり、kintoneをこう使いたいという方向性が決まっている場合は、コンサルパックがオススメ。kintoneを使えと言われたけど、よくわからないという場合は、そもそもkintoneでいいのか?というお話もします。kintoneを軸にしていますが、ゼロから開発できるエンジニアもいますので」と語る。ツール前提ではないので、パッケージなり、他のSaaSなり、さまざまな提案ができるのが同社の強みだ。
必要なときに相談できるコンサルパック 他社プラグインにも対応
このうちkintoneユーザーの拡大とともにニーズの高まりを感じているのが、kintoneコンサルパック。こちらは1年間有効のチケット制で、2時間×3回で12万円(税抜)となっている。前述した通り、オンラインで画面を共有しながら、ユーザーにアドバイスしつつ、活用事例をデモンストレーションしてくれるという。
コンサルパックを導入したある製造業は、もともと内製化が根付いており、別システムからkintoneへ移行する際も、内製化を継続したいという意思があった。担当は情報システム部の所属で、顧客の問い合わせ管理や社内共有の効率化をkintoneで実現するのが目的だったという。「kintoneでのレコード削除やゲストスペース、権限設定についての質問、外部連携がうまくできないという課題の解決のほか、自分たちが想定しているシステムの実現方法に関する質問をいただきました」と曽我氏は語る。
コンサルパックのメリットの1つは他社プラグインの相談にも対応するという点だ。kintoneの場合、複数のプラグインを動かしたり、カスタマイズを行なったりすると、競合してうまく動かないというケースが存在する。曽我氏は、「相談の時間内に顧客のJavaScriptのコードを確認し、悪さをしているコードをチェックすることもできます」と事例を紹介する。実際に問題となるプラグインを外すだけではなく、代替手段も提案してくれるので、スポットでありながら満足度は高いという。
伴走支援のライト版にあたるコンサルパックは安価で、スポットでの支援が必要なケースに最適だ。「Web会議を使うので、時間の融通も利きますし、顧客の環境に入ってアドバイスできるのがメリットです。『自分たちの技術力の向上にも役立っています』という声もいただいています」(曽我氏)。ウィルビジョンの場合、サービスを担当するのがすべてkintone開発を行なうエンジニアなので、自らの知識とノウハウを直接提供できる点がメリットだという。
ドラッグ&ドロップでアプリを作れるkintoneだが、いざ実際に業務で運用しようと考えると、悩むところは多い。しかし、これらの支援サービスは目の前の座学やサンプルのハンズオンではなく、自ら使っているアプリをプロにチェックしてもらうので、強い実体験を伴うという。「ヘルプやセミナーで知識は得られますが、ノウハウにはならないんです。ノウハウは自らがある程度の年月を経て体得していくべきものなので、そのステップをご支援するという立場です」と前田氏は語る。
kintoneを作れる会社から、いっしょに企業価値を高められる会社へ
ウィルビジョンの場合、Webサイトから問い合わせを受けたり、サイボウズから紹介を受けたり、既存のユーザーからの紹介で案件に結びつくことがほとんどだ。「CMでkintoneを見たので使ってみたい」「今使っているシステムをkintoneでなんとかできないか」という問い合わせが多いという。「ERPやら、営業支援サービスやら、重厚長大なシステムで年額数百~数千万レベルかかっている会社にとってみると、kintoneの一人月額1500円というランニング費用は胸を打つ金額なんです。実は使いこなせてないので、スリム化したいのですが、相談乗ってもらえませんか?という感じで話が来たりします」(前田氏)。
「期待を超えるITコンサルティング会社」を掲げ、システム開発より、ITコンサルに軸足を置くウィルビジョンの場合、ゴールはあくまで顧客課題の解決だ。アプリを内製化し、自ら業務改善を進めたいという意思を持っているユーザーも多いが、やりたいこととできることでギャップが生じてしまうことも多い。「内製化前提にコンサルパックでスタートしましたが、途中で伴走や技術支援に切り替えるというパターンもあります。kintoneが悪いというわけではなく、使いこなすための技量や時間、習熟するためのノウハウ、人材が中小企業の場合は足りない。弊社としては、お客さんが目指すゴールに合わせて、適切な支援をご提案しています」と前田氏は語る。
名古屋に拠点を置くということで、顧客は中京圏・東海圏が多い。とはいえ、中京圏の主要産業となる自動車関連の会社は決して多いわけではなく、むしろ「普通の中小企業が多い」とのこと。「20年近くIT業界にいますが、弊社での自動車関連の比率はむしろ少ないです。事業ダイバシティ的に、いろいろな会社とお付き合いしていこうという方向性でもあります」(前田氏)とのことで、建設業、士業、サービス業で実績を持っているという。
今後の方向性としては、「お客さまの困りごとを聞いて、kintoneを上手に作れる会社」から、「お客さま自身の育成や活用を支援しながら、いっしょに企業価値を高められる会社」になるべく、ユーザーのステージに応じたサービスを拡充していくという。前田氏は、「ツールを注文して、購入するというフェーズから、ツールを選んで、組み合わせて、活用する時代。この中にkintoneという選択肢があるのですが、お客さまとしては人材面での課題を感じているはず。どうすればお客さまがkintoneをうまく活用できるのか、サービスの提供形態も含めて、試行錯誤している最中です。ご期待ください」とまとめてくれた。
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