セールスフォース・ジャパンは、Salesforce Sales Cloudに搭載するAI機能などについて説明した。EinsteinによるAI機能は、Sales Cloudに搭載され、2024年2月14日から日本市場向けに一般提供を開始する予定であり、UnlimitedおよびUnlimited+で利用可能だ。
営業活動でのAI利用はデータから始まる
Sales Cloudは、営業部門などに対して、迅速で、効率の高い営業活動を支援し、生産性向上とビジネスの成長をサポートする製品と位置づけている。Sales CloudにAIを搭載することで、営業効率のさらなる向上が実現するという。
米Salesforce Sales Cloud担当シニアバイスプレジテントのマリーアン・パテル氏は、AI機能の搭載がSales Cloudを大幅に進化させ、営業マネージャーの戦略的活用や、新規顧客開拓の推進、顧客との関係強化につながると説明。「AIは、多くの企業にとって必要なものになっている。AIによってCRMを高度化することで、Sales Cloudを利用する企業が、AIのモメンタムをつかみ、ビジネスの成功につながるように支援していくことができる」などと述べた。
営業担当者は、これまでの予測AIに加えて、新たに生成AIを利用。予測AIでは、既存データを分析し、予測を提供。生成AIは既存データを学習して、新たなコンテンツを生成する。すでに実装している予測AIでは、2500億件の予測実績があるという。2つのAIを使うことで、営業サイクル全体でCRMに蓄積した情報を有効に活用でき、営業プロセスの自動化や、顧客との関係強化、商談の成約のサポート支援などが行なわれる。
パテル氏は、「営業活動でのAI利用はデータからはじまる。CRMデータからAI主導のインサイト、予測、AIによる自動化を実現し、スマートなAIが営業をサポートすることになる」と述べた。
営業のメールや通話を効率化する3つのAI機能
AIの具体的な機能として、「セールスメール(Sales Emails)」、「通話サマリー(Call Summaries)」、「通話探索(Call Exploration)を提供する。
セールスメールでは、Data Cloudに蓄積されたデータをはじめとする、あらゆるCRMデータをもとに、パーソナライズされた効果的なメールをワンクリックで自動的に生成。打ち合わせ日程の調整やフォローアップの連絡、自己紹介のメールなどを数秒で作成する。OutlookやGmail、LinkedInなどで自動化したコミュニケーションが可能になるとしている。
「営業活動のスタートをいち早く切ることができ、標準化が進み、効率化が可能になる。また、ベストプラクティスを蓄積でき、それを営業活動に活用できる」(パテル氏)。
通話サマリーは、通話内容の文字起こしを行なったり、営業の通話記録をもとに、要点を簡潔にまとめたりする。通話内容から、重要なポイントや顧客セグメント、次のステップを特定し、営業チームの商談をサポート。編集した要点を、Slackやメールで共有することで、部門を超えて案件に関する連携が可能になる。
通話探索では、Einstein会話インサイトを使用することで、CRMのなかに顧客との音声およびビデオ通話を記録するほか、Einsteinと自然言語による対話で、膨大な情報を対象に検索したり、通話内容を要約することで、営業部門がデータの共有や、情報の効率的な利用が可能になったりする。
信頼性の高いAIを実現するEinstein Trust LayerとData Cloud for Sales
一方、EinsteinをSalesforce Sales Cloudで利用する上で、重要な仕組みとなるのが、Einstein Trust Layerだという。
AIプラットフォームである「Einstein 1 Platform」は、各アプリケーションに対応したAI Copilot、顧客プロファイルの統合およびメタデータの統合のほか、ローコードの活用や自動化の実現、オープンデータの利用やAIエコシステムの広がりが特徴であり、信頼性の高いAIを、すべてのアプリケーションに組み込むことができるとした。
その上で、Einstein Trust Layerは、「CRMでAIを活用する際には信頼がもっとも重要になる。それを支えるのがこのレイヤーである」と位置づけ、セキュアなデータ取得、動的グラウンディング、データマスキング、プロンプトディフェンス、有害性の検出機能などを提供しているという。
一方、Data Cloud for Salesについても説明。さまざまな組織やデータソースにある取引先、商談、営業活動レコードのデータを連携し、商談と顧客データを調整および一体化。商談や顧客の成約見込み、購入の可能性、行動シグナルに関するインサイトを生成、分析することで、新たな成長機会を特定。ファーストパーティデータとサードパーティデータでグランディングを行なった安全な生成AIで、より精度の高い回答を入手し、営業成果を向上させるなど、顧客中心のインテリジェントな営業活動を展開できるとした。
すでに、Data Cloud for Salesの活用によって、米国の総合不動産業では営業担当者の生産性が60%以上高まった実績が出ているという。
Salesforce Sales CloudにおけるAI以外の機能についても説明した。
戦略的データの活用シーンにおいては、Einstein活動キャプチャ、Activity 360、Einstein売上予測、パイプラインインスペクション&案件インサイト、取引先責任者インテリジェンスなどの機能を提供。新規顧客開拓においては、バイヤーアシスタントやSlack Sales Elevateの機能により、チームセリングを加速できるとした。顧客との関係強化においては、Sales Cloud for Outlookなどのほか、Sales Program、Einstein 会話インサイトが活用できるとした。
なお、2月には、Einstein Copilot for Sales(英語版のみ)のパイロッド版を提供することを発表したほか、Einsteinブロスペクティングセンター、自動プロスペクト評価も、2月にパイロット版を提供するという。
66%の営業担当者がツールの多さに圧倒されている
Salesforceでは、「データ+AI+CRM+信頼」を掲げ、次世代CRMを提供している。
「生成AIの革命によって、多くの情報を得ることができるようになり、多くのコンテンツを生成できるようになる。今後は、自律エージェントを利用することで、仕事を改善するところにフォーカスしていく」と、AIに対する継続的な投資を行う姿勢をみせた。
調査によると、営業担当者が営業以外の時間に費やしている割合は72%に達しているという。10年前にはこれが60%であったことと比較すると、営業活動の複雑性が高まっていることが裏づけられる。さらに、セールステックと呼ばれるソリューションが増加しており、66%の営業担当者がツールの多さに圧倒されているという。そして、94%の企業が顧客価値の最大化のためにテクノロジーを簡素化することを求めているという結果もある。
同社では、こうした声を応えるためにSales Cloudをテコ入れし、必要なツールを1カ所にまとめたと説明する。
バテル氏は、「Sales Cloudでは、ハイヤーエンゲージメント、セールスエンゲージメント、チームコラボレーション、セールスイネーブルメント、セールスアナリティクス、パートナー管理、パフォーマンス管理、CPO/請求といった機能を統合。Slack、Tableau、Data Cloud、Einsteinともつながり、あらゆる業種や、あらゆる規模の企業に対応することができる」としている。
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