アメリカのラスベガスで開催された世界最大級のエレクトロニクスとITの展示会である「CES 2024」。自動車メーカーであるホンダは、2台のEVコンセプトを発表しました。その狙いは、どのようなものなのか? また、その特徴を紹介します。
◆ホンダの新たな出発点になる「ゼロシリーズ」
ホンダが発表した2台のEVコンセプトは、「SALOON(サルーン)」と「SPACE-HUB(スペースハブ)」。そして、この2台は2026年から市場導入を予定する新たなEV「0(ゼロ)シリーズ」の方向性を示すものとなります。
「0(ゼロ)」という名前には、「原点・出発点」を意味に、次世代ホンダの新たな起点という願いが込められています。その背景にあるのは「2040年の100%電動化」という大きなホンダの目標です。2040年までにエンジン車をやめて、すべてをEV、もしくはFCEVにするという目標のけん引役が、「0(ゼロ)シリーズ」です。ホンダの強い意志を感じるネーミングと言えるでしょう。
また、「0(ゼロ)シリーズ」には、1981年以来となる改定を受けた、新しいホンダのHのエンブレムも採用されています。これも、ホンダが新しいEVにかける想いの強さを証明する1つになります。
ただし、2026年に最初に登場するのは、この2台とは決まっていないそうです。そもそも、「SPACE-HUB」に関しては、量産化も未定だとか。ではなぜ、この2台が登場したかと言えば、ホンダ4輪のルーツである「T(1963年発売のT360)とS(同じく1963年発売のS500)」をイメージしたそうです。軽トラックのT360のユーティリティーと、2シーターオープンのS500のスポーティーさを、「SALOON」と「SPACE-HUB」で表したとのこと。
そして2台のコンセプトカーが示す「0(ゼロ)シリーズ」の開発コンセプトは「Thin(薄く)、Light(軽く)、Wise(賢く)」というもの。また、MM思想(マンマキシマム・メカミニマム:人のための空間は最大に、メカのための空間は最小に)というホンダ伝統の考え方を掛け合わせることで、今回の2台はできあがりました。
◆ソフトウェアでクルマを進化させるホンダ
メカニズム的な特徴は、プラットフォームはEV専用に新開発されたもの。ステアリングは機械的ではなく、電気的なつながりとなるステア・バイ・ワイヤを採用。電子プラットフォームも新たに開発され、ホンダ独自のSDV(ソフトウェア・ディファインド・ビークル:ソフトウェアでクルマを進化させる)を実現しています。
非常に薄くできたEV専用プラットフォームと、ステア・バイ・ワイヤにより、2台のコンセプトカーは、低い全高の中で、広い室内空間を実現。また、各コンポーネンツを小さくすることもあって、大きな軽量化も実現しています。聞けば、現時点で同クラスの平均的な重量よりも100kgも軽いとか。今後はさらなる軽量化を実現して、クラス比300kg減を目指すといいます。
デザイン的には、ホンダのデザイナー曰く「ホンダのデザインの本質はシンプルさにあるべきだし、シンプルでありながらも独創的にしなくてはいけない」と、とことん無駄な線を排除。それでいながら、力が満ちたような面の張りで強さが感じられるものとなっています。
また、「サイドのガラス面を立てて、下を絞っている」のも特徴でしょう。まるで箱のようなボディーであり、実物を前にすると、そのユニークさは特に強く感じることができます。文句なしの独創性を備えているのです。
◆両極端な2台のキャラクター
続いて2台の詳細を紹介します。
「SALOON」は、「0(ゼロ)シリーズ」のフラッグシップとなるモデル。低くワイドなボディーでありながら、驚くほどの室内の広さを実現しています。また、シンプルなデザインの室内には、サスティナブルな素材が採用されているのも特徴の1つ。ロボティクス技術で培った姿勢制御をもって、素直で安定した姿勢での旋回・加速を実現。様々なシーンで、ドライバーの意思通りに動く、コントロール性の良いクルマになるそうです。
「SPACE-HUB」は、「人々の暮らしの拡張」を提供することがテーマになります。SDVとして、様々な新しい体験や便利な機能を備えていることが特徴で、「やりたいことがすぐできる」というのが狙いとなります。最新のソフトウェアやアプリを活用して、クルマに新しい価値を創造します。
2040年の100%電動化を実現するためには、「0(ゼロ)シリーズ」の成功は不可欠。だからこそ、ホンダは総力をあげてこの新しいEVシリーズの開発に取り掛かっていることでしょう。どれほどのものが生まれるのか? 2026年の第1号車の登場を期待しましょう。
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