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世界で台頭する新興中国ガジェットブランド総ざらい 有名になる前に知っておきたい

2023年12月23日 14時00分更新

ジンバルではZHIYUNが高評価
SmallRigはユーザーの意見で製品を作るカメラアクセサリーメーカー

 カメラ関連では「ZHIYUN(智雲:桂林智神信息技術)」や「SmallRig(深セン市楽其網絡科技)」が注目されている。

 ZHIYUN(https://zhiyun-tech.jp/)はカメラとスマホ用のジンバルを扱う2015年に設立された企業だ。日本でこれらの製品を検索するとDJIと並んでよく出てくるブランドであり、CES Innovation Awardsをはじめ各国のデザイン賞を受賞したほか、リオ五輪で中国中央電視台(CCTV)が同社製品を採用した実績がある。同社のスマホ用製品はSMOOTHブランドで、カメラ用ではWEEBILLとCRANEというブランドで展開。ニコンと提携しての製品も開発された。

世界で台頭する新興中国ガジェットブランド

ZHIYUNのジンバル

 ちなみにジンバルでは、中国メディアでZHIYUNやDJIと並び中国で評価されるブランドは、FeiyuTech(桂林飛宇科技)や、hohem(深セン市浩瀚卓越科技)が挙げられる。

 一方のSmallRig(https://www.smallrig.jp/)はちょっと変わったカメラ向けのアクセサリーブランドだ。同社はオンラインショップ運営がスタートで、やがて同社サイトにカメラマンが「重いバッテリーを効率的に運ぶブラケットが欲しい」などといったニーズが書き込まれ、深センのモノづくりネットワークを活用し製品を開発したというのがきっかけ。消費者と頻繁にコミュニケーションを取ってニーズをくみ取ることで製品を開発し拡大している。その過程で製品自体のクオリティーも上がっており、またブランドイメージも高まっていった。

 2017年には世界の400人余りの写真家と2000以上の製品を共同設計したとのこと。毎日平均1~2点、年に700以上の新製品が誕生し、年に300~400点の商品が消えているという。そのスタイルはファストファッションや100円ショップのカメラアクセサリー版といったところだろう。ときに50個程度の少量生産の依頼もあるが、自社工場と30~40ヵ所の提携工場により、そうした依頼にも答えるのだという。消費者がずっとついてきてともに歩むブランドがSmallRigなのだ。

 このほかにもOneSightのBrandOS TOP100では、キーボードメーカーの「Keychron(渇創技術)」(https://www.keychron.com/)や、主にアフリカで展開する伝音のデジタルアクセサリーブランド「Oraimo」(https://oraimo.com/)がランクインした。

世界で台頭する新興中国ガジェットブランド

アフリカなどで展開しているOraimo

怪しくて無法地帯だけど、面白い製品が多かった時代から
世界にどんどん拡大している中国のデジタル製品

 今回ランクインしなくても、海外に向けてガジェットを提供する中国企業が数多くあるのはもちろんのこと、中国で資金調達を受けたガジェット系スタートアップ企業も多くある。こうした企業はもうしばらくはTikTokのバイトダンスのように、できるだけ自社が中国企業だと思われないような形で展開するだろう。そしていずれは中国企業であることを胸を張って主張するときがくるかもしれない。

 ところで当連載「アジアIT小話」は今回で200回となる。さらに前連載の「中国IT小話」が100回までだったので、合計で300本目となる。中国がなんだか怪しくてところどころ無法地帯だけど粗削りで面白かった時代から、スマートフォンやIoTを組み合わせたサービスで成長期を迎え、そして2023年は中国のデジタル製品が中国国外へと拡大して行き始めた。長期的に見て予想や想像ができないことばかりだったが、100回先はどう振り返るのだろう。その先を自分自身も楽しみにしながら書き続けていきたい。読者の皆様、よいお年を。


山谷剛史(やまやたけし)

著者近影

著者近影

フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で、一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。書籍では「中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立」、「中国のITは新型コロナウイルスにどのように反撃したのか? 中国式災害対策技術読本」(星海社新書)、「中国S級B級論 発展途上と最先端が混在する国」(さくら舎)などを執筆。最新著作は「移民時代の異国飯」(星海社新書、Amazon.co.jpへのリンク

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