来年1月下旬に入居開始が決まった、オリンピックの遺産として注目される住宅街「HARUMI FLAG(晴海フラッグ)」。プロジェクトの中心は、日本初の実用化となる水素を使った街づくり。住宅地区にはパナソニック エレクトリックワークスの純水素型燃料電池が設置され、半ば「小さな発電所」となっています。
オリンピックレガシー、ついに入居開始へ
「HARUMI FLAG」は2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催に伴い、東京の晴海地区で開発された新しい街。オリンピックのレガシーを随所に散りばめ、元の選手村の雰囲気を残しています。
約18ヘクタールの敷地に、分譲・賃貸住宅を含む合計23棟、5632戸の住宅が整備され、約1万2000人の居住が予定されています。
エリアは「SEA VILLAGE」「PARK VILLAGE」「SUN VILLAGE」と名付けられ、それぞれにマンション群が立ち並んでいます。
注目は、住民用の豊富な共用部分。
例えば、「PARK VILLAGE」では、広い中庭公園を中心に、吹き抜けのある開放的なラウンジや、料理と夜景が楽しめる暖炉付きのパーティルーム、レインボーブリッジを望む展望良好なテラスなどが設けられています。
注目は日本初「水素の街づくり」
プロジェクトのハイライトは、日本で初めて実用化された水素を利用した街づくり。
HARUMI FLAGは低炭素社会実現に向けたモデルとして、自立分散型のエネルギー供給の促進、快適かつエコな暮らしの両立、環境先進都市のモデル作りを目指しています。これまでエネルギー事業者6社が協力して、水素ステーションの整備・運営、パイプライン敷設、純水素型燃料電池の開発を進めてきました。
採用されたのは、開発中の水素ステーションからパイプラインを通じて各街区に水素が供給され、純水素型燃料電池を活用して発電する仕組みです。
水素で発電した電力は、主に照明や空調など、共用部分の電力として使用されます。深夜など電力消費が少ない時間帯に充電し、日中の電力消費が多い時間帯に放電することで電力のピークカットに役立てるようになっています。
また発電時に発生する熱を利用してお湯を沸かし、「PARK VILLAGE」の共用部分には足湯スペース、「PORT VILLAGE」にはペット用の足洗い場がそれぞれ設けられています。これら水素インフラの利用料は管理費に含まれるそうです。
静かでクリーン、窓から4mの“水素発電所”
この純水素型燃料電池を提供しているのがパナソニック エレクトリックワークス。
住宅地区の4か所に定格5kW出力の純水素型燃料電池「H2 KIBOU」を6台連結して設置し、合計30kWの出力を確保しました。
「H2 KIBOU」は、高純度の水素と空気中の酸素との化学反応により発電する製品。発電時の音が静かで、排気がクリーンなことが特長です。
このために住宅の近くにも設置可能。「PARK VILLAGE」のD棟の横では、住宅窓からわずか約4mの近さに「H2 KIBOU」が設置されています。
「H2 KIBOU」のもう一つの特長は、複数台を連携させることで大規模な電力を発生させ、必要な電力量に応じて発電量を調整できること。
建屋や敷地に合わせたレイアウトで設置が可能で、やはり「PARK VILLAGE」D棟では三角形状の隙間スペースに設置されていました。
あなたの街に“水素マンション”ができるかも
「H2 KIBOU」はこれまで、主に産業用途で使用されてきました。
たとえばパナソニックでは2022年4月15日から、滋賀県草津にある燃料電池工場の製造部門は、「H2 KIBOU FIELD」という自家発電システムを稼働させており、工場の電力を100%再生可能エネルギーでまかなう実証をしています(「パナソニック、水素と太陽光だけで工場の電力まかなう挑戦」参照)。
その「H2 KIBOU」が住宅用に使われるのは今回が初。パナソニックでは2014年から「HARUMI FLAG」のコンセプト作りに参加しており、「将来も陳腐化しない街」を目標に、10年後のエネルギーとして水素エネルギーを取り入れた未来志向の街づくりを目指してきたと言います。
今後、HARUMI FLAGをモデルケースとして、他の自治体でも水素インフラを取り入れた街づくりが増える可能性があります。いつか近所で「H2 KIBOU」を備えたマンションを見かけるようになるかもしれません。
書いた人──盛田 諒(Ryo Morita)
1983年生まれ。6歳児と2歳児の保護者です。Facebookでおたより募集中。
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