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デジタルサービス企業への転換を目指すリコー、課題は経営陣の信頼、ひとりよがりの論理

2023年12月04日 09時00分更新

企業価値向上プロジェクト

 これまでにも大胆な構造改革に取り組んできたリコーだが、今回の「企業価値向上プロジェクト」における施策の発表は、前任の山下良則会長から2023年4月にバトンを受けた大山社長兼CEOが、それから半年を経過し、構造改革の手綱を緩めずに、むしろ、それを加速する姿勢を示した格好ともいえる。いわば「大山カラー」を明確化したとの捉え方もでき、その基本姿勢が、これまでとは異なる視点からも構造改革ということになる。

リコー 大山晃社長兼CEO

 大山社長兼CEOが危機感を持っているのは、多くの構造改革を進めてきたものの、PBR1倍を上回ることができない状況が続いていること、ROEから株主資本コストを引いたエクイティスプレッドがほぼ一貫してマイナスとなっていること、デジタルサービスの会社として、収益性、資産効率、資本構成が低いこと、そして、オフィスプリンティング市場が想定以上に厳しい環境が続いていることがあげられる。

リコー 大山晃社長兼CEO

 言い方を変えれば、リコーが掲げているOAメーカーからデジタルサービスの会社への変革を、より加速させなくてはならないという危機感があるともいえる。

 「リコーが、デジタルサービスの会社になることが、中長期的な企業価値向上のためのドライバーになる」と大山社長兼CEOは語り、「今後の方針は、当初計画を上回るスピードで、収益性が高いデジタルサービスに経営資源を集中するとともに、抜本的な収益構造変革に踏み切り、低収益性を改善することになる」とする。同社では、デジタルサービスの売上比率は2022年度の44%を、2025年度には60%以上に計画を打ち出しており、その計画には変更はない。その点では、山下前社長時代からの方向性は踏襲している。

デジタルサービスの会社として体質改善が必要

 大山社長兼CEOは、就任以降、投資家やアナリスト、外部専門家の声を聞く場を持った。

 「リコーが、デジタルサービスの会社へと変化を遂げていくことに対しては、資本市場からの賛同を得ていることがわかった。しかし、厳しい指摘も数多くもらった。経営陣が十分な信頼を得られていなかったこと、自己都合や自分たちの論理で、これがベストだと判断する傾向も多々あった。リコーの現状を客観的に見ることができた点にも意味があり、反省する部分も多い」とする。

 具体的には、「プリントボリュームが落ちていくスピードに対して、固定費の削減が追いついていない」、「コストカットによる利益改善以外は、市場目線では蓋然性が低い」、「過去の目標未達の繰り返しが、経営への信頼感を押し下げている」、「市場では継続的な改革が必要だと捉えているが、リコーは改革が終了したと考えている印象を受ける」といった厳しい声が、大山社長兼CEOの耳に届いた。

 また、いくつかの指標をもとに、デジタルサービスの会社として、体質改善が必要なことを自ら指摘する。

 「事務機器の主要な競合会社と比較して、収益性の低さに課題がある。また、資産効率や資本構成は業界平均よりも高いが、デジタルサービスであれば、より高見を目指す必要がある。これらがROE低迷の要因だと認識している」とする。

 さらに、「ROE9%の達成は、PBR1倍を達成するための重要な要素になる」とし、中期経営計画で掲げた2025年度のROE 9%超の目標を堅持する姿勢を示している。2023年度のROEは5%の見通しであり、これから一気に改善することになる。

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